ドナルド・ジョン・トランプ(英語: Donald John Trump、1946年6月14日 - )は、アメリカ合衆国の政治家、実業家。第45代アメリカ合衆国大統領(在任:2017年1月20日 - 2021年1月20日)。不動産業の富豪として著名になり、リアリティ番組の司会などタレント業も行ったのち、2016年の大統領選に共和党から出馬して当選し、合衆国大統領を一期務めた。2024年5月、有罪評決を受けた最初のアメリカ合衆国大統領経験者となった。
ドナルド・トランプ Donald Trump | |
大統領公式肖像(2017年10月6日) | |
任期 | 2017年1月20日 - 2021年1月20日 – |
---|---|
副大統領 | マイク・ペンス |
出生 | 1946年6月14日(78歳) アメリカ合衆国 ニューヨーク州ニューヨーク クイーンズ区 |
政党 | 民主党 ( - 1987年7月) 共和党 (1987年7月 - 1999年10月) (1999年10月 - 2001年8月) 民主党 (2001年8月 - 2009年9月) 共和党 (2009年9月 - 2011年12月) 無所属 (2011年 - 2012年) 共和党 (2012年4月 - ) |
出身校 | ペンシルベニア大学ウォートン・スクール(経済学学士) |
配偶者 | イヴァナ・トランプ (1977年4月 - 1992年3月) マーラ・メープルズ (1993年12月 - 1999年6月) メラニア・トランプ (2005年1月 - ) |
子女 | ドナルド・トランプ・ジュニア イヴァンカ・トランプ エリック・トランプ ティファニー・トランプ バロン・トランプ |
宗教 | キリスト教プロテスタント長老派 |
署名 |
来歴
1946年6月14日、ニューヨーク州ニューヨーク市のクイーンズ区で生まれ、同地で育った。
ペンシルベニア大学で経済学の学士号を取得した後、1971年に父親の不動産事業を引き継いでトランプ・オーガナイゼーションと改名し、クイーンズとブルックリンからマンハッタンに事業を拡大した。同社は高層ビル・ホテル・カジノ・ゴルフコースなどを建設・改装したりしていた。その後、主に彼の名前をライセンスすることによって様々なサイドベンチャーを開始した。1996年にミス・コンテストのミス・ユニバース・ブランドを購入し、2015年に売却した。2004年1月から2015年6月までリアリティ番組の『アプレンティス』をプロデュースし、司会を務めた。2020年8月に『フォーブス』は彼の純資産を21億ドルと推定している。
共和党員として2016年アメリカ合衆国大統領選挙に名乗りを上げ、16人の他の候補者を予備選挙で破った。彼の政治的立場はポピュリスト・保護主義者・ナショナリストと表現されてきた。民主党候補のヒラリー・クリントンを破って当選したが、一般投票数では敗北した。軍や政府の役職に就いたことの無い初の大統領となった。
2020年1月、ガーセム・ソレイマーニーを暗殺した事により、「殺人とテロ」容疑でイランから指名手配を受けている。
より厳格な移民政策を提唱している。様々な国への渡航禁止令を課す・移民法の執行強化により、移民の拘留・家族分離を増加させた。また、メキシコとの国境に「壁を作る」ことを誓ったが、これまでのところ既存のフェンスの改修にとどまっている。個人と企業のための減税パッケージを制定し、個人の健康保険の義務化のペナルティを撤回した。最高裁判所にはニール・ゴーサッチとブレット・カバノー、エイミー・コニー・バレットを任命した。
また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)貿易交渉・気候変動に関するパリ協定・(イラン核合意)・中距離核戦力全廃条約・国際連合人権理事会・国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)・世界保健機関(WHO)からアメリカを離脱させた。中華人民共和国との貿易戦争のきっかけとなる輸入関税を日本など世界各国に課し、日本や中華人民共和国などと貿易協定を締結した。また、エルサレムをイスラエルの首都として承認した。2017年4月にシリアの空軍基地にミサイル攻撃を実施。2018年12月にシリアからのアメリカ軍の撤退を表明するも、2019年2月に撤回して同年10月に油田地帯に残留させた。2018年6月から北朝鮮の指導者である金正恩と3回会談したが、2019年10月に非核化の協議は決裂した。また軍事作戦の中でISILの最高指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーやイランのイスラム革命防衛隊司令官ガーセム・ソレイマーニーの死をもたらした。
ロバート・モラー率いる特別検察官の調査では、トランプと彼の選挙運動は、政治的に有利になるとの信念の下で2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるロシアの干渉を歓迎・奨励していたが、犯罪的な共謀やロシアとの協調を告発するのに十分な証拠は見つけられなかった。モラーはまた司法妨害の罪でトランプを調査したが、その報告書ではその罪で起訴・無罪にもしなかった。アメリカ下院は2019年12月にウクライナへの軍事援助と引き換えに政敵への妨害を試みたとして権力の濫用と議会の公務執行妨害罪でトランプを弾劾した。共和党優勢の上院は2020年2月に両罪を無罪とした。
COVID-19パンデミックに対する反応は遅く、脅威を軽視して保健当局者からの多くの勧告を無視して証明されていない治療法・検査の利用の可能性について宣伝するなどした。
2期目の再選を目指して2020年アメリカ合衆国大統領選挙に出馬したが、民主党候補のジョー・バイデンに敗北した。トランプ陣営は「不正選挙」を主張し、再集計及び法廷闘争を行ったが、バイデン勝利の結果は変わらなかった。現職の大統領が落選するのは1992年アメリカ合衆国大統領選挙でのジョージ・H・W・ブッシュ以来28年ぶりのことであり、戦後落選した現職の大統領はトランプで4人目となる。
2021年1月6日のトランプ支持者による連邦議会襲撃事件をめぐり「反乱の扇動」を行ったとの批判が高まり、1月13日、トランプ大統領に対する2度目の弾劾の決議案が下院で可決されたが、2月13日、上院の弾劾裁判では、有罪57票、無罪43票で罰則に必要な3分の2に届かなかった。同年1月20日に1期4年限りで退任を迎えた。
2024年7月13日、ドナルド・トランプ暗殺未遂事件が発生。アメリカ東部のペンシルベニア州バトラーにて、2024年アメリカ合衆国大統領選挙に出馬するために行っていた選挙集会での演説中に銃撃され、右耳にけがを負った。
大統領就任前の経歴
生い立ち
ドナルド・トランプはフレッド・トランプとその妻メアリー・アンの第4子として、1946年6月14日にニューヨーク州ニューヨークのクイーンズ区で誕生した。父のフレッド・トランプは1905年10月生まれのドイツ系アメリカ人であり、ニューヨーク市クイーンズ区の富裕な不動産デベロッパーであった。ドナルドの父方の祖父フレデリック・トランプはもともとドイツ人で、1885年10月にドイツのラインラント=プファルツ州からアメリカに渡った移民であった。ドナルドの母メアリー・アンは、スコットランドのルイス島生まれで1930年5月にアメリカに渡った。ドナルドの両親は1936年1月に結婚し、5人の兄妹(女・男・女・男・男の順に生まれた5人兄妹)をもうけた(なお長女はドナルドより9歳ほど年上であった)。そのような環境でドナルド・トランプは育った。
青年期と教育
少年期はクイーンズ区ジャマイカ地区のミッドランド・パークハイウェイ沿いで暮らし、13歳までは父が運営委員を務めるフォレスト・ヒルズ地区の学校に通っていたが、ドナルドの素行不良(繰り返される不良行為)が原因で、(陸軍幼年学校のひとつ)に転入させられた。
1964年からブロンクス区のフォーダム大学に2年通った後に不動産の専門学科があった大学であるペンシルベニア大学の経営学部に転校し、1968年に経済学士号(BS〈ECon〉)を取得して卒業した。卒業後に父親が経営するエリザベス・トランプ・アンド・サンに入社して、仕事を通じて不動産管理や投資などの知識を身につける。
経営の開始
父親からの支援を受けて、1970年代からニューヨーク州などのアメリカ東海岸を中心としたオフィスビル開発・ホテル・カジノ経営などに乗り出し、1971年に父のフレッドから同社の経営権を与えられ、社名を現行の「トランプ・オーガナイゼーション」に改めた。
なお1982年時点では、トランプ氏は『フォーブス』誌の富裕層リストの最初のリストに、彼の家族の推定純資産2億ドルのシェアを持っていると記載されていた。だが1980年代に経済的損失を被ったため、1990年から1995年の間にリストから外された。なおこのころ、「赤狩り旋風」で悪名を馳せた弁護士のロイ・コーンを顧問弁護士としている。
1977年4月にはチェコスロバキア人でモデルのイヴァナと結婚し、「広告塔」としてインテリア関連会社・ホテル・カジノの運営を任せることで、メディアからの注目を浴びた。
異業種進出
1983年には、新興のプロアメリカンフットボールリーグであるUSFLののオーナーとなった。1985年には、春夏制であったスケジュールをNFLと同じ秋冬制にし、NFLとの合併を目指すよう他のオーナーたちを説得する。だがNFLを反トラスト法で訴えた裁判は実りなく、USFLは1985年をもって消滅することになった。
それまでも、自身が所有するアトランティック・シティのカジノまでの間のヘリコプター会社も経営しているなど航空業界にも進出していたが、1989年には当時経営不振に陥っていた大手航空会社の1つであるイースタン航空のニューヨーク発(ラガーディア空港)のシャトル便路線網を買収して、自らの名を冠した「トランプ・シャトル」を興すなど他異業種への展開を進めた。
また、ニューヨークを代表する最高級ホテルの1つでもある「プラザ・ホテル」を1988年に買収し、買収後はホテル経営の経験のないイヴァナに経営を任せた。
苦境(巨額債務、倒産、浮気の発覚、離婚、事業売却)
しかし、14パーセントという高い利回りの社債の発行を行った上に、回収すら難しい多額の投資を次々と行ったことや、重役3人をヘリコプター事故で同時に失ったこと、経営の専門知識がないどころか、学士号すらないイヴァナへ多くの実権を任せたことで経営が混乱したことなどがあだとなり、1990年にかけて巨額の債務を抱えることとなった。
父親から回転資金を僅かに受けたものの、1991年にカジノが、1992年にホテルが倒産し、また同年には不採算事業となっていた「トランプ・シャトル」や、鳴り物入りで手に入れた「プラザ・ホテル」も手放すことになった。なおこの前後には、自社にとって不利になる情報を書いたジャーナリストやメディアに対して訴訟を連発した。
さらにモデルのマーラ・メープルズとの浮気が発覚し、イヴァナとの間で離婚訴訟となった。この際に慰謝料を巡って裁判で泥仕合となりトランプとイヴァナの双方がメディアに情報をリークし合うなど、全米のメディアからの注目を集めた。なお1992年3月には離婚が成立し、1993年12月には子供を妊娠したことをきっかけにメープルズと再婚した。
1994年に、巨額の借金を少しでも減らすために資産を売って借金の一部の返済に充てることにし、遊覧船事業と(前述の)航空事業から撤退し、マンハッタンに所有する物件も多数を中国系の企業に売却した。(だが返済したのは一部にすぎず)現在も中国の銀行やゴールドマン・サックス、ドイツ銀行などから多額の借金を抱えている。しかし「トランプ・プラザ」や「マー・ア・ラゴ」など多くの物件は手元に残した。
返り咲き
この様に困難な状況に陥ったものの、トランプはロスチャイルド、ウィルバー・ロス、フィデリティ・インベストメンツと交渉し、協力をとりつけ、これらの肝いりでこの危機を切り抜けた。また、資金調達のために「トランプ・オーガナイゼーション」のニューヨーク証券取引所への上場を行い、約12億ドルの調達に成功した。
1990年代後半から好景気を背景に復活を成し遂げ、著名な経済誌「フォーブス」が選ぶアメリカのトップ企業400社に再びランクインし、マンハッタンに新たな高級アパートメントを多数建設する他、ラスベガスやアトランティック・シティなどアメリカ各地に多数のホテルやカジノをオープンするなど、再びアメリカの大手不動産業者として返り咲いた。
なおその後「エンパイア・ステート・ビルディング」の50パーセントの所有権を手に入れた。1999年6月にはイタリア人モデルとの浮気がふたたび発覚し、メープルズと離婚した。
2000年アメリカ合衆国大統領予備選挙
カムバック後の2000年アメリカ合衆国大統領選挙には、リチャード・ニクソンやロナルド・レーガンなどの、共和党選出の歴代大統領の参謀を務めた政治コンサルタントのロジャー・ストーンをブレーンにアメリカ合衆国改革党の予備選挙に出馬したものの、政治コメンテーターのパット・ブキャナンが選出されることになった。当時のトランプは自身を保守と位置付けたが、以下の多くの点でリベラルと思われた。なおストーンは2016年アメリカ合衆国大統領選挙の際にもトランプのブレーンとして動くことになる。
- 自身を調停者と呼び、公民権法を拡大してレズビアンとゲイを保護し、彼らが堂々と軍に入れるようにすると語る
- 包括的な医療保険制度を求め、社会保障制度を守るために超富裕層への1回限りの課税を提案する
- 品の無い扇動政治家と評されるパット・ブキャナンの「ユダヤ人、黒人、ゲイ、メキシコ人……」に関する発言に異を唱えて「彼はこの国を分断したがっている」と言い、自分はそういう差別はしないと述べる
2000年アメリカ合衆国大統領選挙
1999年10月25日、に入党。ジェシー・ベンチュラの支援を受けて、2000年アメリカ合衆国大統領選挙への出馬を表明する。トランプの予備選キャンペーンはメディアの注目を浴びることとなった。財政赤字削減のために超富裕層に税率14.25パーセントを一度だけ課すことや、同性愛者差別を禁止するための1964年公民権法改正・法人税引き上げを財源に国民皆医療保険を実現することなどを掲げた。しかし、「改革党の内部対立が全く酷いこととなっている」として2000年2月には撤退している。
この予備選挙で改革党の大統領候補となった政治コメンテーターのパット・ブキャナンが、「メキシコ系移民を叩き出せ」などと暴言を繰り返していたことに対して、トランプは「パット・ブキャナンはレイシストだ。あんなことを言ったらメキシコ系の支持を失う」、「私はブルックリンで低所得者の移民の人たちと仕事をしてきた。ニューヨークにはいろんな人がいて当たり前。だから、差別的な発言は不快」と発言している。
なおこの時期、自著『The America We Deserve』の中で、「われわれは今、テロ攻撃の脅威に晒されている。今度くるものは、あの(1993年WTC地下駐車場で起きた)世界貿易センター爆破事件なんてガキの爆竹に思えるぐらいの規模のものだ…。まともな頭のアナリストはその可能性さえ受け入れられないだろう。しかしその多くが自分と同じ思いで、事の成り行きを眺めている。知りたいのはIF(起こるかどうか)ではない。WHENだ[要検証 ]」「ある日われわれは、オサマ・ビン・ラディンという住所不定の謎の人物がアメリカ最大の敵だという話を聞いた。米軍戦闘機がアフガニスタンの奴の拠点を荒らし…奴はどっかの岩の下に雲隠れした。そして世の中がすっかり忘れ去ったころに、奴は再び新たな敵、新たな危機としてわれわれの前に姿を現すのだ」と書いており、図らずも後の2001年9月11日に起こるアメリカ同時多発テロを予言したような言葉を残している。
アプレンティス出演
さらに2004年からNBCのリアリティ番組である『アプレンティス』にホストとして登場し、トランプの会社の正社員となるべく番組内で働く出場者に対し「You're fired(お前はクビだ)」と宣告するセリフが人気となった。これにより、かねてからアメリカ国内における知名度が高かったトランプは、その知名度をさらに上げることになった。なお、同番組の出演は大統領選挙出馬前の2015年6月まで続いた。
『アプレンティス』が子供の間にも人気が広がった時に、末期癌の子供の願いを叶える団体から依頼を受けて、トランプから「お前はクビだ」と言われたいという末期癌の少年に会いに行ったことがある。その際に少年は『アプレンティス』の出演者のようにスーツとネクタイを着用してトランプと対面したが、トランプは「お前はクビだ」とはどうしても言えず、「がんばれ。人生を楽しんでくれ」と言って帰ってしまったことがある。
2005年1月にスロベニア出身でモデルのメラニアと結婚し、2006年3月に息子のバロンを授かった。
サブプライム問題
