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パンク・ロック(英: punk rock)は、1970年代半ばから後半にかけて発生したロックのスタイルの一つ。パンク(英: punk)と略称されることも多い。
パンク・ロック punk rock | |
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様式的起源 | ロックンロール ガレージ・ロック パブ・ロック |
文化的起源 | 1970年代 アメリカ合衆国 イギリス オーストラリア |
使用楽器 | ボーカル ギター ベース ドラムセット キーボード |
サブジャンル | |
ハードコア・パンク アイリッシュ・パンク オイ! メロディック・ハードコア ポップ・パンク エモなど | |
融合ジャンル | |
パワーポップ ニュー・ウェイヴ ポストパンク オルタナティヴ・ロック グランジ | |
ローカルシーン | |
ニューヨーク・パンク | |
関連項目 | |
インディー・ロック カウンター・カルチャー パンク・ファッション 日本のパンク パンク (サブカルチャー) |
概要
パンクは1960年代のビート・グループのほか、ザ・フー、ローリング・ストーンズ、キンクスなどのブリティッシュ・インヴェイジョンに影響を受けたガレージロックのハードなエッジのサウンドをルーツとしており、そのスピリットを70年代に再現しようとした。中でもMC5やザ・ストゥージズは、その音楽性と過激なパフォーマンスからパンクのルーツと見なされている。やがて1975年頃にアメリカ、ニューヨークのロック・シーンに産声を上げ、1976年にはその影響を受けたセックス・ピストルズがイギリスのロンドンでデビュー。その後、イギリスに同じ音楽性のパンク・ロック・バンドが続々と登場し、ロックの新しい時代を築いた。
1977年のロンドン・パンク・ムーブメントは短期間で終息した。入れ代わるようにニュー・ウェイヴが台頭し、音楽性の一部が引き継がれた。エルヴィス・コステロ、イアン・デューリー、スペシャルズ、ワイヤー、キャバレー・ボルテールらがこれにあたる。
特徴
パンクの音楽的特徴としては、簡素なロックンロールへの回帰を志向し、スリーコードを中心とした簡潔なスタイルをとった。アップテンポかつ攻撃的だが、レゲエを取り入れた代わりに、ロックのルーツのひとつであるブルースやブギーなどの黒人由来の音楽要素が排除される形となった。これはメロトロンやシンセサイザーなどの高価な機材を使ったり、速弾きや即興演奏などの技巧を競っていた当時のハードロックやプログレッシブ・ロック・シーンに対する反発により生まれたものとされる。そのため、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイド、クイーン、ローリング・ストーンズらロック・スターとなっていたバンドを激しく攻撃し、ハードロックやプログレッシブ・ロックを「オールド・ウェイヴ」として否定するようになった。
パンクやニュー・ウェイヴはDIY(Do It Yourself=自分達でやる)をスローガンとして掲げた。これは後進のパンク・バンドに影響を与えた。
パンクは当初から反体制的(アナーキズム)、または左翼的(マルキシズム)なメッセージを歌うバンドが多かった。次第に政治的な色彩は弱まっていったが、2018年にはインドネシアアチェ州のパンク・ロック愛好者が宗教警察に摘発されている事例があるように、今もなお音楽性や歌詞が反宗教的と捉えられる傾向がある。
歴史
前史
ザ・フーやザ・ストゥージズ、過激なライブパフォーマンスのMC5、グラム・ロックとも見られたヴェルヴェット・アンダーグラウンド(同性愛やSMも題材とした)やニューヨーク・ドールズなどが、パンクのルーツと考えられている。
ニューヨーク・パンク
ニューヨーク・パンクは、1960年代後半にアメリカのアンダーグラウンドで人気を得ていたMC5、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ザ・ストゥージズ、70年代前半のニューヨーク・ドールズなどに影響を受けて生まれた。
70年代後半にはパティ・スミス、テレヴィジョン、ラモーンズ、トーキング・ヘッズらが、マキシズ・カンサス・シティやCBGBなどのライブハウスを拠点に演奏するようになった。これらのライブ・ハウスを拠点に活動していたバンドやソロは他に、リチャード・ヘル、ジョニー・サンダース、ディクテイターズ、ミンク・デヴィル、ウェイン・カウンティ、デッド・ボーイズ、スーサイドらがいた。パンクから派生したディーヴォ、トーキング・ヘッズなどのニュー・ウェイヴ・バンドは、チャートでもそれなりの成功を収めた。
ロンドン・パンク
