丸剤(がんざい、英: pills)とは、医薬品を球状に製したものであり、医薬品の(剤形)の名称の一つである。この項目は、特に明記がない場合、原則として医薬品としての丸剤に関連した内容を記載する。
概要
経口する医薬品製剤の剤形の一つであり、一般に「丸薬」と呼ばれることもある。
日本薬局方第18改正の製剤総則ではに分類され、以下のように定義されている。
- 丸剤とは、経口投与する球状の製剤である。
- 本剤を製するには、通例、有効成分に賦形剤、、又はそのほかの適切なを加えて混和して均質とした後、適切な方法で球状に成型する。また,適切な方法により, コーティングを施すことができる
蜂蜜やコメデンプンなどを結合剤として容易に成型でき、また、持ち運び可能な剤形であることから、漢方薬の古典である傷寒論、金匱要略でも丸剤の存在がみられるなど、伝統的医薬品の剤形としても古くから用いられてきた。
数え方
一般に1粒(つぶ)、2粒(つぶ)と数えるが、径が大きなものは1丸(がん)、2丸(がん)と数える場合もある。
丸剤の名称
一般に以下のような名称の付け方がされている。
- 主要な成分(生薬など)の名称あるいはその組み合わせを冠し「(生薬名)+丸」とした例(麻子仁丸、桂枝茯苓丸など)
- 成分の数(薬味の数)を冠し、「(成分数の漢数字)+味+丸」とした例(、八味丸)
- 1及び2 の付け方を組み合わせた例(八味地黄丸)
- その薬剤の効能やイメージなどを冠し「(効能あるいはイメージ)+丸」とした例(救命丸、旧称:征露丸⇒正露丸)
- 1及び4 の付け方を組み合わせた例(牛車腎気丸:牛(牛膝(ゴシツ))+車(車前子(シャゼンシ)+腎気(泌尿生殖器の働きを高める)+丸)
なお、剤形としては丸剤であるが、その名称の最後が「丹」となっているものも見受けられる(仁丹(医薬部外品)、万金丹(食品)など)。また、『和剤局方』など南宋の医書では「丸」を「円(圓)」と呼称したが、これは欽宗帝の諱である「桓」の発音と「丸」の発音が近いため改称したものである。
丸剤と同じ処方内容のものを煎じ薬とした場合は、最後に「料」の文字を付し「●●丸料」とする。
丸剤の例
- 宇津救命丸
- 樋屋奇応丸
- 桂枝茯苓丸
- 正露丸
- 麻子仁丸
- 複方毒掃丸
- ういろう
脚注
- ^ “第十八改正日本薬局方 目次~沿革略記、通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法”. 厚生労働省. 2021年10月13日閲覧。
- ^ 清水、1949、pp150-151。
- ^ 真柳誠「漢方一話:処方名のいわれ120:麻子仁丸」『漢方医学』第27巻第5号、2003年、p234、ISSN 0288-2485、2010年1月11日閲覧。
- ^ 小曽戸洋「漢方一話:処方名のいわれ23:桂枝茯苓丸」『漢方診療』第14巻、1995年、p47、ISSN 0288-3643。
- ^ 小曽戸洋『漢方医学』第24巻、2000年、p86、ISSN 0288-2485。
- ^ 小曽戸洋「漢方一話:処方名のいわれ6:八味地黄丸(八味腎気丸)」『漢方診療』第13巻第5号、1994年、p37、ISSN 0288-3643。
- ^ 吉田香織『都薬雑誌』第25巻、2003年、p38、ISSN 0285-1733。
- ^ (正露丸の歴史の項を参照)
- ^ 小曽戸洋「漢方一話:処方名のいわれ101:牛車腎気丸」『漢方医学』第25巻、2002年、p292、ISSN 0288-2485。
- ^ “森下仁丹歴史博物館「仁丹」誕生”. 森下仁丹. 2010年1月12日閲覧。
- ^ 鈴木昶 (医療ジャーナリスト)「日本の伝承薬15:万金丹:伊勢参りの薬が童歌に」『月刊漢方療法』第2巻第4号、1998年、p82。
- ^ 清水、1949、pp152。
- ^ 大塚敬節他編『近世漢方医学書集成』53、1981年、名著出版、p403。
- ^ 後山尚久『性差と医療』第2巻、2005年、p99、ISSN 1349-4589。
参考文献
- 清水藤太郎『日本薬学史』(1971年復刻)南山堂、1971年(原著1949年)。
- 「製剤総則」『日本薬局方第15改正』(PDF)(第15改正)厚生労働省、2006年3月31日、10頁。オリジナルの2013年1月19日時点におけるアーカイブ2010年1月11日閲覧。 。
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