2007年後半に起こったいわゆる「サブプライム問題」以降の不況を受け、社債の利子の支払い不能に陥るなど経営難に陥っていた「トランプ・プラザ」、「トランプ・マリーナ」、「トランプ・タージマハール」を経営する「トランプ・エンターテイメント・リゾーツ」が、2009年2月17日に連邦倒産法第11章の適用を申請した。
同社の創業者でもあるトランプはこれに先立ち、同社の取締役会に対して「同社の株式をすべて購入する」との申し出を行ったが拒否されたことを不服として同社の取締役を辞職した。
2009年2月には「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」に出演した際に、同じく連邦倒産法第11章の適用を申請した「ゼネラルモーターズはつぶれるべきだ」と発言した。しかし同社は翌年から急に業界の経営が上向いた。
また2010年9月9日には「グラウンド・ゼロ」近くにイスラム教の文化センターが計画されている問題で、センター予定地を価格の25パーセント上乗せで買い取りたいと申し出た。
2012年アメリカ合衆国大統領選挙
2011年4月の世論調査では、トランプは2012年アメリカ合衆国大統領選挙における共和党の候補として、アーカンソー州のマイク・ハッカビー前州知事と並んで2位の支持率を獲得した(1位はマサチューセッツ州のミット・ロムニー元州知事) 。 2012年2月2日には、共和党大統領候補としてミット・ロムニーを支持すると表明した。
同年5月16日、共和党の予備選挙への不出馬を表明したが、最後に付け加える形で、のちの大統領選に、再び「(政治)見習いのセレブ(Celebrity Apprentice)」として出馬する予定であるとも述べた。
2016年アメリカ合衆国大統領選挙
出馬表明会見
2015年6月16日にはトランプ・タワーの会見場で、2016年アメリカ合衆国大統領選挙に共和党から出馬することを表明した。
この出馬表明の場でトランプは「メキシコ(政府)がメキシコの人を送ってくるときは、メキシコのベストな人は送ってこない。メキシコは問題が沢山ある人を送ってきて、彼ら(問題が沢山あるメキシコ人)は問題を我々のところに持ち込む。彼らはドラッグを持ちこむ。彼らは犯罪を持ちこむ。彼らは強姦犯だ。そして、いくらかは多分良い人だ! (国境警備隊)と話したら我々の直面していることを話してくれた。」と破天荒な発言し、大きな反発を招いた。
アメリカではヒスパニック(中南米)系住民が増加の一途をたどっており、2050年には国民の3人に1人はヒスパニックになると予想されている。このヒスパニックの反感を買う発言はトランプ自身の首を締めるものと言われた。この発言を受けてアメリカのスペイン語放送最大手でヒスパニック向けのテレビ番組を放送しているユニビジョンは、トランプが共同事業者として参加しているMUO(ミス・ユニバース機構)との提携関係を解消し、「ミス・ユニバース」関連の放送を今後一切行わないと発表した。放送メディア大手NBCも「ミス・ユニバース」の放送を打ち切ると発表し、「ミスUSA」の放送も打ち切り、自社番組『アプレンティス』からトランプを降板させ、トランプ抜きで放送を続けると発表した。
トランプは同時に「私はメキシコにもメキシコ人にも敬意を抱いているし好きだよ」(I have great respect for Mexico and love their people and their people's great spirit.)とも言ったが、大手百貨店メイシーズもトランプ・ブランドを撤去すると発表した。さらに男子ゴルフのメジャー大会優勝者で争われるPGAグランドスラムを開催する全米プロゴルフ協会(PGA)は、10月の大会をトランプが所有するロサンゼルスのコースで行う予定だったが、別の場所にすると発表した。
同月、トランプはケーブルテレビのインタビューで、大統領に当選すれば、投資家のカール・アイカーンを財務長官に、実業家のジャック・ウェルチや投資家のヘンリー・クラビスを政策ブレーンに起用すると発言した。アイカーンは「突然のことで驚いた」「嬉しいが、この提案に応じられるほど私は早起きしていない」と一旦は辞退したものの、後に受諾を表明した。 カール・アイカーンはトランプのためにスーパーPACを組織するなど大統領選を支援し、支持を呼びかけている。アイカーンはタイム・ワーナーの大株主であったが、2006年2月7日にラザードとタイム・ワーナー解体を主導したことが 343ページの企画書 公開により明らかとなった。そのタイム・ワーナーは2016年10月現在、AT&Tが買収する見込みである。
なお8月には著名な選挙参謀であったロジャー・ストーンが辞任した。しかしストーンはその後もヒラリー・クリントンを「夫のビルのレイプを隠した」と(事実を元に)したネガティブキャンペーンを繰り広げるなど、事実上トランプ陣営を後押しする言動を取り続けた。またトランプも同様のネガティブキャンペーンを繰り広げた。
11月、ヒスパニック系の著名な知識人67名が、「数百万の死者を出すことに繋がった異民族に対する歴史的運動を想起させる」危険なヘイトスピーチであるとの非難声明を発表した。
出馬表明後
2015年12月にはムスリム系夫妻がカリフォルニア州サンバーナディーノ郡で福祉施設を銃撃し14人を殺害した事件の後、「当局が(テロの)全容を把握するまで当面の間ムスリムの入国を完全に禁止するよう」提案した。メディアはこれを「ムスリム入国禁止発言」と伝え、世界的に波紋が広がり、イスラム世界はトランプ・ブランドの商品を回収するなど激しく反発した。
この発言を巡っては、アラブの大富豪として知られるサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子が「おまえは共和党だけでなく全米の恥だ。おまえは決して勝てないから大統領選から撤退しろ」“You are a disgrace not only to the GOP but to all America. Withdraw from the U.S. Presidential race as you will never win."と、Twitterで攻撃して話題になった。
これに対してトランプは「まぬけ王子のアルワリード・タラルの望みは、我がアメリカの政治家をパパのお金で操縦することだ。私が当選したら出来ないがね」“Dopey Prince Alwaleed Talal wants to control our U.S. politicians with daddy’s money. Can’t do it when I get elected."とツイートし返して注目を集めた。
その後も様々な「問題発言」が取り上げられていたが、2016年3月当時も、共和党の指名候補争いでトップの支持率を保っていた。
2016年1月19日、2008年アメリカ合衆国大統領選挙で共和党の副大統領候補だったサラ・ペイリン元アラスカ州知事から支持を表明された。
2月27日、大統領選挙から撤退したニュージャージー州知事クリス・クリスティから共和党指名争いにおける支持を得る。
トランプ人気の強さが明らかになるに連れて、トランプの集会を訪れる抗議者も増えている。 特にシカゴで予定されていた3月11日の選挙集会では、移民に関する発言に反発した黒人やヒスパニック系の反トランプ派数百人が現れ、会場となっていたアリーナの5区画を占拠した。既に会場にはトランプの演説を聞くために8500人から1万人の聴衆が集まっていたが、抗議者と支持者の間で殴り合いも起き、トランプ陣営は「安全上の懸念」を理由として集会の中止を発表した。
同日、4日に共和党指名争いから撤退した元神経外科医のベン・カーソンから大統領候補としての支持を受けた。
民主党候補者への言動
トランプは自身の集会でヒラリー・クリントンを「2008年の予備選挙で、ヒラリー・クリントンはバラク・オバマのペニスに屈した(シュロングされた)」と罵倒した。さらに前回の民主党候補者の討論会の途中でクリントンがトイレに行ったことに関して、「反吐が出るね。その話はしたくはない」とまくしたてた。2015年4月16日、自身が利用するツイッターで「ヒラリー・クリントンが夫を満足させられていないなら、なぜ彼女は(自分が)アメリカを満足させられると思っているのか?」というツイートを共有し、後にそのツイートを削除した。
かねてよりチェロキー族を先祖に持つエリザベス・ウォーレン上院議員を「ポカホンタス」と蔑称で呼ぶなど、SNS上で民主党関係者や共和党の対抗馬などへの挑発を続けてきたトランプであるが、ヒラリー・クリントンと最後まで予備選を争ったバーニー・サンダース候補が民主党党大会においてクリントン支持を表明するとTwitterにおいて、「バーニー・サンダースはインチキヒラリーに寝返った。これじゃあサンダースがやったこと、生み出したエネルギー、そして集めた金、何の成果もないじゃないか! 時間の無駄だったな」と挑発。サンダースは、「Never tweet.(二度とツイートするな)」と投稿した。オバマがクリントン支持を表明したことについて誰もオバマの続投を望んでいないとツイートすると、クリントンは「Delete your account.(アカウントを削除しなさい)」と短く返し話題を呼んだ。
2016年8月10日、銃規制の強化をクリントンが主張していることについて、「銃を所持する権利を支持する人なら何かできるだろう」と発言し、支持者に暗殺を示唆したものとして波紋が広がった。トランプの選挙対策本部は、支持者に投票を呼びかけたものであると釈明に追われた。アメリカ合衆国シークレットサービスは、トランプ陣営に対して事情聴取を複数回行ったことを明らかにした。
一方のトランプは肺炎と診断された民主党候補ヒラリー・クリントンの回復を願うと表明。トランプ陣営の職員らにもクリントンの病状に配慮し、この件に関するソーシャルメディア上の投稿を控えるよう指示している。
性的発言
2016年10月8日、『ワシントン・ポスト』は、2005年にトランプがテレビドラマ『デイズ・オブ・アワ・ライブス』の収録に向かうバスの中で、バラエティ番組『』の司会者と、結婚直後であったにもかかわらず、「私は魅力的で美しい女性に磁石のように引き寄せられ、キスを始めてしまう」と既婚女性と性的関係を持とうとしたことを発言し、猥談を繰り広げる動画を公開した。
ポール・ライアン下院議長は、気分が悪くなるとしてトランプの演説会への参加を取りやめ、ラインス・プリーバス共和党全国委員長も非難する声明を発表。さらには、下院議員が、共和党の議員として初めてトランプ支持を撤回するなど、批判の広がりを受けたトランプは「気分を害した人がいたら謝罪する」と傍若無人の問題発言を繰り返すトランプが、自らの発言について謝罪を行う初の事態に追い込まれた。
10月10日までに共和党に所属する連邦議会議員、州知事331人のうち少なくとも160人がトランプを批判し、うち32人はトランプに選挙戦からの撤退を要求した。
メディア報道
2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるアメリカの新聞・雑誌の支持動向
候補 | 日刊紙 | 週刊紙 | 雑誌 | 学生新聞 | 国際報道機関 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
ヒラリー・クリントン | 226 | 121 | 13 | 53 | 10 | 425 |
支持なし | 55 | 12 | 0 | 4 | 0 | 70 |
ドナルド・トランプ以外 | 6 | 1 | 4 | 3 | 4 | 18 |
ドナルド・トランプ | 8 | 4 | 0 | 0 | 0 | 12 |
ゲーリー・ジョンソン | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 |
エヴァン・マクマリン | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
ヒラリー・クリントン以外 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
トランプは他の候補よりも少ない資金で指名争いをリードすることで、資金力だけでは勝てないことを印象づけた。
ルビオ、ヒラリー、ジェブ・ブッシュらがウォール街から大口の献金を得ていることと対照的に、トランプは献金を募らずに自弁による選挙活動を続けており、同陣営が使った28億円(2500万ドル)という費用はあらゆる共和党候補よりも少ない。
2016年2月時点で、共和党の各候補が1票を獲得するために投じた費用は、ジェブ・ブッシュが14万円(1320ドル)、ルビオが3万円(260ドル)、テッド・クルーズが2万6千円(233ドル)、トランプが6800円(60ドル)である。
有権者1人あたりに投じた金額は、ジェブ・ブッシュ6万円(551ドル)、ルビオ3400円(30ドル)に対して、トランプは340円(3ドル)である。
トランプ自身は高額の寄付を受け取らず、選挙費用を自腹で賄っていることに関して自身の集会で、「金を断るのはすごくきついよ。だって、これまでは受け取ってきたんだから。金を受け取って、金を愛して、また受け取ってきた。今は金をくれるという相手に、あんたの金はいらないと断っている。受け取ったらどんなことになるかわかっているからな」と発言して、会場では割れんばかりの喝采が響いた。
またトランプに対するネガティブ広告は週ごとに増し、2月末までに費やされたトランプ封じのネガティブキャンペーン予算は76億円(6700万ドル)に上る。各候補は対トランプ予算を3億円以上用意しており、フロリダの予備選投票ではトランプ阻止のために7億9千万円(700万ドル)が使われた。
2016年3月上旬には共和党のテレビCMの半数はトランプ降ろしを狙うものになり、対トランプのネガティブCMは6万件に達し、「弾幕」や「嵐」と呼ばれるほど増えた。
また欧米メディアは、一様にトランプに否定的な反応を見せている。アメリカの政治専門紙ザ・ヒルの調査によると2016年10月までにアメリカの発行部数上位100紙のうち民主党候補のクリントンを支持した新聞が17紙あったのに対し、トランプ支持を打ち出した新聞は1紙も存在しなかった。女性蔑視発言によるトランプの失速が明らかになって以降、トランプ批判に踏み切りクリントン支持を打ち出すメディアは急増しており、歴代大統領に関する資料を収集するカリフォルニア大学サンタバーバラ校のプロジェクトが同じく上位100紙を対象に行った調査では、クリントン支持33紙、ジョンソン支持3紙、トランプ支持は0紙であった。ジョンソン支持を打ち出した3紙は元来共和党寄りの論調の新聞である。
- 『エコノミスト』は、「トランプのアメリカ - なぜトランプ氏は危険なのか」という題の社説を掲載、トランプの政策の変遷や政党遍歴、ポピュリズムや外交政策を批判した。
- 『ニューズウィーク』は、トランプについてアドルフ・ヒトラーと同じデマゴーグであり、自画自賛が激しく、傲慢で具体性も無いのに詭弁を弄して民衆の支持を集める人物であるとする記事を掲載した[出典無効]。
- 『ハフィントン・ポスト』は、2015年にはトランプの選挙運動を「見せ物」(sideshow)に過ぎないとして、政治欄で扱わずエンタメ欄に掲載していたが、12月7日、アリアナ・ハフィントン(ハフィントンポスト創設者で社長、編集長)がトランプを「トランプの発言は初めから醜かった(ugly)」「トランプは女性蔑視主義者だ」「トランプは人種差別主義者」「トランプの好きにはさせない」「彼の発言は面白くない。不快で危険だ。」と非難し、再び政治面で扱う決定をしたと発表した。
- 共和党系保守紙『』は、ドナルド・トランプとテッド・クルーズの2人を共和党への脅威として辛辣に批判し続けており、2016年には「反トランプ」特集を組んだ。
- タブロイド紙『デイリーニューズ』の黒人記者は、トランプが2度離婚していること、牧師に罪を告解した経験が無いことや人種差別的とされる発言が多いことなどを挙げ、キリスト教徒のふりをしている紛い物であると批判した。トランプへの支持を表明したジェリー・ファルウェル(バージニア州のリバティ大学学長)に対しても「南部の保守的な白人キリスト教徒はいつも人種差別的である」とした上で、トランプのことをファルウェルのような保守派のキリスト教徒に愛される人間ではないとした。
- 『ニューヨーク・タイムズ』は、1月30日、民主党のヒラリー・クリントンを「近代史上、最も能力の高い大統領候補」と称賛する一方で、共和党のトランプを「経験も無ければ、安全保障や世界規模の貿易について学習することへの興味もない」と評した。
- 『ウォール・ストリート・ジャーナル』は2月22日の社説で、トランプ支持を見直さなければ得体の知れないものに真っ逆さまに飛び込むことになると訴えかけ、民主党が党内の社会主義者(バーニー・サンダース)を「甘やかさなかったように」、共和党支持者も反トランプ票を1人の対抗馬に集めることが望まれるとした。