ロンドン・パンクはニューヨーク・パンクにわずかに遅れて、76年ごろから始まった。ロンドン・パンクの特徴としては、初期のロックンロールが持っていた攻撃性と反社会性、スリーコード中心の曲調が挙げられる。また、少し前に流行っていたパブロックといわれる音楽も、ロンドン・パンクに大きな影響を与えた。安全ピン、ワッペン、破れた細いジーンズや古着のTシャツ、革ジャンなどのファッションも若者の間で流行した。初期に人気があったのはセックス・ピストルズ、クラッシュ、ダムドらだが、ピストルズのアメリカ進出は成功せず、アメリカのチャートで成功を収めたのは、ザ・クラッシュだった。
1976年末、ダムドがデビューした。ロンドン・パンクのバンドでは、最初にシングル「ニュー・ローズ」をリリースした。彼らはほかのパンク・バンドに比べて政治色が薄く、圧倒的なスピードの演奏が特徴で、アルバム『地獄に堕ちた野郎ども』も発表した。
セックス・ピストルズは、ロンドンで「SEX」という名前のブティックを経営していたマルコム・マクラレン彼は店にたむろしていた若者たちが作ったアマチュア・バンドを、1975年にライブデビューさせた。破れたシャツ、安全ピン、逆立てた髪という奇抜なファッションは、マルコムの助言によるものだと言われている。メンバーのグレン・マトロックらが制作した曲の数々は、アナーキズムを煽動したり、エリザベス女王をからかった。これは保守的なイギリスのタブーを犯しており、そのことがマスコミの餌食となって一大スキャンダルとなった。ライブでは客に唾を吐きかけ、テレビに出演すれば必ず司会者とトラブルを起こすと言われ、イギリスでパンク・ロックが知られるきっかけとなっていった。なお、ジョニー・ロットンはイギリス右翼に襲撃され、重傷を負ったこともある。
ザ・クラッシュは1976年にロンドンで結成され、翌1977年『白い暴動』でデビュー。2作目のアルバムはパンクだったが、パンクと通じる階級的な位置づけをもつレゲエへの接近を試みた、1979年のアルバム『ロンドン・コーリング』を発表、次第にロック・スターへと成長していく。シングル「ロック・ザ・カスバ」のヒットによってアメリカ進出に成功し、スタジアム規模のライブツアーを何度か行った。
他に、ザ・ジャムがネオ・モッズ・ムーブメントを巻き起こし、UKチャートでNo.1ヒットを4曲も出すなど、1982年に解散するまで人気バンドとなった。ストラングラーズは、短いギターソロ、攻撃的な歌詞と音楽を売り物にした。ストラングラーズは、アイスクリーム販売用のバンで、イギリス国内を移動してライヴを行った。このバンドはスウェーデン公演の際に、地元の右翼に襲撃されている。彼らは政治団体の標的となるなどトラブルもあったが、アルバムをイギリスのチャートの上位に送り込むようになった。
ブームの火付役であったセックス・ピストルズは、アメリカ・ツアーの途中で空中分解し、ジョニー・ロットンの脱退により、スタジオ・アルバム1作を残しただけで実質解散。ジョニー・ロットン改めジョン・ライドンは、新たにPIL(パブリック・イメージ・リミテッド)を結成。ドイツのカンなどの前衛ロックや、レゲエの先鋭的なミキシング方法であるダブを採り入れた音楽は話題となり、パンクからニュー・ウェイヴへという時代の変化を印象づけた。
イギリスでは、失業者の増加と言う社会問題が下地となって、若者たちの不満、怒り、反抗、暴力性などを掬い上げたパンクが大きな社会現象となった。ジェネレーションX(ビリー・アイドルが在籍)などのポップなバンドも次々に生まれた。ファッション、絵画などの芸術にまでその波は広がり、髪を逆立たせ、服を破いたスタイルのロンドン・パンク・ファッションは世界中で知られた。だがパンク・ファッションはパリ・コレに登場するなどして、鋭さを失っていった。パンクのブームが去った後は、エルヴィス・コステロ、ニック・ロウ、イアン・デューリー、グラハム・パーカーらのニュー・ウェイヴの時代となった。キャリアのあるミュージシャン達によって結成されたポリスも、デビューアルバムの内容はレゲエとパンクであった。また、スペシャルズやマッドネス、セレクターなどのネオ・スカバンドが人気を博した
1980年代のパンク・ロック
1978年にセックス・ピストルズは解散し、パンクの時代からニュー・ウェイヴの時代へと変化していった。しかし1980年代、クラス、ディスチャージ、G.B.H.、エクスプロイテッドといったネオ・パンクバンドが次々に登場し、いわゆる「ハードコア(極端)・パンクが話題となった。「アナーキー&ピース」をスローガンに掲げたクラスは、メンバーが共同生活を送るなど、反体制、アナーキズムを貫き、パンク・ロックにより過激な主張を持ち込んだ。
アメリカにおいても、1970年代後半に新しいバンドが次々と誕生、デッド・ケネディーズ、ブラック・フラッグといった有力バンドにより、各地で新しいパンク・シーンが生まれた 。アンダーグラウンド・レベルのシーンを支えた西海岸のファンジンの中には長期にわたって音楽情報提供の役割を果たしたものもある。1977年創刊のロサンゼルスの「フリップサイド」誌は、ガレージやパンク時代からのファンジンである。西海岸バークリーのカレッジラジオ局のパンク番組「マキシマム・ロックンロール」が、ファンジンを創刊する1982年には、ハードコア・パンクのリポートが掲載されるようになった。ハスカー・ドゥやバッド・ブレインズのように大手レーベルと契約するバンドが増えた。またSSTやディスコード・レコードのようなインデイー・レーベルが配給を拡大した。