- 『ワシントン・ポスト』は2月25日の社説でトランプの大統領就任阻止を訴えた。トランプが1100万人に上る非正規移民を強制送還すると発言した点に触れて、「スターリン政権かポル・ポト政権以来のスケールの強制措置」であると批判、「良心ある共和党指導者がトランプ氏を支援できないと表明し、指名阻止のためにできることをする時だ」と訴えた。10月13日には、トランプについて「偏見に満ち、無知で、嘘つきで、自己中心的で、執念深く、狭量で、女性蔑視で、財政面で無頓着。民主主義を軽蔑し、米国の敵に心を奪われている」と強く批判した上で、「根気があり、困難にめげず、決然とし、しかも賢明」なクリントンへの支持を表明した。
- キリスト教有力紙『』は、トランプを「ミソジニスト(女性差別主義者)であり、なおかつ遊び人である」として、「女性と少数派を貶めている」と批判、トランプを落選させるよう有権者に呼びかけた。
- 『フォーリン・ポリシー』には、軍にテロ容疑者の家族、疑わしい市民に対する拷問を命じるとするトランプの発言に反対する50人の共同声明が掲載された。彼らは「我々の知る有力な法律家は皆それらを違法だと考えている」として、トランプに違法な命令を出すような約束をやめるように呼びかけた。またアメリカの大統領が戦争犯罪を行うよう命令してもアメリカ軍は法的職業上の義務として拒絶するとした。
- 『フィナンシャル・タイムズ』は、トランプがウィスコンシン州の予備選挙で敗北すると、投票者がようやくトランプの欠点に気がつき始めたのかもしれないというかすかな希望が見えたとし、有権者に共和党の大多数がトランプに反対する流れに今から続いても決して遅くはないと呼びかけた。トランプ当選後には、アメリカ国民は「自爆テロ犯を政府に送り込んだ」とし、アメリカの民主主義は南北戦争以来、150年間経験したことの無い試練に直面するとして、改めてトランプを酷評した。
- 『ガーディアン』はトランプ当選を受けて、左派系論壇の重鎮として知られるによる社説を掲載。トランプの「醜い」選挙キャンペーンやトランプを当選させたアメリカ国民を厳しく批判した。
- 『ボストン・グローブ』は、2016年4月10日、「共和党はトランプを阻止せよ」と題する社説とともに「トランプ大統領」の統治下を想定した架空の記事を掲載してトランプが掲げる1100万人の移民強制送還などの政策を批判した。
- アメリカ最大手紙『USAトゥデイ』は2016年9月29日、行き当たりばったりで人種偏見的思想を持つトランプを、確定申告もしない嘘つきであるとして、「米国が大統領に求める性格、知識、堅実さ、誠実さを欠く」トランプは大統領に相応しくないと論評した。政治的中立を謳う同紙が大統領に対する支持・不支持を明確にするのは1982年の創業以来初のことである。
- 老舗雑誌『アトランティック』もトランプを「主要な政党の候補者としては、大統領選挙史上最も不適格だ」として政治的中立の立場を52年ぶりに取りやめ、クリントン支持を表明した。
- 長年共和党支持を打ち出してきたテキサス州の最大手紙『ダラス・モーニングニューズ』は、トランプを「党のほぼ全ての理想と相いれない。党員でも保守主義者でも無い」と批判し、「大統領になる資格は無く、投票に値しない」として不支持を表明。第二次世界大戦後初めて民主党候補であるクリントンの支持を表明した。
- アリゾナ州の最大手紙『アリゾナ・リパブリック』も、創刊時の紙名が『リパブリカン』(共和党員)である共和党支持の新聞であるが、トランプを「保守でもなく、大統領になるべきでも無い」として1890年の創刊以来初めて民主党候補を推薦した。
- その他共和党寄りの論調で知られる新聞では、『ヒューストン・クロニクル』(テキサス州)が史上2回目、『』(オハイオ州)が100年ぶり、『』(カリフォルニア州)が創刊以来初めて民主党支持を打ち出した他、『』(バージニア州)、『』(ニューハンプシャー州)、『』(ミシガン州)のように第3の候補とされるリバタリアン党のゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事を支持する新聞もある。
- 激戦区フロリダ州の『タンパベイ・タイムズ』などもクリントン支持を明らかにしている。
このようなメディアの逆風と、少ない選挙資金で指名争いの首位を保ってきた逆説的な状況については、マスコミ誌上でも多くの分析があり、全体としては主流政治家への不満の他、支持者の見識不足と結論づける論調が多いが、非常に少数の意見としてはアメリカの大手シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のエドワード・ルトワックによる見解などもある。
なおトランプ陣営は自身に対して批判したメディアの取材を拒否し、『ワシントン・タイムズ』、『ハフィントン・ポスト』、『バズフィード』、『デイリー・ビースト』、『ユニビジョン』、『フュージョン』、『』、『ポリティコ』、『ナショナル・レビュー』など多くの報道機関の記者から記者証を取り上げたり、トランプの選挙対策本部長コーリー・ルワンドウスキ(後に解任)が質問しようとした女性記者の腕を掴むなどの強硬策に打って出ている。
数少ないメディアによる支持表明の例としては『ニューヨーク・ポスト』があり、日韓核武装論やメキシコ国境への万里の長城建設といった政策を「新人らしいミス」と一蹴しつつも、「不完全だが、可能性に満ちている」として支持を表明している。
大統領就任後には自身に批判的なCNNを「人々の敵」、「フェイクニュース」と非難。ホワイトハウスは、2月24日のショーン・スパイサー報道官の会見を正式な会場を使わず、ぶら下がり取材方式に変更。トランプに批判的なCNNや『ニューヨーク・タイムズ』、『ロサンゼルス・タイムズ』、『ニューヨーク・デーリー・ニューズ』、『ポリティコ、ザ・ヒル』、『バズフィード』、『ハフィントン・ポスト』などの国内メディアや、『デーリー・メール』、BBCなどの殆んどの外国メディアを排除した。許可されたのは、保守的な論調で知られるFOXニュースやスティーブン・バノン首席戦略官が会長を務めた右派のニュースサイトブライトバート・ニュース・ネットワークなどであった。これに対してホワイトハウス記者クラブは「強く抗議する」として非難。AP通信や『タイム』は抗議のためボイコットした。
日本語メディアの反応
アメリカ合衆国大統領選挙は世界中の政治や経済の秩序に大きな影響を与えるため世界中のメディアが注目しており、アメリカの同盟国として最大の経済力を持つ日本でも新聞各紙はトランプの躍進について社説で論評している。
- 『読売新聞』は3月3日の社説で、トランプが日本・中国・メキシコなどを打ち負かすと発言したり、偉大なアメリカを取り戻すといった「単純なスローガン」の繰り返しによって危うい大衆扇動をしていると評し、トランプを支持する動きを「反知性主義」と断じた。
- 『朝日新聞』はトランプが「アメリカと世界を覆う難題」に冷静に取り組まず「社会の分断」を煽ってきたと主張、トランプは国民の鬱屈する心情に「扇動的」に訴えかけており、「自由主義の旗手を自負する大国」の指導者に相応しくないとした。またアメリカの強みは流入する移民とともに成長することであるとした上で、アメリカでは白人が着実に減っている反面、中南米系とアジア系が増えているのだから「人種的な意識があるならば時代錯誤である」として、アメリカ国民には「移民を排し、外国を責め、国を閉じ」ても何も解決しないので「グローバル」で優秀な指導者を選ぶように期待するとした。
- 『毎日新聞』はトランプがメキシコとの国境に壁を作って移民を締め出し、イスラム教徒の入国も禁じる訴えをしていると紹介したうえで、世界がこのような発言で息苦しくなっているとし、共和党にそれで良いのかと疑問を投げかけ、トランプには、「暴言や下品なパフォーマンス」を慎むべきだとした。
- 『日本経済新聞』はトランプが支持を集める背景を理解すべきとした上で、トランプが「人種差別的な発言」を繰り返しているとした。またトランプの「極端な主張」は必ずしも保守主義を体現しておらず、そのような主張に共鳴する支持者の姿を見ると、歯止めがきかなくなった「大衆迎合主義の危うさ」を感じるとし、アメリカ社会の分裂がトランプや他の候補の政策によって高まれば日本が不満の捌け口にされる恐れもあると指摘した。
- 『産経新聞』は『トランプ現象 「痛快だから」では済まぬ』と題する記事を掲載。トランプの政治姿勢について「貿易で日本、中国、メキシコを打ち負かすと連呼」していて、「日米同盟の意義」を理解していない、「有無を言わせず通商紛争を仕掛けるかのような」内向きで独善的な姿勢であるとして、トランプの躍進に不安を覚えるとした。他方、トランプの対立候補には、トランプを支持する人たちが抱えている政治や社会への不満を克服する手法や政策を提示するよう求めた。
- 『中日新聞』は「移民やイスラム教徒に対する無用の憎悪をあおり喝采を浴び」る「ポピュリストの手法」によるトランプの躍進に世界の憂慮が深まっていると指摘した。
共和党予備選挙での勝利
2016年5月3日、インディアナ州予備選挙で勝利し共和党の大統領候補指名獲得に必要な代議員1237人の確保がほぼ確実となった。
これを受け、ライバル候補のテッド・クルーズ及びジョン・ケーシックが予備選からの撤退を表明。他の候補者がすべて選挙戦から撤退し、予備選挙に残っている候補者はトランプのみとなったため、この時点でトランプの大統領候補指名獲得が事実上確定した。
2016年7月の共和党予備選挙で正式に大統領候補に指名された。
一般投票
2016年11月8日(アメリカ東部時間)執行の2016年アメリカ合衆国大統領選挙の一般投票で、民主党指名候補のヒラリー・クリントン、リバタリアン党指名候補のゲーリー・ジョンソン、アメリカ緑の党指名候補のジル・スタインを相手に接戦の末、全米で過半数の270人以上の選挙人を獲得し勝利した。
12月19日の選挙人による投票で、過半数の270人以上の選挙人がトランプに投票した場合は当選者となり、バラク・オバマの後任として2017年1月20日に第45代アメリカ合衆国大統領に就任する。
当選後
閣僚の人選は、次期副大統領のマイク・ペンスが2016年11月11日に組閣責任者となり、指揮することになった。同月15日にカール・アイカーンがツイッターで語ったところによると、財務長官にゴールドマン・サックスの共同経営者を務めた投資家のスティーブン・ムニューシン、商務長官には元N・M・ロスチャイルド&サンズの投資家ウィルバー・ロスが起用される。
2016年12月19日に選挙人投票が行われ正式に第45代アメリカ合衆国大統領に決定した。
2017年2月、自身のツイッターでホワイトハウス記者晩餐会へ出席しないことを発表した。大統領が出席しないのは1981年3月30日に暗殺未遂事件で銃弾を受け病床に伏せていたレーガン大統領以来36年ぶり。
アメリカ合衆国大統領職(2017年-2021年)
大統領就任式
2017年1月20日をもって第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。就任時の年齢は70歳220日で、第40代大統領ロナルド・レーガンの69歳349日を上回り歴代最高齢の大統領となったが、後に後任のバイデンによりこの記録は更新された。就任演説では、「アメリカ第一主義(アメリカ・ファースト)」を掲げた。
政治姿勢
保護主義や孤立主義的な主張を展開し、自国の利益を最優先とする「アメリカ第一主義」に立って既存の国際合意や政策の枠組みを否定するトランプの一連の言動や文化的な多様性に対する非寛容な態度などの政治姿勢は「トランピズム」(Trumpism)と呼ばれる。
政権スタッフ
職名 | 氏名 | 任期 |
---|---|---|
大統領 | ドナルド・トランプ | 2017年 - 2021年 |
副大統領 | マイク・ペンス | 2017年 - 2021年 |
大統領顧問団 | ||
国務長官 | レックス・ティラーソン | 2017年 - 2018年 |
マイク・ポンペオ | 2018年 - 2021年 | |
国防長官 | ジェームズ・マティス | 2017年 ‐ 2019年 |
マーク・エスパー | 2019年 - 2020年 | |
クリストファー・ C・ミラー | 代理:2020年 - 2021年 | |
財務長官 | スティーヴン・ムニューシン | 2017年 ‐ 2021年 |
司法長官 | ジェフ・セッションズ | 2017年 - 2018年 |
ウィリアム・P・バー | 2019年 - 2020年 | |
内務長官 | ライアン・ジンキ | 2017年 - 2019年 |
デイヴィッド・バーンハート | 2019年 - 2021年 | |
農務長官 | ソニー・パーデュー | 2017年 - 2021年 |
商務長官 | ウィルバー・ロス | 2017年 - 2021年 |
労働長官 | アレクサンダー・アコスタ | 2017年 - 2019年 |
ユージーン・スカリア | 2019年 - 2021年 | |
保健福祉長官 | トム・プライス | 2017年 |
アレックス・アザー | 2018年 - 2021年 | |
住宅都市開発長官 | ベン・カーソン | 2017年 - 2021年 |
運輸長官 | イレーン・チャオ | 2017年 - 2021年 |
エネルギー長官 | リック・ペリー | 2017年 - 2019年 |
ダン・ブルイエット | 2019年 - 2021年 | |
教育長官 | ベッツィ・デヴォス | 2017年 - 2021年 |
退役軍人長官 | デービッド・シュルキン | 2017年 - 2018年 |
ロバート・ウィルキー | 2018年 - 2021年 | |
国土安全保障長官 | ジョン・フランシス・ケリー | 2017年 |
キルステン・ニールセン | 2017年 - 2019年 | |
チャド・ウルフ | 代理:2019年 - 2021年 |
「将軍(General)」と金融大手「ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)」出身者、大富豪を意味する「ガジリオネア(Gazillionaire)」から抜擢、それぞれの頭文字を取り通称「3G政権」と言われる。元将軍、ゴールドマン出身者からは共に3人が起用される。
政権の性格について、ポリティコは「保守派の理想チーム」、ニューズウィークが「米国史上最も保守的な政権」、ロサンゼルスタイムズが「現代史において最もタカ派の国内政策を取る政権」と評しており、CNNも超保守的とするなど、マスメディアはトランプ政権を超保守主義と位置付けている。ザ・ヒルは、エスタブリッシュメントの共和党員とされるジョン・マケインやミット・ロムニーらであれば選択しなかったであろう、「型破りな政権」と分析している。
一方で、ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ政権のイデオロギーを明確に分類することは不可能に近いとしている。
政権発足後2か月を迎えてもなお議会で未承認のポストがあることについて、トランプは「民主党の妨害」であると批判している。
- 大統領として内閣の指名も含めた最初の公式命令に署名するトランプ
- ジョン・ロバーツ最高裁判所長官を伴い、就任の宣誓を読むトランプ
- 就任演説を行うトランプ
政見
1987年以前と2001年から2009年にかけては民主党員であり、同党のクリントン元大統領夫妻に過去10回に亘って献金もしている。また1999年から2001年までの間、アメリカ合衆国改革党にも所属していた。2000年の大統領選には同党から立候補しようとしたが結局断念。2016年の大統領選では共和党から出馬しているが、アメリカ合衆国改革党の分派であるアメリカ改革党の支持も得ている。
トランプの政策的主張は共和党の主流派とは大きく異なっており、政見について敵対する勢力からは大衆迎合主義(ポピュリズム)であると揶揄されることも多い。
トランプをポピュリストとする1人でロイター通信のコラムニスト、ビル・シュナイダー(英語)によれば、ポピュリストとしてのトランプには右翼ポピュリズムの特徴と左翼ポピュリストの特徴が両方あるという。
シュナイダーによれば、ポピュリストにも右翼と左翼の区別があり、左翼ポピュリストはウォール街と「富を独占する1%の富裕層」を攻撃するが、右翼ポピュリストはリベラルの俗物ぶりとエゴの大きさを批判し、高学歴者がキリスト教の伝統的価値を破壊することを批判する。
そしてドナルド・トランプはそれが合体しており、自分自身が富裕層であるのにウォール街を愛しておらず、右派のように移民、少数派、女性を攻撃するばかりか、左派のようにヘッジファンド嫌いであり、ウォール街の側も、反トランプの広告に何百万ドルも使って、トランプの勝利を阻もうとしているという。
支持層
こうしたトランプの主張の支持者は、ニューヨーク・タイムズによれば「高校を出ていない白人」「農業や製造業といった古い産業の底辺」であり、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば「高卒の白人、特に男」「下流労働者で非民主的な思想の持ち主」だという。
中国の宗教団体『法輪功』の機関紙『新唐人電視台』の記述によれば、中国系や韓国系の合法的な移民にはトランプを支持する者もいるという。
2016年の大統領選挙におけるNBC社の調査では、トランプへの投票者の傾向は次のようであった。
- 学歴:大学を卒業していない者はトランプ支持が最も多かった(4候補者のうち51%)。
- 性別:男性はトランプ支持が最も多かった(52%)。
- 年齢:45歳以上はトランプ支持が最も多かった(52%)。
- 人種:白人はトランプ支持が最も多かった(57%)。なお、黒人からの支持率は8%、ヒスパニックからの支持率は28%、アジア系からの支持率は27%、「その他人種」からの支持率は36%であった。
大統領令
詳細はを参照
No. | No. | 令名/説明 | 署名日 | 発行日 | FR 引用 | FR Doc. Number | 参照 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 13765 | 医療保険制度改革の撤廃 | 2017年1月20日 | 2017年1月24日 | 82 FR 8351 | 2017-01799 | |
2 | 13766 | 優先度の高いインフラプロジェクトの環境レビューと承認の迅速化 | 2017年1月24日 | 2017年1月30日 | 82 FR 8657 | 2017-02029 | |
3 | 13767 | 2017年1月25日 | 2017年1月30日 | 82 FR 8793 | 2017-02095 | ||
4 | 13768 | 米国内の公共安全を強化 | 2017年1月25日 | 2017年1月30日 | 82 FR 8799 | 2017-02102 | |
5 | 13769 | 国家を外国のテロリストからの米国への侵入から守る | 2017年1月27日 | 2017年2月1日 | TBA | 2017-02281 | |
6 | 13770 | エグゼクティブブランチ従業員による倫理約束 | 2017年1月27日 | TBA | TBA | TBA | |
7 | 13771 | 2017年1月30日 | TBA | TBA | TBA | ||
8 | 13772 | 米国の金融システムを規制するための基本原則 | 2017年2月3日 | 2017年2月8日 | 82 FR 9965 | 2017-02762 | |
9 | TBA | 犯罪削減と公共安全に関するタスクフォース | 2017年2月9日 | TBA | TBA | TBA | |
10 | TBA | 連邦、州、部族、地方の法執行官に対する暴力の防止 | 2017年2月9日 | TBA | TBA | TBA | |
11 | TBA | 国境を越えた刑事組織に対する国際連邦法の施行と国際人身売買の防止 | 2017年2月9日 | TBA | TBA | TBA |
外交
反共主義や自由化、民主化を掲げて介入するジョージ・W・ブッシュ元大統領をはじめとする共和党のネオコンや、ヒラリー・クリントンなどの民主党のタカ派(リベラルホーク)とトランプは一線を画していると見られており外国の事に関与するよりも国内問題に集中して取り組むべきだというモンロー主義(孤立主義)により近いという見方もある。トランプの古くからの親友で長年アドバイザーだったロジャー・ストーンはリチャード・ニクソンの崇拝者であり、トランプには輸入課徴金の採用やニクソンの演説の引用など、力を背景にしつつ保護主義的で国益重視だったニクソンの影響があるともされている。またニクソンの腹心だったヘンリー・キッシンジャーを「非常に尊敬している」として度々助言を仰いでいる。
トランプは自らの外交方針について「私は孤立主義者ではないが、’’米国が第一’’だ(I’m “America First.”)」「我々はあらゆる国と親しくするが、いかなる国に対しても付け入る隙を与えない」と要約している。
ときにアメリカのリベラル・保守派の双方が非難している他国指導者を支持するかのような発言が見られ、1990年にインタビューの中で、崩壊前年のソビエト連邦と天安門事件直後の中国について語った箇所は、トランプが共和党候補者でタカ派であるにもかかわらず、共和党右派からも批判されている。
インタビュアーがソビエト連邦の情勢をどう見るか尋ねると、トランプは「ピケが多発しており、今すぐにも革命が起こる。ロシアはリーダーシップを失って混乱している。がっちりした手を講じないゴルバチョフ大統領(当時)に問題があるのだろう。」と答えた。
この前年(1989年)に起きた中国の天安門事件を念頭において「がっちりした手とは中国のような対応?」とインタビュアーが質問すると「中国は学生たちを一掃した。彼らは悪いやつで恐ろしい。だが、彼らは我々に力の強さを見せつけた。一方の我々の国は、弱くなっている」とコメントした。
また、「ソビエト連邦は転覆すると予言しておく。ゴルバチョフが極端な弱さを示しているからだ。突然いたるところで騒乱がおきて、究極的には暴力革命に繋がるだろう。ゴルバチョフは素敵なリーダー扱いされており今後も国際的な信用を増していくだろうが、それは彼がソ連を破壊しているからだ。」とゴルバチョフの改革がソ連を脆弱化させているという認識を示した。
この発言は、右派ナショナル・レビューの共和党とイラク戦争を支持する編集幹部から、「(ソ連や中国の強権政治について)こんな発言をする人間だからプーチンを褒めても驚くには値しない」「自由や民主主義や人権に背を向ける民主党のように、共和党まで落ちてしまうのか。」「私は残忍で殺人的で卑怯な中国政府を吹き飛ばしたかった!」と非難されている。
この発言はCNNで行われたテレビ討論会でも追及され、その際にも天安門で起きたことを支持していないと強調した上で、中国政府が「暴動」を押さえ込んだという表現を使ったことで、天安門事件でリーダー格だった王丹、魏京生やウイグル人ウーアルカイシといった著名な中国民主化運動家から「まるで中国共産党の指導者」「中国共産党による抑圧に反対する者への侮辱だ」「アメリカの価値観の敵」として抗議を受けている。
ロシアや中国とは小さくない問題を抱えているとしながらも、「敵対関係になってはならず、共通の利益を見いだすべきだ」とする外交方針を演説した。
トランプ政権初の国家安全保障戦略では「原則ある現実主義」「力による平和」を掲げ、中国とロシアを米国や国際秩序に挑戦する「修正主義国家」「競争相手」と呼ぶ一方で「米国の国益を守る前提で両国と協力を目指す」と述べ、さらにイランと北朝鮮を「ならず者国家」と位置付けて日本などの同盟国との連携を掲げた。ただし、同盟国との負担差には常々不満を表明した。
ロシア
大統領就任前の2015年9月にシリアで空爆を続けるロシア連邦軍について「ロシアはアメリカに敬意を払っていないが、もしイスラム国を攻撃したいのならロシアに好きにさせればいい。イスラム国を排除させるのだ。我々もイスラム国を排除したいのだから気にすることなどない」と発言。ロシアが主導権を握ることを容認する考えを示した。
2016年7月の演説では「イスラム国に対抗して、我々がロシアや中国などと一緒になってイスラム国がもたらす地獄と混乱を一掃すれば素晴らしいだろう?」と発言している。
当時はソ連だった1980年代からロシアや他の旧ソビエト連邦構成国でもビジネスを行っている経験上、ロシアとも関係を深めるべきであると発言しており、「アメリカ・ロシアがもっと協力すれば、テロを根絶し世界平和を再構築することができると常に感じている。貿易のみならず、あらゆる恩恵が相互の信頼関係からもたらされる」と述べている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、「内外で尊敬されている人物」「オバマと違って少なくともリーダーだ」とたびたび称賛しており、プーチンもトランプを「トランプには才能がある」と評価している。ただし、トランプは「ロシアとは関係は良くなると思うが、もしかしたらそうでもないかもしれない。私をプーチン大統領が褒めたといっても、これは交渉の助けにならない」とも発言している。
トランプ陣営が制作した選挙宣伝用ビデオの中で、ナレーションがロシアを「最強の敵」と表現したことについては、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「ロシアを悪魔のように扱っている」と批判した。
また、国際空域でアメリカ軍機へのロシア連邦軍戦闘機の接近が相次ぐことに関連して、オバマはロシアに弱腰であるとして、「ロシアの戦闘機がアメリカ機に接近しても、外交が役に立たないなら、それらを撃墜する必要がある」とも明言している。
民主党のメール流出事件については「ロシアや中国といった我々の友人はハッキングの地獄に突き落としたのだ」「ロシアにはさらにメールを見つけてもらいたい」「ロシア・中国もしくは他の国がメールを持っているなら、正直に言う、彼らは私に見せてほしい」と発言している。
大統領選勝利後、電話会談でプーチン大統領に対して「強固で永続的な関係を築きたい」と述べたとする声明を発表した。
しかし、2017年4月12日の記者会見では中国と比較して「ロシアとは全くうまくいかず、史上最低と言える」と述べた。また、同時期にプーチン大統領も「トランプ政権になってむしろ米露関係は悪化した」とする見解を示した。
同年6月、ロシア疑惑で自身の弁護を担当するマーク・カソウィッツがロシア連邦政府・プーチン大統領の影響下にあるクライアントを複数持っていることなどが報じられた。
同年6月20日、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領と首脳会談を行い、ミンスク和平合意の履行がなされていないことを理由に、ロシアに対して更なる追加制裁を科すことを声明した。
同年7月6日、ポーランドを訪問して「(集団的自衛権を定めた)北大西洋条約第5条を強く支持し、中東欧の安全と平和維持に責任を負う米国は地域を不安定化するロシアの行動に対処する」と演説した。翌日の7月7日にはプーチン大統領と初の米露首脳会談を行い、シリア南西部の停戦と安全地帯の設置やウクライナ東部での停戦合意履行と両国代表の設置で合意した。サイバー分野でも協力が模索されたが、9日にトランプは「実際に協力できるとは思わない」と述べた。
同年7月28日、議会で可決した対ロシア制裁強化法案を承認し、同年8月2日に署名した。ロシアは報復として755人のアメリカの外交スタッフの国外退去を求め、プーチン大統領は史上最低の米露関係は長引くと述べた。トランプ政権も報復としてロシア公館を閉鎖する措置を行った。
同年10月25日、「中国は我々を助けてくれている。対照的にロシアは別方向を向き、我々の邪魔をしている」と北朝鮮問題でのロシアの対応を批判した。
同年11月11日、訪問先のベトナムでロシア側から米露首脳会談の予定が発表されるもアメリカが否定して見送られたことにロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が非難する事態となった。トランプは会場でプーチン大統領と短く会話してシリアでの衝突回避と和平促進とIS掃討で一致し、北朝鮮問題は協議しなかったとして「中国に加えてロシアも協力すれば、より迅速に問題は消える」と述べた。
同年12月14日、ロシアのプーチン大統領との電話会談で北朝鮮問題での情報交換促進で一致し、15日の記者会見で「中国は協力しているが、ロシアは協力していない。ロシアの協力は必要で重要だ」と述べた。
2018年1月17日、ロイター通信のインタビューで「北朝鮮問題でロシアは全く助けになっていない。中国は協力しているが、中国が制裁した分をロシアが埋め合わせしている」と非難した。
同月31日、ロシアに対する追加制裁を見送る方針を明らかにした。ただし、今後の対象となる200人超の政治家・実業家などのリストを公表し、ロシア側を強く牽制する姿勢を見せた。また公表された対象者の中には、ドミートリー・メドヴェージェフ首相をはじめする多くの権力者が含まれていた。
同年3月15日、2016年アメリカ合衆国大統領選挙などでサイバー攻撃を行ったとしてロシアに対するトランプ政権初の制裁を発表した。ロシア連邦保安庁(FSB)やロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)など5団体とプーチン政権に近い個人19人に制裁を貸した。
同月26日、イギリスで起こったロシアの元スパイらが標的となった殺人未遂事件の報復措置として、アメリカに駐在するロシア外交官60人の国外追放、シアトルにあるロシア総領事館の閉鎖を命じた。翌27日にドイツのメルケル首相・フランスのマクロン大統領と相次いで会談し、ロシア外交官の追放を支持する連携で一致した。最終的に全28カ国の欧米諸国も同様の措置を取り、150人超のロシア外交官に追放処分を科した。ロシアも報復として60人の外交官を追放してサンクトペテルブルクのアメリカ総領事館を閉鎖させた。
同年4月3日、バルト三国首脳との共同記者会見で「私ほどロシアに厳しい人物はいない」と述べつつ「ロシア・中国とうまくやるのは良いことだ。プーチンと良好な関係を築ければよいが、そうならない可能性もある」と付け加えた。6日、トランプは「混乱や憎しみの種を撒く勢力を放置しない」と表明してプーチン政権に近いオリガルヒ(新興財閥)やロシア政府高官など24の個人と14の企業に対する制裁を発表した。これを受けてロシアの株式・為替・債券市場は暴落し、11日の議会でメドベージェフ首相は「米国は制裁を経済戦争の手段にさせつつある」と批判した。
同年4月11日、空母打撃群とミサイル駆逐艦2隻を地中海に派遣して「シリアにミサイルが飛んでくるぞ。ロシアよ、準備するがいい。化学兵器で自国民を殺戮して愉しむ獣に与するべきではない」と述べて米露関係は史上最悪と評した。プーチンはトランプがシリアを軍事攻撃したことに対して「国際法違反であり、シリアへの侵略行為」と批判した。
同年6月11日、ロシア企業5社と個人3人に対する追加制裁を発表する。
同年10月20日、ロシアが条約に違反しているとしてソ連時代に結んだ中距離核戦力全廃条約を破棄する意向を示した。
2019年6月28日、第14回20か国・地域首脳会合での米露首脳会談で中国も加えた「21世紀の軍備管理モデル」を目指した核軍縮協議の継続で一致した。
同年8月3日に「化学兵器の使用停止」を確約していない点を挙げ、ルーブル以外の外貨で国債を発行する際にアメリカの金融機関の引き受けを禁じ、アメリカの商品・技術の輸出制限の強化を表明した。
中東
これまでの中東政策には否定的であり、イラク戦争にも反対してきた。
CNNの番組の中では、次のように述べた。
- わかるだろ、あなたがサダム・フセインを好きかしらないが、彼はテロリストを殺していた。テロリストにとってイラクは楽しい場所ではなかった。ところが今や、イラクは「テロリズムのハーバード大学(Harvard of terrorism)」だ。
- 数年前のイラクを見たらわかる。彼(サダム)が良いやつだったと言うつもりはない。彼はおそろしい奴だったが、今よりもマシだった。
"If you look at Iraq from years ago, I'm not saying he (Saddam) was a nice guy. He was a horrible guy but it's better than it is now,
- 人々は頭を刎ね飛ばされたり、溺れさせられたりしている。今この時、彼らの状態は、かつてなく最低で、サダム・フセインやカダフィの時代より悪い。
“People are getting their heads chopped off. They're being drowned. Right now it's far worse than ever [than it was] under Saddam Hussein or Gaddafi,
- 何が起こったか見てくれ。リビアは大惨事だ。大災害だ。イラクも大災害。シリアも大災害。中東まるごと大災害だ。全部、ヒラリーとオバマの時代に吹き飛んでしまった。
“look what happened. Libya is a catastrophe. Libya is a disaster. Iraq is a disaster. Syria is a disaster. The whole Middle East. It all blew up around Hillary Clinton and around Obama. It blew up.