一方、ワシントンD.C.では「禁セックス」「禁アルコール」「禁ドラッグ」など新興宗教的な主張をしたストレート・エッジを提唱したマイナー・スレットの解散後、自主レーベル「ディスコード」のオーナーでもあったイアン・マッケイは、暴力化・様式化するハードコア・パンク・シーンに反発した音楽活動を開始した。
90年代以後のパンク
アメリカにおけるハードコア・ムーブメントはアンダーグラウンドな動きに留まったが、その過程において各地のバンド、インディ・レーベルを結ぶネットワークも一部に見られた。そのような状況下、サウンドガーデンやマッドハニーといったバンドが、シアトルのインディ・レーベルサブ・ポップより次々とデビューし、シアトルのアンダーグラウンドシーンは盛り上がりを見せる。そして、1980年代初めからニューヨークのアンダーグラウンドシーンで活躍していた ソニック・ユースが、1990年にメジャー・レーベルのゲフィン・レコードよりデビューした翌1991年にはニルヴァーナが『ネヴァーマインド』でメジャー・デビューし、全世界で3,000万枚を売り上げる大ヒットを記録し、「グランジ」が話題になった。その後、パール・ジャムなどが次々とメジャー・デビューした。グランジはパンクとヘヴィ・メタルを合わせたような音楽性だった。
また、1990年代にアメリカ北西部のオリンピア・ポートランドを中心に、グランジ/オルタナティヴ・ロックと同時期にライオット・ガール(Riot Grrrl)といムーヴメントが起きた。しかしながら、1994年にニルヴァーナのリーダーであったカート・コバーンが自殺すると、グランジがオルタナティヴ・ロックに呑み込まれる形で、グランジ・ブームは急速に終息を迎える。ポップ・パンク、メロコアは、1980年代後半にバッド・レリジョンが、ハードコア的なサウンドをよりメロディックにスピーディーにさせたスタイルを確立した。
2000年代以後のパンク
グリーン・デイやオフスプリングが大ヒットアルバムを発表した。グリーン・デイは日本では青春パンクなどとも呼ばれたが、大統領を批判したり、戦争に反対するなど、硬派な面も見せていた。
主なパンク・アーティスト
UKパンク
- セックス・ピストルズThe Sex Pistols
- ダムドThe Damned
- ザ・クラッシュThe Clash
- ジェネレーションXGeneration X
- ザ・ジャムThe Jam
- シャム69 Sham 69
- ザ・スキッズ The Skids
- スージー&ザ・バンシーズSiouxsie & The Banshees
- Stiff Little Fingers
- ストラングラーズ The Stranglers
- 999
- バズコックス Buzzcocks
- ペネトレイション
- The Ruts
- リッチ・キッズ Rich Kids
- ロンドンSS London SS
- ワイヤー Wire
- The Undertones(出身はアイルランド)
- The Vibrators
- X-Ray Spex
- クラス Crass
USパンク
- パティ・スミス Patti Smith
- テレヴィジョン Television
- ラモーンズ Ramones
- ブロンディ Blondie
- ジョニー・サンダース Johnny Thunders
- トーキング・ヘッズ Talking Heads
- リチャード・ヘル Richard Hell
- Wayne County
- ハートブレイカーズ Heartbreakers
- The Dictators
- ディーヴォ Devo
- デッド・ボーイズ Dead Boys
- スーサイド Suicide
- Rocket from the tombs
- Fleshtones
- ジェームス・チャンス James Chance
- ミート・パペッツ Meat Puppets
- GGアリン GG allin
- ソーシャル・ディストーション Social Distortion
- ハスカー・ドゥ Hüsker Dü
- マイナー・スレット Minor Threat
- デッド・ケネディーズ Dead Kennedys
- ディセンデンツ Descendents
- ディッキーズ The Dickies
- ペル・ウブ Pere Ubu
- バッド・ブレインズ Bad Brains
- Circle Jerks
- The Modern Lovers
- Germs
- ニューヨーク・ドールズ New York Dolls
- ミスフィッツ Misfits
- ソニック・ユース Sonic Youth
- ブラック・フラッグ Black Flag
- The Weirdos
- X X
ハードコア・パンク
エモ
oi!