一方で2002年のラジオの中では、「あなたならイラクに侵攻する?」と問われて「するだろうね(Yeah I guess so)」と答えていたので、かつてはイラク戦争を支持していたのではないかという指摘もある。トランプはこの件について、「私は開戦する前から反対派になり、2003年からはっきりと反対しているのだから意味がない」と主張した。
イスラエルを「アメリカの最も信頼できる友」としており、「我々は100%、イスラエルのために戦う。1000%戦う。永遠に戦う」や「イスラエルはユダヤ人の国家であり、永遠にユダヤ人国家として存在することをパレスチナは受け入れなければならない」などと表明するなど、明確にイスラエル寄りの姿勢を示している。2016年7月に行われた共和党大会では、採択された政策綱領で同盟国であるイスラエルとの関係強化が掲げられ、パレスチナに言及した2国家解決案の削除などがされたことから「史上最も親イスラエル的な綱領」と称賛した。大統領就任後も2国家解決に拘らない意向を表明している。大統領選の際もイスラエルで前例のない規模の在外投票を呼びかけるキャンペーンを行った。また、ヨルダン川西岸地区でのイスラエルのユダヤ人入植地の建設を支持しており、自らが掲げるメキシコとの間の壁建設も自身の著書でイスラエル西岸地区の分離壁を参考にしているとしている。トランプ陣営最大の資金援助者はユダヤ人シオニストで有名なシェルドン・アデルソンであった。
1983年にユダヤ民族基金から米国とイスラエルの関係への貢献を称えられて表彰されており、2004年にニューヨーク五番街で行われたイスラエルを応援するパレードでグランドマーシャルを務めたり、「Jewish Voice」というメディアから、ユダヤ人の孫の祖父であることをどう感じるかと聞かれて、「私はユダヤ人の孫だけでなくユダヤの娘(イヴァンカ)もいて、とても光栄に思います」と答えており、父や兄など家族もともにユダヤ人コミュニティとの繋 がりは深い。父フレッドの友人でもあったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とは旧知の仲であり、大統領選に出馬する前の2013年にも再選キャンペーンに「本当に偉大な首相だ」と応援する36秒のビデオメッセージを寄せていた。ただし、ネタニヤフ首相も、イスラム教徒を入国禁止にするというトランプの発言に関しては、発言の数時間後には「イスラエルはあらゆる宗教を尊重する」と表明するなど距離を置き、トランプは予定していたイスラエル訪問を「余計なプレッシャーをかけたくないので大統領になってからする」と延期した。2016年9月25日、トランプはネタニヤフ首相との会談を果たし、イラン核合意やイスラエルへの軍事支援を話し合った他、エルサレムをイスラエルの首都として承認することやパレスチナにイスラエルをユダヤ人国家として受け入れさせることで一致した。大統領選の勝利の際も真っ先にイスラエルと電話協議してネタニヤフは「トランプはイスラエルの真の友人」と祝福するビデオメッセージを寄せ、トランプもネタニヤフを米国に招待した。
イランの核開発問題については合意破棄を「私の最優先事項」と選挙前から訴え、大統領就任後に核合意からの離脱を表明した。
サウジアラビアについては「守りたいが、彼らはいくら負担してくれるんだ?」と発言したが、大統領就任後は初外遊先にイスラエルとともにサウジを選んで日本円にして12兆円の武器売却に署名した。
エジプトについては、「親イスラエルだったホスニ・ムバラク政権を倒してムスリム同胞団を助けた」とオバマの外交政策を批判していたが、大統領就任後はエジプトと北朝鮮の軍事協力関係を理由に支援の中止・延期を通告した。その後、エジプトが北朝鮮との軍事協力関係を断絶したことを受け、支援の再開を表明した。
2017年4月6日、トランプ大統領は、政権発足後初の米中首脳会談の最中、シリアのアサド政権が一般市民に対し、化学兵器を使用したとみなし、地中海に展開していた、アメリカ海軍の駆逐艦2隻より巡航ミサイルトマホーク59発を発射し(シャイラト空軍基地攻撃)、化学兵器使用に関わったとされる空軍基地などを攻撃したと発表した。関係国や国際連合とは連携しない単独行動主義(ユニラテラリズム)に基づく軍事作戦であり、シリア内戦開戦以来アメリカがアサド政権を直接攻撃したのはこれが初であった。この攻撃の際にトランプは「彼をぶち殺そう!やろう。奴らをどんどんぶち殺そう(Let’s fucking kill him! Let’s go in. Let’s kill the fucking lot of them.)」とシリアのバッシャール・アサド大統領の暗殺も指示していたのに対して当時国防長官だったジェームズ・マティスが「我々はそんなことはやらない。もっと慎重にやる」と無視したことがボブ・ウッドワードによって暴露されており、2020年9月にトランプはこの暴露が事実であったことを認めた。また、この時トランプ政権は北朝鮮に対するメッセージでもあることを明言した。同年4月13日、アフガニスタンのISILの拠点に核兵器に次ぐ最大級の破壊力を持つとされる大規模爆風爆弾兵器(MOAB)を初めて実戦投入したことも地下要塞を複数持つ北朝鮮への牽制とされた。
2017年5月20日、大統領就任後の初外遊先にはオバマ政権の対イラン政策でアメリカと関係が緊張したサウジアラビアとイスラエルを選んで中東重視を打ち出し、長女のイヴァンカ補佐官や娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問らも同行した。その直前にはイランへの追加制裁も発表した。現職大統領としては初めて嘆きの壁を訪問し、イランを共通敵としてイスラエルとアラブ諸国の和平を推進する意向を表明した。また、アルカイダやISILと並べてヒズボラとハマースをテロ組織と断じたことでハマスなどから反発を招いた。
2017年10月12日、トランプ政権は2018年12月31日をもって、アメリカ合衆国は国際連合教育科学文化機関から脱退してオブザーバーになる意向を表明したが、理由としては、ユネスコが反イスラエルに偏向していることなどを挙げた。なお、アメリカ合衆国は1984年にも離脱しており、2003年に復帰していた。
12月7日、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都として承認し、テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転することを表明した。
2018年4月13日、トランプ大統領はシリアのアサド政権の関連施設への攻撃を指示し、地中海に展開していた、アメリカ海軍の駆逐艦三隻よりトマホーク約100発を発射し、空爆に戦略爆撃機のB-1も参加させた。また、イギリス軍のトーネードとタイフーン、フランス軍のアキテーヌ級駆逐艦とミラージュ、ラファールも作戦に加わり、イギリスのテリーザ・メイ首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領との電話会談で合同作戦が成果をおさめたという認識で一致した。
12月19日にISILとの戦争に勝利したとしてシリアからのアメリカ軍撤退を表明するも、翌2019年10月にシリアのハサカ県とデリゾール県における油田地帯に残留させることを決定した。
2019年3月25日、シリアのゴラン高原の主権はイスラエルにあるとする文書に署名し、同年6月16日にはゴラン高原の新たな入植地をイスラエルは「トランプ高原」と名付けた。
6月20日、イスラム革命防衛隊によるアメリカ軍無人偵察機の撃墜を受けて対イラン軍事行動を決定するも攻撃10分前になって撤回した。代わりにサイバー攻撃で報復したとされ、24日には最高指導者アリー・ハーメネイー師らに対する制裁措置を発表した。
10月27日、カイラ・ミューラー作戦を実行してISILの最高指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーを急襲して自爆に追いやったことを発表した。
2020年1月3日、イランのイスラム革命防衛隊のガーセム・ソレイマーニー司令官を自らの指示で無人攻撃機によって殺害したことを発表した(バグダード国際空港攻撃事件)。また、これに対してイランが報復すればイランの施設52か所を攻撃すると応酬した。
2月29日、アフガニスタン紛争に関して、トランプ政権とターリバーンの間で和平合意が成立した(ドーハ合意)。アメリカ合衆国は135日以内に駐留軍を縮小し、14か月後の2021年4月末までにNATO軍と共に完全撤退すること、ターリバーンがアルカーイダなどを取り締まりアフガニスタンをテロの拠点にしないことが決まった。また合意にはアフガニスタン政府が5000人、ターリバーンが1000人の捕虜を解放することも盛り込まれた。しかし、和平合意に参加していないアフガン政府は5000人の解放に同意せず、1500人の解放しか認めなかった。アフガン政府の関与なしに結んだこの合意は、専門家に「史上最も不名誉な外交交渉の一つ 」と呼ばれた。ただし、翌年にバイデン米大統領がこの合意を履行すると、トランプは激しく非難した。
8月13日、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化を仲介したとしてアブラハム合意を発表した。同年9月11日、イスラエルとバーレーンの国交正常化を仲介したと発表した。同年10月23日、イスラエルとスーダン暫定政権の国交正常化を仲介したと発表した。
12月10日にはイスラエルとモロッコの国交正常化を仲介し、西サハラに対するモロッコの主権を認めると発表した。
アジア
アジア・太平洋での海洋安全保障については、2015年9月3日にラジオで司会者から「中国が日本やフィリピンの船を沈めたら、どう対応するか」と聞かれたときは、「相手に考えを知られたくないから答えない」「『これをする』『ここを攻撃する』と言ってしまうのがオバマ大統領の問題。」と明言しなかった。また、「中国の行動をきっかけに米国が第三次世界大戦を始めるとは考えない」「中国をよく理解している」「中国とは良いビジネスを重ねてきた」として「米国は中国に対して貿易上の影響力を持っている。圧力をかけて譲歩を引き出すことができる」とし、尖閣諸島を中国が占領した場合も「答えたくない」としている。
また、2016年2月25日にテキサス州でのテレビ討論会では「日本、韓国、ドイツ、など全ての同盟国を守ることはできない」とし「もっとお金を払わせたいんだ」と、在日・在韓米軍の駐留費用の負担増を求める考えを示した。
3月10日、フロリダ州では社会保障の財源について司会者から聞かれると、「狂気じみた北朝鮮が何かするたびに米国は艦船を派遣するが、事実上、米国が得るものは何もない」と話し、アジア地域を含む在外アメリカ軍の駐留経費を削減する可能性に言及した。
3月21日、ワシントン・ポストによるインタビューにおいて、人件費を除いた日韓の米軍駐留経費のうち、50%を日韓が負担していることを指摘された際、「50%? なぜ100%ではないのか?」と答え、海外に基地を有することで米国は利益を得ているかと問われた際には、「個人的にはそう思わない」「米国はかつての地位にはないと思う。米国は大変強く、大変豊かな国だったと思うが、今は貧しい」とした上で、それにもかかわらず巨額の予算を自国のためではなく外国の防衛のために投じていると述べた。
3月26日のニューヨーク・タイムズのインタビューの中で、記者から「日本は世界のどの国よりも多額の駐留支援金を払っている」と指摘されると、「払っているが、依然我々が負担しているコストよりも遥かに少ない」と反論し、「米国には日韓の防衛のために巨額の資金を費やす余裕はない」と主張した。その上で、日韓が駐留経費の負担額を大幅に増額しないのであれば、「喜んでそうするわけではないが」、在日・在韓米軍の撤退も辞さないと明言した。さらに、NATOや日米などの防衛条約について「非常に不公平」であるとして、再交渉する意向を表明した。
更に同インタビューの中で、「アメリカがこのまま弱体化を続けるなら、私が議論するかどうかとは無関係に、日韓は核兵器の保有を望むようになるだろう」「日本が北朝鮮の核の脅威にさらされた場合に、日本が核兵器を保有することはアメリカにとってそんなに悪いことではないだろう」と述べると共に、記者の「(北朝鮮が何をしでかすかわからないから)日本が自分たち自身の核兵器を必要とするのも分かるし、日本は米国に頼るばかりではいられない…(というわけか)」との発言に対して「本当にその通りだと思っている。特に、北朝鮮の脅威があるから。北朝鮮は日本に対して非常に攻撃的だ。北朝鮮は中国とイラン以外のどの国に対しても攻撃的なんだ」と答え、日韓の核武装に反対しない考えを示唆した。
日本や中国に対しては、大統領選挙出馬表明会見の際にも「中国、メキシコ、日本、その他多くの場所から、仕事を取り返す。私は我々の仕事を取り返し、我々の金を取り返す。(I’ll bring back our jobs from China, from Mexico, from Japan, from so many places. I’ll bring back our jobs, and I’ll bring back our money.)」と言及がある。大統領選挙勝利後の初の会見でも中国と日本とメキシコなどが貿易不均衡をもたらしていると問題視し、大統領就任後も中国と日本は不公平な貿易を行っていると度々批判している。
日本
1987年から日本をライバル視した言動で知られ、1988年には「日本は我々を愚か者に見せようとしている。日本が同盟国なら我々は敵と直面したくない」、1989年にロックフェラー・センターが三菱地所に買収された際は「ニューヨークを吸い尽す日本を止めなくてはならない」、1993年にも日本が全面的な市場開放をしなければ日本製品をボイコットすべきなどと発言していた。
出馬当時から日本を中国やメキシコと並べ、「米国から雇用を奪った国」として責めたてるなど、「ジャパンバッシング」の急先鋒であり、「日本人と日本企業の競争力は尊敬しているが、好意は抱かない」と発言したこともある。出馬会見では、「彼ら(日本)は、百万台以上の日本車を送ってくるが、我々はどうだ? 最後にシボレーを東京で見たのはいつだ? 存在しませんよ。彼らは我々をいつも打ち負かしてきた」と発言している。また、日本が米国産牛肉の輸入に課しているものと同率の関税を日本からの自動車輸入に課すべきとしている。大統領就任後も自動車分野での日本の市場開放を要求している。
為替政策についても批判しており、たびたび「日本の度重なる円安誘導のせいで、友達は高いキャタピラーではなく、コマツのトラクターを購入した」、「日本の安倍は(米経済を)殺す者だ〈この訳はあくまで日本メディアが当てたものであり、"killer"には褒め言葉としての用法があることに留意する必要がある〉、やつは凄い。地獄の円安でアメリカが日本と競争できないようにした」(Abe from Japan, who's a killer, he's great. He's already knocking the hell out of the yen)などと発言している。ウォールストリート・ジャーナルは「確かに円安は日本の輸出の助けとなっているが、日銀の金融緩和政策は内需拡大とインフレ目標実現のためで、輸出促進のためではない。それに、コマツは米国内で何千もの雇用を創出している」と指摘するなど、論理の粗雑さが指摘されている。
日米安保条約についても、アメリカ防衛の義務を日本が負っておらずアメリカが日本を防衛する義務を負っていることに不満があると見られる。1990年には「日本は石油の7割近くを湾岸地域に依存しているが、その活動は米軍が守っている。日本はアメリカ軍に守られて石油を持ち帰ってアメリカの自動車メーカーを叩きのめしている」「日本の優れた技術者はビデオデッキや車を作り、アメリカの優れた技術者はミサイルを作って日本を守っている。日本にコストを弁償させるべきじゃないか」と発言。
大統領選挙出馬後には、
- “If somebody attacks Japan, we have to immediately go and start World War III, OK? If we get attacked, Japan doesn't have to help us.”
(「もし誰かが日本を攻撃したら私たちは即座に第3次世界大戦を始める、OK? だが、我々が攻撃を受けたら日本は私たちを助けなくてもいいんだ。」)
- “If Japan gets attacked, we have to immediately go to their aid, if we get attacked, Japan doesn’t have to help us.”“That’s a fair deal?”
(「もし日本が攻撃されたら私たちは直ちに救援に行かなくてはならない。もし私たちが攻撃を受けたら日本は私たちを助けなくてもいい。」「この取引は公平なのか?」)
との発言が伝えられている。
しかし、大統領選直後の2016年11月17日にアメリカのニューヨークにあるトランプタワーでの安倍首相との初会談を経て態度が軟化する。初会談で安倍首相から本間ゴルフの特注品が贈られ、2人は軽くゴルフ談議した後、安倍首相は「実はあなたと私には共通点がある。あなたはニューヨーク・タイムズに徹底的にたたかれた。私もニューヨーク・タイムズと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った」と述べ、それを聞いたトランプは右手の親指を突き立てて「俺も勝った!」と答え、トランプの警戒心は吹き飛んだとされる。日米首脳会談では在日米軍駐留経費の負担増額について言及せず、ワシントンの共同記者会見で安倍首相を横に「私どもの米軍をホストしてくれている。日本国民にお礼を申し上げたい」と発言している。北朝鮮によるミサイル発射時にも「米国は100%、日本と共にある。100%自分とアメリカを信頼してもらいたい」と安倍首相に伝えている。なおこの際に贈られたゴルフクラブはトランプが大統領就任前に受け取ったもののため受領の報告義務はないとして大統領退任後もトランプが一度も使わないまま保管していたが、2023年4月11日に国立公文書記録管理局(NARA)に引き渡すと表明した。
2017年11月6日、日本を訪問していたトランプは北朝鮮による日本人拉致問題の被害者家族17人と面会し、「悲しい話をたくさん聞いた。拉致された被害者が愛する人々の元に戻れるよう安倍晋三首相と力を合わせていきたい」と述べ、解決に向けた協力を約束した。
2018年2月12日、インフラ投資関連の会合で「中国、日本、韓国など米国に多くの損害をもたらした国々を過去25年もの間好き勝手にさせてきたために容易ではないが、我々は政策を変える。一部は同盟国だが、貿易では同盟国ではない」として税制改革で導入を見送った国境調整税の代わりにアメリカに関税を課す貿易相手国に「相互税」で対応することを表明した。
2018年2月13日、ホワイトハウスで開催した貿易に関する与野党議員との会合で「日本や韓国、サウジアラビアはアメリカに防衛してもらっているのに、経費の一部だけしか支払わないのは不公正だ」「貿易とは別の議論だが、現実の問題だ」と再び負担額について批判を行った。
2018年3月10日、トランプは「対日貿易赤字は不公平で持続的ではない」と述べて削減に取り組む意向を示した。
同年3月22日、安倍首相を名指しして「私の友人」と前置きしつつ「『アメリカをうまく出し抜いてきた』とほくそ笑んでいる。そういった時代は終わりだ」と述べ、米通商拡大法231条に基づいて日本を含む各国への鉄鋼輸入制限を発動した。
2018年4月17日に安倍首相と日米首脳会談を行った際は北朝鮮に対して拉致問題を提起することや非核化まで最大限の圧力を維持することで一致した一方で、TPP復帰や日本の鉄鋼に対する輸入制限解除を求める安倍首相に対して「二国間協定が望ましい」「関税の適用除外は貿易赤字の削減が条件だ」と述べて意見に隔たりを見せた。茂木敏充(経済再生担当大臣)とアメリカのロバート・ライトハイザー通商代表による日米2国間貿易協議の開始でも合意しており、これは麻生太郎副総理とペンス副大統領が共催する既存の日米経済対話の遅れにトランプが苛立ちを募らせていたことが理由とされる。
2018年6月の日米首脳会談では安倍首相に対して「真珠湾攻撃を忘れないぞ」と述べて2国間通商交渉を迫ったとワシントン・ポストは報じた。この報道を受けて、時事通信は「(日米関係はかつてないほど強固という)首相の訴えの信ぴょう性が揺らぐ」、共同通信社は「対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いがありそうだ」といった報道が相次いだが、発言があったのは首脳会談の場ではなく、日時や場所、文脈も全く異なることを複数の政府高官が明らかにした。実際に真珠湾への言及があったのは4月18日に、アメリカ南部のフロリダ州で両首脳がゴルフを開始する場面で、トランプは「日本は、米国をたたきのめすこともある強い国じゃないか」と真珠湾攻撃を持ち出してジョークを述べたというもので、日本を脅かしたり不快感を示したりしたわけではなく、むしろ日本を称賛する文脈だった。また、別の報道では、この時トランプは「日本はかつて真珠湾を攻撃したほどの軍事強国であったじゃないか」といった「防衛費をもっと増やすべきだ」という意味合いで発言したものだともされる。
2019年6月24日、日本などのタンカーがホルムズ海峡で攻撃を受けた事件を受けて日本と中国を名指しして「アメリカは今や最大のエネルギー生産国になっており、各国はタンカーを自国で防衛すべきだ」と述べた。29日にG20大阪サミットで訪日した際は日米安保破棄の可能性を示唆したとする報道を否定しつつ「公平ではない。我々が彼らを守るなら彼らも我々を守る必要がある」と見直しする必要性を述べた。
2019年9月25日、安倍首相と共に日米貿易協定を確認する合意文書に署名した。主眼とする農作物の関税について約72億ドルもの撤廃・削減を取り付けながら、日本側の主とする自動車・自動車部品については「さらなる交渉」記載にとどめたこの協定は、米国側の勝利とされる。
中国
2015年6月の出馬会見では、特に中華人民共和国への対抗姿勢を鮮明にしており、「中国との貿易交渉で彼らに勝ったことがありますか? 彼らは我々を殺そうとしているが、私は彼らにいつも勝つ。」「私は中国が好きです。私はちょうど中国の誰かに1500万ドルでアパートを売りました。私が彼らを嫌うと思いますか?」「私は中国のことは大好きです。中国から世界で最大の銀行(中国工商銀行)がやってきたが、米国本部がどこにあるか知っていますか? このビルの中ですよ。トランプ・タワーです。だから中国は大好きですよ。」「みんなは私に中国が嫌いなんですかと聞きます。違います、私は彼らが大好きです。だが彼らの指導者たちは我々の指導者たちよりも遥かに賢く、これでは我々は持ちこたえれません。」と発言している。
大統領選挙に出馬する前から中華人民共和国とビジネス上の関係があることは強調しており、大統領選勝利後は電話会談で習近平総書記に対して「中国は偉大で重要な国であり、アメリカとの互恵関係を実現できる」と語ったと報じられ、トランプ側も声明で祝電に感謝して「今後両国は最も強固な関係を築きたい」と述べたと発表した。大統領就任後の習総書記との書簡や電話会談、首脳会談では米中協力の意向を示して中国共産党政府から称賛され、大統領就任前に中国を刺激した台湾の蔡英文総統との電話協議も習総書記との良好な個人的な関係から再会談には応じないとする意向を示し、台湾への武器売却も遅らせていることについて批判する声も出ており、トランプ政権初の台湾への武器売却には大型兵器は含まれず、習総書記を「中華民国総統」とホワイトハウスが間違えて紹介したことからトランプ政権の中台問題への理解を不安視する向きもあったが、2018年には台湾旅行法に署名し、米中関係が緊張状態になった2019年以降は台湾への武器売却を加速させた。
また、オバマ政権で続けられてきた「航行の自由作戦」の南シナ海での実施がアメリカ軍から要請された際にも、トランプ政権はこれを3度も拒否しており、トランプ大統領当選後から同作戦が途絶していることにアメリカ議会から懸念の声が上がった。同年5月24日になってトランプ政権は初めての「航行の自由作戦」を実施したと報じられた際にもトランプ政権はオバマ政権と違って公表しなかったが、米中対立が激化した2019年には南シナ海での「航行の自由作戦」を過去40年間で最も多く実施した。環太平洋合同演習(リムパック)への中国の招待も取り消し、オバマ前政権と比較して対中牽制の色合いを強くした。人道支援などにおいては米中両国は合同演習の強化で一致し、2017年と2018年に実施された。
中国共産党政府の対応で、国際的な問題となっていた民主化運動家の劉暁波の死去直後には、トランプ大統領はこれを無視して習総書記を絶賛する発言を行った。また、中国共産党第十九回全国代表大会が中華人民共和国で行われていた際もFOXでのインタビューで「党大会で習総書記は歴代の指導者になかったものを与えられる。正直に言ってそれまでは静かに見守りたい。彼がそれを手にすることを私も望む。彼は良い男だ」と述べ、25日に閉幕した後はトランプは電話会談で習総書記を祝福し、ツイッターでも「並外れた栄達をお祝いした」と投稿し、その直後に再びFOXのインタビューでトランプは習総書記を「彼は非常に良い男だ。強大な力を手にした彼を『中国の王』と呼ぶ人たちもいるだろう」と称え、習政権の権力基盤強化を歓迎した。2017年11月6日のアジア歴訪中の日米首脳共同記者会見でも「習主席は素晴らしい関係を築いている友人」と述べ、ツイッターでは「偉大な政治的勝利をおさめた習主席と会うのを楽しみにしている」と呟いた。訪中した際は孫娘のアラベラが漢詩を暗唱している動画を習主席と彭夫人に披露し、晩餐会ではスクリーンに大写しされた。人権問題は「個人の権利と法治主義の改革を提唱し続ける」とだけ触れ、中国の国営紙環球時報はこれを歓迎し、中国の人権活動家胡佳は「完全に中国のやり方に乗せられており、非常に残念だ」と述べた。11日にはAPECへの出席のために訪れたベトナムで「習主席は非常に強く賢明な人だ、私は彼が大好きだ。毛沢東以来最も強力な中国の指導者だ、いくつかの人は毛沢東以上と評している」と述べた。また、万引きで中国で逮捕されたカリフォルニア大学ロサンゼルス校のバスケットボール選手も帰国し、選手達の釈放を要請していたトランプは習主席に感謝を述べるも、選手の父親がトランプに感謝しなかったことから「とても恩知らずだ。選手らを監獄に残しておくべきだった」と唾棄した。中国で波紋を呼んだ全国人民代表大会での国家主席の任期撤廃案についても「中国は偉大で、習主席は偉大な紳士だ。素晴らしい。我々もいつか終身大統領を試してみようか」と冗談交じりに称賛した。
為替などの経済問題でも中国に国際ルール順守を求めるとしつつ選挙中に訴えていた中国への就任初日の為替操作国即時指定の主張は撤回し、貿易戦争も望まないと述べ、「関係改善すべき最も重要な国の1つ」として中国とは米中双方の利益となる関係を築くと表明していた。2017年5月には米中の貿易摩擦を是正する「100日計画」の具体化で合意してトランプ政権は習主席が国策に掲げるに代表団を派遣することを発表し、出席した米国代表団は習主席の経済圏構想である一帯一路への協力を表明し、トランプ自らも一帯一路への協力で米国はオープンであると述べた。8日から訪中した際には「対中貿易赤字で中国に責任はない。貿易不均衡の拡大を防げなかった過去の政権のせいだ」として米中両国首脳の立会のもと超大型商談が調印されたことをトランプは表明し、「両国の問題だけでなく、世界的な問題の解決でも協力したい」として「米中関係は最も重要だ」と述べた。しかし、2018年3月22日にトランプは「習主席を尊敬し、中国は友人と思う」と前置きしつつ「対中貿易赤字はどの国も経験していない史上最大の貿易赤字だ」と表明して7か月間の中国の知的財産権問題をめぐる調査も基にスーパー301条による中国製品への関税賦課をアメリカ合衆国通商代表部(USTR)に指示する覚書に署名し、4月3日にUSTRは輸入額の大きい消費財を除外しつつ中国製品1300品目(500億ドル相当)を特定した原案を発表した。翌4日、中国は米国製品160品目に同じ25%の関税案で報復し、その後の米中協議で「貿易戦争を保留する」と表明するも、同年6月16日、トランプは「習主席との友情や対中関係は非常に重要でも、米国との長年の公平ではない貿易は放置できない」として当初の1300品目から1102品目に減らしつつ約500億ドル規模の中国製品820品目に関税を7月6日から課すと表明し、中国も4月のリストから航空機を外しつつ約500億ドル規模の米国製品659品目に報復すると述べ、以後、報復合戦を繰り返し、米中貿易戦争と呼ばれる様相を呈した。しかし、貿易戦争と同時に貿易交渉も継続し、2020年1月15日には訪米した中国の劉鶴国務院副総理とともに米中経済貿易協定に署名した。
トランプの対中華人民共和国姿勢を批判する者は、トランプが同国に銀行口座を保有し、ホワイトハウスに引っ越してからも所有するトランプタワーで最大のオフィステナントである中国工商銀行から収入を得て、中国の国有企業と共同事業を行い、中国の国営銀行に多額の債務を抱え、ビルの建設で中国の鉄鋼を使用し、新ビル建設工事にあたって中国人投資家へ出資を募って彼らに向けて迅速にビザが発行される政府プログラムの利用を勧めていたことを取り上げ「安全保障を損ないかねない」と批判したり、トランプブランドの商品の産地がメイド・イン・チャイナやメイド・イン・メキシコであることを問題視し「全製品をアメリカで生産せよ」と非難するなどしている。 これに対しトランプは、中国やメキシコの通貨が安くなっているためにアメリカブランドがアメリカで生産できなくなってしまっているなどの説明を行っている。
トランプ政権は中国の新疆ウイグル自治区での政策に対しては、強い懸念を表明し、また非難している。アメリカのペンス副大統領は2018年7月26日、首都ワシントンで講演し「中国政府は、数十万人、もしくは数百万人の規模でイスラム教徒のウイグル族を再教育施設という場所に収容している。宗教の信仰と文化的な帰属意識を失わせようとしている」と述べて非難した。シン米国務次官補は2018年9月13日の米議会公聴会で、中国政府当局者や企業への制裁に関して「状況を見極めている」と述べて、制裁を検討していることを明らかにし、2018年10月4日には、ペンス副大統領がワシントンのシンクタンクで「中国に対する政権の姿勢」と題した40分間にわたる講演に臨み、中国による宗教弾圧にも言及し批判をした。加えて、ペンス副大統領は中国指導部へのメッセージとした上で、「トランプ大統領は決して屈しない」と強調した。しかし、2019年まで国家安全保障担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンは2019年G20大阪サミットの際に習近平国家主席に対して2020年アメリカ合衆国大統領選挙での自らの再選を支援するよう要請して新疆ウイグル再教育キャンプに関しても「建設を進めるべきで正しい選択だ」と後押しするなどトランプ大統領自身は人権外交より貿易交渉を優先していたと回想している。2020年6月には議会を通過したに署名した。
朝鮮半島
2017年4月6日にトランプが中国の習近平国家主席と米中首脳会談を行ったが、そこで交わした会話の内容をウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで話し、習近平が「朝鮮半島は中国の一部だった」と発言したことを明らかにし、「習近平主席が中国と朝鮮半島の歴史について話した。数千年の歴史と数多くの戦争について。朝鮮は実は中国の一部だった」「朝鮮は実際に中国の一部だった(Korea actually used to be a part of China)」「習主席から中国と韓国の歴史について聞いた。北朝鮮ではなく韓半島全体の話だった。(中国と韓国には) 数千年の歳月の間、多くの戦争があった」「(習主席の歴史講義を)10分間聞いて(北朝鮮問題が)容易ではないことを悟った」と語った。
これに対して韓国紙東亜日報は「紀元前に漢が韓半島北部に漢四郡を設置した時や13世紀の元の拡張期を挙げることはできるだろうが、いずれも朝鮮が中国に完全に従属したと見るには無理がある」と反論している。
4月8日、シンガポールに寄港していた原子力空母カール・ヴィンソンがオーストラリアに向かう予定を変更し、朝鮮半島へ向けて出港した。4月15日の金日成生誕105周年記念日および25日の朝鮮人民軍創設記念日への警戒とみられる。4月16日アメリカ太平洋軍と韓国軍の合同参謀本部の発表により日本時間の16日午前6時21分、北朝鮮が東部のハムギョン(咸鏡)南道シンポ(新浦)付近から大陸間弾道ミサイルとみられるのを1発、発射したが直後に爆発し失敗した。4月29日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領との電話会談の際に朝鮮半島沖に原子力潜水艦も2隻展開していることを漏らす。
5月18日、原子力空母ロナルド・レーガンも合同演習のために派遣して空母を異例の2隻も朝鮮半島沖に展開させた。5月30日、実物のICBMを迎撃する史上初の実験に成功したと発表し、北朝鮮やイランに対抗するミサイル防衛を打ち出した。この実験に対して北朝鮮は強く反発した。
6月1日、日本の海上自衛隊とアメリカ空母2隻が朝鮮半島近海で共同軍事演習を開始した。6月2日、国際連合安全保障理事会はトランプ政権では初の対北朝鮮制裁強化決議を全会一致で可決した。決議案は5週間に亘る米中協議で合意したものであり、ロシアの賛成も得た。トランプは度重なる北朝鮮のミサイル発射を「中国に無礼だ」と批判しており、北朝鮮はこの決議に対して「米中が裏部屋で勝手にでっち上げた」と批判した。
7月4日、北朝鮮のICBMを発射したと称する実験に対して「この男(金正恩)は他にやることないのか」「日韓は忍耐できなくなり、中国はこの無意味なことを終結させるだろう」と批判し、6日には中国の取り組みの不十分を指摘しつつ「協力を決して諦めない」と述べ、8日の米中首脳会談では中国の対北制裁措置に感謝して「米中が望むより長期化するかもしれないが、最終的には解決する」と述べた。また、同時期の日本の航空自衛隊と韓国空軍との共同訓練で、戦略爆撃機のB-1で北朝鮮のミサイル発射台に擬した目標の空爆や地下施設への攻撃訓練を行い、これに北朝鮮は強く反発した。
7月11日、THAADによるIRBMの迎撃実験に成功し、北朝鮮などのミサイル開発への対抗を発表した。
7月21日、北朝鮮でのオットー・ワームビアらアメリカ人の拘束を受け、アメリカ人の北朝鮮ツアーを行ってきた中国の旅行会社に渡航禁止措置を通知し、アメリカ国民の北朝鮮への観光の禁止と国務省による渡航の審査を発表した。8月2日、トランプ政権は北朝鮮渡航者に8月中の国外退去を指示し、9月から渡航を禁ずると発表した。
8月5日、トランプ政権の提案した初の大規模な対北朝鮮制裁強化決議が中露の賛成も得て国連安保理で全会一致で可決され、石炭や鉄鉱石などの全面禁輸が盛り込まれた。ニッキー・ヘイリー国連大使は「中国の重要な貢献に感謝したい」と演説し、「中国は口先だけで何もしない」と苦言を呈していたトランプ大統領も「中国とロシアも我々と一緒に投票した。北朝鮮に対して過去最大の制裁だ」と述べ、中露に謝意も表明した。トランプ大統領は北朝鮮が挑発を続ければ「世界が見たこともない火力と怒りに遭わせる」と警告し、北朝鮮は中露を「米国に追従した」と批判してグアム攻撃計画を8月中旬までに策定すると発表した。これを受け、トランプ大統領は再び北朝鮮に「生温い発言だったかもしれない。グアムに何かすれば誰も見たことないことが北朝鮮に起きる」「軍事的な解決をとる準備は整った」と警告し、アメリカ軍は戦略爆撃機のB-1を再び派遣して日本の航空自衛隊や韓国空軍と共同訓練を実施し、米軍幹部は先制攻撃の準備と語ったと報じられた。
2017年8月29日の北朝鮮によるミサイル発射に対しては「隣国、国連の全加盟国への侮辱だ。全ての選択肢がテーブルにある」と非難し、その後「アメリカは25年間北朝鮮との対話で金をゆすられてきた。対話は解決策ではない」と述べた。また、アメリカ軍は日本の空自や韓国空軍と共同訓練を再び実施した。
2017年9月3日の北朝鮮の水爆実験の際は北朝鮮はならず者国家として中国やアメリカにとって危険な存在となったと発言し、中国の努力は成果を出しておらず、韓国の文在寅政権の対話路線は「役に立たない」と否定した。4日の米韓電話会談では韓国の保有する弾道ミサイルの重量制限解除と北朝鮮への圧力最大化などで合意し、6日の米中電話会談については「習近平氏は100%私に賛成してくれたと信じる」と述べ、同日に行われた日米電話会談では「自分は100%晋三とともにある」「対話に拘る韓国は物乞いのようだ」と述べた。12日には国連安保理で原油輸出の数量制限や天然ガスと繊維の輸出入と北朝鮮労働者の新規就労許可・更新などを禁止する制裁強化決議が全会一致で可決され、ヘイリー米国連大使は「今回の決議はトランプ大統領と習主席の間で築かれた強い関係なしにはありえなかった」と中国に謝意を表明した。15日のミサイル実験に対しては「再び隣国や全世界を完全に侮辱した。軍事的選択肢は効果的かつ圧倒的だ」と述べて韓国空軍と再び爆撃訓練を実施して北朝鮮との軍事境界線近くまで飛行し、韓国の文大統領と電話会談した際に「ロケットマン(金正恩)はどうしているのか尋ねた。北朝鮮ではガソリンを求めて行列ができている、残念だったな」と制裁の効果を強調した、21日には北朝鮮と取引のある個人や企業をアメリカ経済から締め出す大統領令に署名し、「海外の銀行は米国を選ぶか、北朝鮮のならず者政権を選ぶかを迫られる」と表明して中国人民銀行が自国の銀行に北朝鮮との取引を即時停止を指示していることを称賛した。
19日の初の国連総会一般演説では金を改めてロケットマンと呼び、北朝鮮の体制を「向こう見ずで下劣だ」と非難。米国人大学生オットー・ワームビアの拘束や金正男の暗殺の他、北朝鮮による日本人拉致問題にも触れ、「(失踪当時)13歳の日本人少女を拉致した」と糾弾した。「米国と同盟国を守ることを迫られれば、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択はない」と強く警告した。ただし、「ロケットマン」「完全に破壊」の文言は原稿にはなく、トランプ大統領がその場で付け加えた物だった。これに北朝鮮は「トランプが世界の面前で私と国家の存在自体を否定して侮辱し、我が共和国を滅ぼすという歴代で最も凶暴な宣戦布告をしてきた」と猛反発する最高指導者名義では北朝鮮史上初となる金の直々の声明を発表し、北朝鮮の李容浩外相は国連総会の演説で「最高尊厳(金正恩)をロケットと結びつけて冒涜した」と抗議した。これに対してトランプはツイッターで「彼(李外相)がチビのロケットマンの考えと同じならば奴らは遠からず消える」と応酬した。22日には、ツイッターに金を「国民を飢えさせ、殺すことを気にも留めない狂った男」と厳しく批判する投稿をし、同日のアラバマでの集会でも金を「チビのロケットマン」「狂った男」と再び揶揄し、23日に軍事境界線を越えて北朝鮮沖で爆撃機と戦闘機を威嚇飛行させた。
10月1日、トランプは同年9月30日に訪問先の中国で「対話の意思があるか打診している。意思疎通のチャンネルはある」とトランプ政権では初めて米朝の水面下での接触を認めたティラーソン国務長官に対し、「対話は時間の無駄である。長官はエネルギーを浪費してはならない」と助言したと述べた。国務省は「北朝鮮に対話の意思は見られない」と発表し、10月2日にはホワイトハウスは「北朝鮮と交渉すべき時ではない」と発表した。また、同時期に北朝鮮はロシア仲介の米朝協議を拒否した。また、2日には原子力空母ロナルド・レーガンが3年ぶりに香港寄港を認められ、第七艦隊司令官と中国軍幹部の会談も調整されたため、対北朝鮮で米中協調を演出したとされる。10日には日韓と夜間に合同訓練を行って朝鮮半島に爆撃機や原潜と空母など軍事力を集結させる動きを見せ、11日に北朝鮮への対応について「私は恐らく他の人より強く厳しい」「中国はとても協力的だと思う」と述べた。