メロディック・ハードコア
ポップ・パンク
日本のパンクバンド
関連項目
- ガレージ・ロック
- パブ・ロック
- 日本のパンク
脚注
注釈
- ^ ディクテイターズ、ラモーンズ、パティ・スミスなどが挙げられる。
- ^ ジョン・ライドンは2017年のNPRのインタビューに対して「自分は生まれながらのアナーキストだ」「どの地域のいかなる政府も支持しないし、未来も決して(政府を)支持しない」と答えている。
- ^ 彼のスパイクヘア、破れたシャツに安全ピンのファッションは、マルコム・マクラーレンのパンク・ファッションに影響を与えた。
- ^ 共同経営者は、美術大学時代の同級生で当時私的なパートナーでもあったヴィヴィアン・ウエストウッド。ニューヨーク・ドールズのライブ・ツアーで自ら売り込んでマネージャーを務めた経験がある。初めは普通のブティックだったが、後にSM専門のゴムや革の服を売る店に衣替えした。マルコムは、後にバウ・ワウ・ワウ、アダム・アンド・ジ・アンツのマネージャーも務め、さらには自分自身もミュージシャンとしてデビューしている。
- ^ 「アナーキー・イン・ザ・UK」「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」などピストルズの多くの曲を作曲した。
- ^ 腕を貫通するほどの重傷だったという。
- ^ 解散後は「スタイル・カウンシル」を結成した。
- ^ ホルガー・シューカイらがメンバーだった。
- ^ 「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」が全米チャートでもヒットした。
- ^ 「ロック・アゲインスト・ブッシュ」のアルバムに参加している。
- ^ 「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」などパンクの歴史的な名曲を発表。
- ^ 「ホワイト・ライオット」「ロック・ザ・カスバ」などパンクの佳曲多数。
- ^ ビリー・アイドルは後に全米ヒットを何曲か獲得してロックスターになった。
- ^ パンクだけでなくモータウンなど多様な音楽性を持っていた。
- ^ 「ホンコン・ガーデン」はパワーポップ的な音楽性も示していた。
- ^ 代表曲は「ヴィーナス」「マーキー・ムーン」など。
出典
- ^ New Wave all music
- ^ 2017年3月31日 NPRネット記事。マンダリット・デル・バルコ(Mandalit Del Barco)によるジョン・ライドン・インタビューより http://www.npr.org 2019年11月12日閲覧
- ^ パンクロックは取り締まり対象、愛好者を丸刈りに インドネシア AFP(2018年1月10日)2018年1月11日閲覧
- ^ Stevie Chick (June 13, 2011). “The New York Dolls play 'mock rock' on British TV”. 19 March 2022閲覧。
- ^ NYの伝説的ライブハウス、CBGBが米空港内にレストランとして再オープン
- ^ 500 Greatest Albums of All Time: Suicide, 'Suicide' | Rolling Stone 2022年4月9日閲覧
- ^ Griffin, Jeff, "The Damned", BBC.co.uk. Retrieved on November 11, 2019.
- ^ Van Dorston, A.S., "A History of Punk", fastnbulbous.com, January 1990. Retrieved on December 2, 2019.
- ^ ビキニ・キル 『プッシー・ホイップド』花の絵 2014年2月17日
- ^ The Damned all music
外部リンク
- パンク・ロック特集:ジャンル虎の穴 - OnGen(2005年12月11日時点のアーカイブ)
- スクール オブ ミュージック 名盤でマスターする よくわかる音楽ジャンルの基礎講座 Vol.2 ~パンク編~ - MUSICO(2009年8月28日時点のアーカイブ)
- 第20回 ─ NY PUNK - bounce.com 連載(2003年12月4日時点のアーカイブ)
- みんなロックで大人になった 第3回 パンク・ロック - ウェイバックマシン(2009年6月18日アーカイブ分)
- ListenJapan
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