11月8日、アジア歴訪で訪問中の韓国の国会で空母3隻が朝鮮半島近海に展開していることを挙げて「我々をなめるな、試すな。愚かにも米国の決意を試して滅びた政権は歴史上いくつもある」「北朝鮮は人が住むに値しない地獄だ、あなた(金正恩)の祖父が描いた地上の楽園ではない」と演説して北朝鮮を孤立化させるよう中国とロシアに名指しで求めた。11日には、10年ぶりとなる空母3隻を投入した演習を日本海で開始した。
11月15日、アジア歴訪から帰国したトランプは、各国と北朝鮮への圧力最大化で一致できたと成果を強調し、中国共産党の習総書記と北朝鮮が脅威であることと問題解決の時間が限られていることを確認して協力を引き出し、米軍や韓国軍の幹部と軍事的選択肢も協議したとする声明を発表した。北朝鮮の労働新聞と朝鮮中央通信は訪朝する中国の特使受け入れを報じつつトランプと会談した安倍首相を「米国の忠犬」と嘲り、韓国国会で演説したトランプを「狂った犬」「不倶戴天の敵」「死刑に値する」と非難した。トランプは中国の特使派遣を「大きな動きだ、何が起こるか見てみよう!」と述べた。
11月20日、トランプはアメリカ人大学生オットー・ワームビアの事件を例に挙げて「北朝鮮は世界を核で脅しているだけでなく、引き続き国際テロを支援している」「もっと何年も前に再指定されるべきだった」として北朝鮮を9年ぶりにテロ支援国家に再指定することと追加制裁の意向を表明した。本来アジア歴訪からの帰国直後に発表されるはずが遅れたのは特使を派遣した中国の面子を立てたためとされる。ティラーソン国務長官は再指定の根拠に化学兵器による金正男暗殺事件を挙げた。
11月29日、トランプはICBMの火星15の発射を行った北朝鮮の金正恩に対して「チビのロケットマンは不気味な犬ころ」と批判して追加制裁の意向を表明した。同年11月28日にティラーソン国務長官は声明で海上封鎖や国連軍派遣国の会合を呼びかけるも、どちらも日本政府からは難色を示され、北朝鮮は海上封鎖の実施は「戦争行為と看做す」と発表した。同年12月12日、ティラーソン国務長官は「北朝鮮との最初の対話を無条件にすることも可能だ」と述べつつ朝鮮半島有事を想定した核の確保と難民対策や38度線を越えた米軍の撤退など具体的対応を中国と協議していることも初めて表明した。ただし、北朝鮮からの核・ミサイル開発の破棄や挑発の中止を前提とする方針の転換とも受け取れるこの発言については国務省とホワイトハウスや国家安全保障問題担当大統領補佐官のハーバート・マクマスターやティラーソン国務長官自身が修正した。
12月22日、トランプ政権と中国が協議して石油精製品輸出の9割削減や24か月以内の北朝鮮労働者の本国送還を盛り込んだ対北朝鮮制裁強化決議が議長国日本やロシアの賛成も得て国連安保理で全会一致で可決され、制裁違反の可能性がある船舶に対する臨検及び拿捕の義務化や新たな核実験やミサイル発射があればさらに北朝鮮への石油供給を制限するとの表現が初めて記載された。
2018年1月2日、「米国全土を射程におさめた核のボタンが私の机の上にある」「平昌五輪に向けた南北会談も可能だ」とする新年の辞を述べた金正恩に対して「制裁と圧力が北朝鮮に効いてきた。兵士は危険を冒して韓国に逃げている。ロケットマンは韓国と交渉したいようだが、朗報かどうか様子を見よう」「食料が枯渇し、飢えた北朝鮮の体制よりも私は巨大で強力な核を持ち、私の核のボタンはちゃんと動くことを誰か彼に教えてやれ」とトランプは述べた。1月16日、カナダのバンクーバーでティラーソン国務長官の呼びかけにより国連軍派遣国を中心に日本や韓国なども参加した外相会合が開かれ、平昌五輪に向けた南北対話が非核化対話に進展することを期待しつつ「完全で検証可能かつ不可逆な非核化」まで北朝鮮に圧力を継続する方針を盛り込んだ議長声明が発表され、ロシアと中国を名指しで「重要な役割と特別な責任を持つ」として制裁履行を求めて北朝鮮に対する海上阻止行動の強化や国連安保理の枠を超えた独自制裁の検討でも一致した。この会合に対して中露だけでなく、北朝鮮も「新たな戦争の火種」と反発した。また、この会合に先立つ夕食会でマティス国防長官は情勢次第で外相会合から国防相会合に発展するとして「米国には北朝鮮との戦争計画がある」と言明して国連軍の参加国・関係国と軍事面の連携で一致した。
1月31日、トランプは初の一般教書演説で中国とロシアは「我々に挑戦する競争相手」と一言だけ触れる一方、議会に脱北者やオットー・ワームビアの両親を招いて北朝鮮を異例の5分超にわたって非難して「譲歩を繰り返してきた歴代政権の過ちは繰り返さず、最大限の圧力をかけ続ける」と述べた。また、2月2日には8名の脱北者と大統領執務室で会見した。同時期、トランプ政権の「鼻血作戦」と呼ばれる北朝鮮への武力行使の検討に反対した次期駐韓国大使のビクター・チャに異例の内定取り消しを行い、北朝鮮はこの作戦計画に強く反発した。
2月10日の平昌オリンピック開会式にペンス米副大統領が出席するも5分で退席し、歓迎行事にも参加せず、同時期に訪韓していた北朝鮮の金永南を無視した。ペンスと北朝鮮の金与正が会談する予定も韓国の仲介で秘密裏に組まれていたが、韓国訪問中に招待したオットー・ワームビアの父親や脱北者と面会して追加制裁を表明したペンスに不快感を示して直前でキャンセルしたため金与正ら高官との接触機会は生じなかった。帰国後の同月22日、副大統領はメリーランド州で行った演説の中で、金与正を抑圧的な体制の中心人物として非難している。北朝鮮はこれに猛反発してペンスを「人間のクズ」と罵倒して「我々は米国との対話を哀願しない」と述べた声明を発表した。同月23日、トランプは事実上北朝鮮の全船舶対象など「一国に対するものでは史上最も重い制裁を科す」ことを発表し、制裁の効果がなければ「第2段階となり、手荒な対応になる」と述べた。
3月6日、北朝鮮が非核化に向け米国と対話に意欲を示したことについて「北朝鮮は誠実だと思う。制裁や中国から得た多大な協力を含め我々が北朝鮮に関して行ってきたことが理由だろう」と述べた。9日には訪朝した韓国の特使鄭義溶との面会後に「金正恩は単なる凍結でなく、非核化を韓国の代表に言った。北朝鮮はミサイル実験をこの期間自制する。大きな前進だ。合意するまで制裁は続ける。会談を計画中だ!」と表明し、日本の安倍首相や中国の習主席と相次いで電話協議して完全かつ検証可能で不可逆的な非核化まで圧力と制裁を維持することを確認し、サンダース報道官も米朝首脳会談は「非核化の具体的な行動が前提」と述べた。10日、ペンシルバニア州での集会でトランプは「何が起こるかは誰も分からない。私は即立ち去るかもしれないし、席に座って世界にとって最高のディールに成功するかもしれない」と演説した。
3月25日、最高指導者就任後の初外遊で中国を訪れた金正恩と会談した習主席からメッセージを受け取り、トランプは「金正恩が北朝鮮の国民と人類のために正しい選択を行うのは今がいい機会だ。我々の会談が楽しみだ。中朝首脳会談を大成功させた習主席から金正恩が私と会うことを楽しみにしていると伝えられた。同時に残念ながらそれまで最大限の制裁と圧力は何があっても保ち続ける!」と述べ、ホワイトハウスも「最大限の圧力が功を奏した」と評価した。
4月18日、トランプ氏の別荘「マールアラーゴ」で開かれた夕食会の際に、拉致問題の話題が挙がる。トランプは神妙な面持ちになり、「拉致問題へのシンゾーの情熱はすごいな。貿易問題とは迫力が違う。長年執念を燃やし、決してあきらめない態度はビューティフルだ。シンゾーの情熱が自分にも乗り移ったよ。私も拉致被害者のご家族にもお会いしたんだ。最大限の努力をするよ!」と最後に述べた。続く日本の安倍首相との日米共同記者会見では北朝鮮の非核化まで最大限の圧力を維持するとして「米朝首脳会談で成果を得る見込みがない場合は出席せず、実現しても途中退席する」と述べた一方、ツイッターでCIA長官のマイク・ポンペオが極秘訪朝して金正恩と面会したとする報道を事実と認めて「非核化は世界や北朝鮮にとっても素晴らしいものとなる」と呟いた。また、韓国が朝鮮戦争休戦協定の平和協定への転換を目標に朝鮮戦争の終結宣言を検討していることについて歓迎するとし、27日の2018年南北首脳会談で休戦協定を平和協定にするために南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進することで韓国と北朝鮮で合意された際は「朝鮮戦争が終わる。米国は誇るべきだ。私の親友である中国の習主席の多大な助力を忘れない。彼がいなければ、解決は遠のいた」と述べるも、隠然と影響力を行使して北朝鮮を駆け引きに利用していることに対しては「習主席は世界一流のポーカーのプレイヤー」と評し、米朝首脳会談の中止を撤回するとした際も「私は習主席と友好的な関係だ。よい人だ。ただ、彼は愛する中国にとって最善のことをやっている」と述べた。
5月24日、トランプは6月12日に予定していた2018年米朝首脳会談を中止するとの書簡を金正恩党委員長に送り、発表した。大統領は北朝鮮当局者が同国を牽制する発言をしたペンス副大統領を「愚かで無知」と述べたコメントを引用し、怒りと敵意に満ちた中での会談は望ましくないとして中止するとの意向を示した。
6月1日、訪米した金英哲との会談後、トランプは中止するとした米朝首脳会談を予定通りに行うと述べ、非核化後の経済支援を行うのは「隣国の韓国の役割であり、日本もだろう。正直、中国が助けると思う」として米国による資金拠出は否定した。
6月12日、シンガポールのセントーサ島で金正恩と史上初の米朝首脳会談を行い、米朝国交正常化や朝鮮半島の完全な非核化などを目指すと掲げた米朝共同声明に署名し、トランプは記者会見で会談実現に努めた韓国の文在寅大統領、友人でもあるとして日本の安倍首相や中国の習主席に謝意を表明して合意は世界や中国にとって有益であり、非核化の費用は日韓が負担すべきとして対北制裁の当面継続と米韓合同軍事演習の中止や将来的な在韓米軍の撤退も述べた。
内政
財政・税制・貿易・医療
財政面では、社会保障のための(積極財政政策)を唱える。
税制面では、法人税と個人の最高税率を引き下げて経済活動を促すと共に、年収5万ドル(約570万円)以下の夫婦世帯および年収2万5000ドル(約280万円)以下の単身者に対しては所得税を免除して国民の間の格差も是正するとしている。
経済格差については過去に拡大を止めるために民主党のバーニー・サンダース上院議員と同じく富裕層への課税を提唱したことがあり、政策スタンスはリベラルや民主党左派に近いとされた。また、ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法の廃止を掲げ、ウォール街への課税や租税回避対策とインバージョン規制を行うなどとしている。
グローバリズム拡散による単一市場に対しては否定的であり、保護貿易主義的とされる。TPPにも反対である。大統領就任からほどなく環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱や、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)交渉の凍結がなされた。これにより、それまではアメリカとの貿易交渉を優先していた日本と欧州連合(EU)が、反保護主義を掲げて接近。長年停滞していた日本・EU経済連携協定交渉が急加速した。ただし、2018年1月25日に訪問先のスイスで受けた米テレビCNBCのインタビューで、就任時「永久に離脱する」としていたTPPへの参加を「より有利な条件であればやる」と復帰を検討する用意があるとも述べている。
これらの政策は中流の保護と低所得者の保護を含んでおり、共和党主流派の小さな政府・民営化・資産再配分の否定(自由主義・リバタリアニズム)と相容れないため、共和党や米財界から社会主義や隠れリベラルという批判を受けており、エスタブリッシュメント層からはポピュリズムや反市場・反企業と糾弾されている。実際にトランプは2016年の大統領選の時に明確にTPP脱退、製造業雇用の国内回帰を主張していたから、建築労組、石炭労組、自動車労組などの労働組合や一般労働者からも多くの支持を受けて勝利したとの観測がある。
医療保険改革では、PPACA(通称:オバマケア)に対して廃止を明言していたが、2016年大統領選挙後のオバマとの会談では全廃にせず一部を維持することを示唆した。トランプは自らのプランをサンダースが訴える単一支払者制度ではないとたびたび表明しており 、 オバマケアに反対している。トランプ陣営のスポークスマンは、「ユニバーサルかつ、自由市場に基づいて選択の幅を提供する社会主義的ではない制度」を用意するとコメントしている。
この他に医療関連の話題として、かねてよりアメリカ国内では医療用麻薬であるオピオイドの一種オキシコドンの乱用が問題となっておりそれにより死者数が年間8万人にも及びコカインやヘロインの乱用者数を上回る事態となるに至って、トランプは2017年に公衆衛生上の非常事態を宣言し、これを国家の恥と形容した()。このオピオイド危機はという製薬会社が、本来であれば緩和ケアなどに限定して使われるべきオピオイドを腰痛や神経痛の患者にも処方できるようにアメリカ食品医薬品局の職員を買収するなどして乱売したことがそもそもの原因である。ルドルフ・ジュリアーニはパーデュー製薬の顧問弁護士をしていたことがあり、検察当局との司法取引を用いてオピオイド危機が長引く一因となったと言われる。
また、トランプは経済政策に関わる新設機関として(初代局長にジャレッド・クシュナー)、国家通商会議(初代委員長はピーター・ナヴァロ)、大統領戦略政策フォーラム(初代議長はスティーブン・シュワルツマン)などを設立した。
2017年2月4日、大手百貨店ノードストロームは、販売不振を理由にトランプの娘イヴァンカ・トランプのブランド取扱い中止を発表したところ、「娘が不公平な扱いを受けた」とTwitterで非難を開始した。大統領の親族への優遇のための政治介入ではないかとの批判を受けた
死刑制度
トランプは、死刑を支持する死刑制度存続派である。
1989年4月19日にセントラルパークで起こった強姦事件で、無関係な黒人とヒスパニックの少年たちが冤罪を着せられていた際、トランプは「少年たちを死刑にすべきだ」と訴えてマスメディアに広告を掲載していた(後述)。その件では抗議デモも受けた。詳細は(英語: Central Park jogger case)を参照。
また、大統領就任中は、暴力犯罪に対する厳罰化を求めていた。そのため、司法省がそれに応える形で、17年ぶりに死刑執行を再開し、2020年7月14日から2021年1月16日の間に13人の死刑執行が行われた。死刑が再開した1977年以降で、連邦政府により死刑執行された死刑囚は2022年末時点で16人であるが、その約8割がトランプ政権中に行われることとなった。更には、慣習として(次期政権への移行中に当たる時期)は、死刑執行は行わないことになっているが、無視する形で執行している。なお、死刑執行の許可は、大統領でなく、司法長官により行われる。
人種政策
2011年から2015年にかけて、当時の大統領のバラク・オバマ( 史上初の黒人の大統領。米国内のハワイ生まれ)に対して、トランプは「オバマはアフリカ生まれであり、大統領になる資格がないのではないか」と攻撃を繰り返し、非難を浴びた。詳細は後述。
BLM運動を批判
2014年にニューヨークの路上で、一人の黒人男性が、彼を脱税容疑で逮捕しようとした警官たちにねじ伏せられて窒息死する事件が起きた(エリック・ガーナー窒息死事件)。
この事件をきっかけに、黒人への人種差別などに対する抗議運動『Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)』(以下、BLM)が起こった。BLMは「警官によって28時間ごとに1人の黒人が殺されている」などと訴えた。
2015年11月、トランプの集会での演説中に一人のBLM活動家が抗議を行ったところ、トランプ支持者たちから殴る蹴るの暴行を受けた。トランプはBLMに対して批判し「面倒を起こそうとしているんだと思う」と述べた。
黒人の殺人件数を捏造
またトランプはBLMに反発して「白人や警官によって殺される黒人よりも、黒人によって殺される市民の方がはるかに多い」と主張する画像を投稿したが、この画像には信頼性がなく、非難を浴びた。
トランプが引用した画像は、出典を「サンフランシスコ 犯罪統計局 2015年度データ」としているが、サンフランシスコ市は年次報告書の発行を2014年で終了しており、2015年の統計は公表されていなかった。また14年以前も、加害者・被害者の人種ごとの内訳は掲載していなかった。
さらに各数字も、実在するFBIの14年度の全米統計データと見比べてあまりに差が大きく、信頼できないものと考えられた。実際のFBIの2014年度の全米統計では、①「黒人(B)が加害者になって、白人被害者(W)を殺害した数」は全殺人の15%である一方、②「白人(W)が加害者になって、黒人被害者(B)を殺害した件数」は7%である。
ところがトランプが引用した画像は、15年のサンフランシスコについて①を81%、②を2%としていた。サンフランシスコ市警察の広報は新聞の取材に対して「(トランプがツイートした画像は)我々が公表したデータではない。どこから来た情報か分からない。」と答えた。
極右団体への見解
2016年2月、白人至上主義団体『クー・クラックス・クラン』の元最高幹部であるデービッド・デュークがトランプの支持を表明した際、トランプはそれを拒絶しなかったことで非難を浴びた。詳細は後述。
極右による殺人事件へ「被害者にも責任がある」
2017年8月12日、バージニア州シャーロッツビルで極右団体(白人至上主義)の集会が行われた際、その集会に抗議していた女性に対して極右団体の男性が自動車で襲撃し、殺害した。
この事件に対してトランプは、14日にホワイトハウスで声明を行った際には、犯人を含む白人至上主義団体を「唾棄すべき存在」であると非難した。
しかし、15日にニューヨークのトランプタワーで記者会見を行った際には、犯人を『オルト・ライト』と表現し、被害者を『オルト・レフト』と呼んだ上で、「じゃあ、オルト・ライトに(中略)突撃していったオルト・レフトはどうなんだ? あいつらに罪悪感のかけらもあるか?」などと述べ、被害者の側にも責任があると訴えた。
極右団体へ「待機せよ」
2020年9月29日、BLMに関連する人種差別への抗議デモと、それに反発した白人至上主義者による暴動が起きていることに対して、トランプは「もちろん進んで(糾弾する)」と述べたものの、「ほぼすべてが右派ではなく、左派の仕業だ」と断じた。
さらに、極右の過激派団体『プラウド・ボーイズ』に対して、トランプは批判するのではなく「下がって待機せよ(stand back and stand by)」と述べた。さらに「アンティファ(反差別運動)と左派に対して、誰かが何かをしなければならない」と示唆した。これは大きな非難を浴び、後日トランプは「プラウド・ボーイズが誰か知らない」「誰であっても引き下がる必要がある」などと釈明した。
人工妊娠中絶問題
自らを人工妊娠中絶反対派と位置づけており、原則として妊娠後期(米国では一般的に満20週以降)では中絶(abortion)を認めるべきではないとする。認めるべき場合としては、強姦被害による場合と、近親姦による場合、母体の健康に問題がある場合を挙げる。
2016年3月、トークショーの司会者から、中絶手術を禁止した場合に違法な手術は罰するべきかと問われて、「there has to be some form of punishment (for the woman)((女性に対して)何らかの罰を設けるべきだろう)」と答えた。
- 司会者:中絶に対して原則的には罰を与えるべきだと思いますか?イエスかノーかで答えてください。
- トランプ:何らかの罰を設けるべきだろう。
- 司会者:女性に対してですか?
- トランプ:はい。
この発言に関して世界中のメディアが
- ドナルド・トランプ氏が「妊娠中絶を受けた女性は刑罰の対象にすべきだ」と発言
- 中絶手術を受けた女性は処罰されるべきだと発言した
と報じ、中絶反対派からも激しい非難を受けた。
日本のマスコミも
- トランプ氏は、人工妊娠中絶を行った女性は罰せられるべきだと発言
- 妊娠中絶手術を受けた女性は「処罰されるべきだ」と発言
と批判した。
トランプはこの件については同日中に再説明し「もし議会が中絶を違法化し、あるいはいずれかの州が連邦法の下で禁止し、連邦裁判所がこの法律(中絶を禁じる法律)を合憲とする場合には、医師あるいはどんな人物であれ、この違法行為を妊婦に行った者(堕胎施術者)は、法的責任を問われる。この時、胎内の命を奪われた妊婦は被害者である。」として「私の立場はロナルド・レーガンと同じ立場で、例外を認めるプロライフだ。」とした。
中絶を巡る問題に関しては、この件についての多数の報道があった後、有利とされていたウィスコンシン州で敗北したことで、フレームアップされたこの「発言」が、選挙戦に致命的なダメージを与えたという分析も出ている。
ただトランプは、刑罰化を積極的に望む姿勢を示したわけではなかった。激しく非難された発言は、後期中絶の違法化を巡るやりとりの中での返答だが、トランプは司会者から「違法に堕胎するものが現れれば罰するのか?」と質問されて、そのたびに「これは非常に難しい問題なんだ」「他の候補者よりも緩やかな考えだ」「広い例外を認める禁止派(プロライフ)だ」と濁している。また、この返答を受けた司会者が「ではどのような刑を課すのか」などと矢継ぎ早に畳み掛けると、その際にもトランプは「分からない」と3度繰り返し「カトリックと同様の見地から対応するつもり」「これについては今後、決定する」と続けており、強固な考えを持っていないことも示唆している。
なお、妊娠後期の胎児についての中絶の禁止自体は、共和党の候補者に共通する考えであり、米国外では日本などが採用している。しかし、日本の刑法で第212条から216条に規定されている堕胎罪の場合は、犯罪の主体が女性に限定されないため、批判されたトランプの当初の主張とは異なる。
トランプは1999年には、中絶の問題は妊婦と担当医に委ねるべきと述べていた。
- トランプ:私は完全にプロチョイスだ。中絶のことは嫌悪している。嫌いだ。胎児の殺害を意味する全てを嫌っている。私は人々がこの話題で言い争うのを聞くだけで、身のすくむ思いがする。しかし、そうであっても選ぶ自由を認めるべきなのだと思う。それに……あるいはニューヨークの人々の物の捉え方には、他の地域の人々とは少し変わっている部分がある。そして知ってのように、私はニューヨーク生まれの人間だ。この町で大きくなって、働いて、ニューヨークシティで形作られた。なんにせよ、プロチョイスを強く支持している。だが堕胎も嫌悪している。
- 司会者:ではトランプ大統領は堕胎を禁止しますか?
- トランプ:いいえ、自分はどの点でもプロチョイスだ。しかし、嫌いなんだ。
- 自分は全面的に「中絶の自由」を支持する。「中絶の自由」を嫌悪しているし、「中絶の自由」など口にするのも嫌だ。そして自分が「中絶の自由」の支持者だと言うことを恥ずかしいとも感じる。だが支持する他ないように思われるから「中絶の自由」の支持者だ。
その後「例外を認めるプロライフ」としたことについて、1999年の見解から立場を変えたことを批判しているマスコミもある。
移民政策
特定国家からの入国禁止
2017年1月、イスラム教徒が多数を占める7カ国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、シリア、イエメン、チャド)の国民が米国へ入国することを90日間にわたり禁止するとともに、難民の受け入れを全面的に停止する大統領令を発行した。さらにシリア難民については無期限で受け入れ停止とした。
同年3月、入国禁止令を修正して再び発行した。今度はイラク国民を除外し、シリア難民の無期限禁止を取り下げた。二重国籍者や永住権(グリーンカード)保持者や、米国と「真正の関係」がある人物については入国禁止から除外するとした。
同年9月、三度目の入国禁止令を発行した。さらにベネズエラと北朝鮮の国民も入国禁止に追加した。
不法入国者への規制を強化
2017年9月6日には、親に不法入国させられた若者の国外退去を、条件付きで2年間だけ猶予するDACAの撤廃を表明し、2018年1月に、これらの若者を保護する新たな法案を支持。メキシコとの国境に壁を建設することを表明した。
非正規移民への対応
2018年5月16日、カリフォルニア州の聖域都市(非正規移民に寛容な自治体)政策に反対する同州の議員・役人との会談で、トランプは一部の非正規移民について「彼らは人間ではない。動物だ。(These aren't people. These are animals.)これまでにない早さでアメリカから追い出している。」などと述べ、物議を醸した
日本のジャーナリスト木村太郎によれば、トランプの移民政策は、移民の賃金の保障を目的としているという。その為、非正規移住者を低賃金で働かせている雇用主から反対されていると木村は主張している。
麻薬対策
メキシコから不法入国者は、メキシコの犯罪組織の者が多く、麻薬入りのリュックサックを背負って、団体でアメリカの国境を越えてくる。その為、トランプは、不法入国を繰り返す非合法組織に対する取り締まりに対して、積極的な姿勢を示している。
大統領選の出馬会見でも、メキシコからやってくる不法入国者たちが麻薬と犯罪を持ち込んでいるとの見解を述べ、メキシコとの国境沿いに国境の壁を造り、その建設費をメキシコに払わせると発言した。
国境線に壁が必要だという主張についてメキシコ大統領報道官のエドゥアルド・サンチェスはブルームバーグの電話インタビューで「それはもちろん間違っている」「そういう考えはメキシコが果たしている役割をものすごく無視していて、そんなことを主張する候補者の無責任さを示すものだ」とコメントしており、その費用をメキシコに負わせるという発言に対しても「トランプの発言には米国の現実についての知識の巨大な欠如が反映されている」「アメリカにいるメキシコ人は熱意を持って働いている。彼らは仕事をよくやっている」として、負担に応じない方針を示しているが、トランプは現在まで撤回していない。
ISIL対策
2014年からイスラーム過激派組織ISIL(イスラミック・ステート)が急速に勢力を拡大していたため、トランプ大統領は、「ISILあるいは、ISIL関連国からの入国者について身辺調査を厳しくする」と表明。最悪のケースに備え、対応できる制度の成立を目指した。
複数の世論調査が、相当数のムスリムが米国人を憎んでいるという結果を示していると述べ、「どういう危険を意味するのか理解できるまでこの国は、聖戦しか信じず道理をわきまえず人命を尊重しない連中による恐ろしい攻撃の被害者になるわけにはいかない」と主張するなど警戒心を露わにした。ムスリム系夫妻が14人を銃撃し殺害する事件が起きると、イスラム教徒の入国を禁止するように提案したり、一部のモスクを閉鎖させてムスリムを監視すべきと提案している。
大統領就任からわずか1週間後の2017年1月27日、「外国テロリストのアメリカ入国からの国家の保護(Protecting the Nation From Foreign Terrorist Entry Into the United States)」と題した大統領令に署名。これによりシリア、イラク、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの計7か国のイスラム圏からの出身者の米国入国を90日間停止、さらに難民に至っては120日間受け入れ全面停止となった。
2017年9月24日、前回の入国禁止令の失効に伴い、新たに北朝鮮、ベネズエラ、チャドの3カ国の外国人もアメリカ入国を禁止する大統領令を出した。スーダンは除外され、これにより全体で8カ国となった。
出産旅行
2020年1月24日、トランプ政権は新規則を施行し、「出産旅行」を制限する。
エネルギー・環境
2017年6月1日、「中国、ロシア、インドは何も貢献しないのに米国は何十億ドルも払う不公平な協定だ」として米国はパリ協定から離脱すると表明した。
これに対して日本をはじめ各国は反発した。G20の19カ国はアメリカを抜きにパリ協定を履行することで合意した。
国内でも波紋を呼び、ワシントン州とニューヨーク州とカリフォルニア州はトランプ政権から独立してパリ協定目標に取り組む米国気候同盟を結成し、さらにマサチューセッツ州やハワイ州など他の7州も加盟した。米国気候同盟の立ち上げを主導したカリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンは結成直後に訪問した中国で中国政府が米国に代わって気候変動対策のリーダーシップを握ったとして中国と協力し、中国とクリーンエネルギー技術のパートナーシップを結んで、一帯一路構想へのカリフォルニア州の参加も表明した。また、6日の北京でのに出席するためトランプ大統領のパリ協定離脱表明直後に中国に出発したアメリカ合衆国エネルギー省長官リック・ペリーは、中国が気候変動対策でリーダーシップをとることを歓迎すると表明しつつ、アメリカはクリーンエネルギー技術分野などでリードしていると述べ、中国の張高麗国務院副総理との会談でクリーンエネルギーでの米中協力で一致するも一地方自治体に対するものでは異例の厚遇である習近平総書記との会見を行ったブラウン知事との対応の違いがアメリカのメディアで比較された。トランプ大統領の決定に抗議してロバート・A・アイガーやイーロン・マスクは大統領戦略政策フォーラムのメンバーから抜けた。
しかし、2018年1月10日にはオバマ前政権が署名した当時の協定内容の修正を条件に「正直に言って私としては問題のない協定だ。よって、復帰もあり得る」と述べた。
なお脱退の手続きに3年から4年を要するため、アメリカの正式なパリ協定離脱は2020年アメリカ合衆国大統領選挙が行われる2020年11月3日以降となる。
トランプは、気候変動をアメリカの製造業を衰退させるための中国の(陰謀)であるという冗談を述べたことがある。
宇宙軍
2018年6月18日、「私は国防総省に対し、軍隊の第6部門としての宇宙軍を設立するために必要なプロセスを直ちに始めるよう命令した」と発表。2019年12月20日に国防権限法案に署名し、正式に発足した。
ウクライナ論争
2019年、トランプはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談の中で、秘密裏に元アメリカ合衆国副大統領で2020年アメリカ合衆国大統領選挙への立候補を目指すジョー・バイデンと、その息子であるハンター・バイデンのウクライナにおける活動について捜査するように促した。後に、この要請が何者かの手により明るみになるとナンシー・ペロシ下院議長は反発。大統領が国の安全保障を脅かし大統領宣誓とアメリカの合衆国憲法に違反していると批判し、大統領の弾劾手続きに向けた調査を開始した。これに対してトランプ側は反発し、ペロシらにあてた書簡で弾劾に向けた調査には協力しないと表明。全面対決の姿勢を鮮明にした。12月18日、下院議会は弾劾訴追決議案を賛成230・反対197票で可決し、トランプは弾劾訴追された史上3人目の大統領となった。
COVID-19関連
トランプは当初COVID-19パンデミック対策で中国と緊密に協力しているとして中国を力強く率いていると習近平国家主席を称賛しており、ウイルスも「自然に消えてなくなる」と意図的に軽視していたことを自ら認めている。また、マスクの着用を避け、「99%の症例は完全に無害」「消毒液を注射すればいい」と発言したり、医療専門家を無視してヒドロキシクロロキンを推奨し、徹底的な対策を提言する専門家チームのアンソニー・ファウチとも対立した。しかし、次第に米国国内で感染拡大すると中国およびWHOへの批判を強め、「中国ウイルス」「カンフルー」(中国のカンフーとインフルエンザをあわせた造語)とも形容するようになった。
2020年4月7日、新型コロナウイルス感染拡大を巡り、WHOが「中国中心主義」で、世界に不適切な提言を行っていると批判した。また、5月6日にはアメリカで感染拡大が深刻化する事態を 「米国が経験した最悪の攻撃だ。真珠湾よりひどい」 「世界貿易センターよりひどい」と発言。 「発生した場所で抑え込まれるべきだったが、そうはならなかった」と指摘し、暗に中国を批判した。さらに、5月14日には中国の対応への失望を述べるとともに、現時点で習近平国家主席との対話は望んでいないとし、「われわれには多くの措置を講じることが可能だ。関係を完全に断ち切ることもできる」と述べ、中国との断交の可能性も示唆した。5月18日にはWHOを「中国の操り人形」だと批判し、米国からWHOへの拠出金の削減や打ち切りを検討していることを認めた。
5月29日、ホワイトハウスでの記者会見で中国が香港に国家安全法の導入を決めたことを非難するとともに、改めてWHOが「中国寄り」であることを主張。WHOとの 「関係を断絶する」と発表した。
7月7日、WHOから2021年7月6日付で脱退すると、国連に正式通知した。その後、後継のジョー・バイデンによって脱退は撤回された。
10月2日、自らと妻のメラニア夫人が新型コロナウイルスに感染していたことをツイッターで公表した。このため、東京証券取引所や各地の取引所の株価が200円ほど下がる事態になった。翌3日には、軍医療施設に入院し、微熱や咳の症状があることが報じられた。7日には大統領執務室に復帰するまで回復し、新型コロナに感染したことについて「神からの祝福」と述べた。
トランプ政権下でアメリカはコロナ感染者が世界最多となり、2021年1月にはアメリカでの新型コロナウイルスによる死者数は第二次世界大戦の死者数を超えることとなった。
2021年3月、トランプが同年1月にCOVID-19ワクチンを非公開接種していたことが報じられた。なお、2020年12月の時点で副大統領のマイク・ペンス、次期大統領のジョー・バイデンはファイザーとビオンテックが開発したトジナメランの公開接種を行っていた。
2020年大統領選挙の落選
2期目を目指して2020年11月3日の大統領選挙に出馬し、民主党候補のジョー・バイデンと争った。11月4日、選挙の鍵を握る接戦州ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの各州(ラストベルト3州)ではいまだ集計が続いていたのに、その時点でのリードを理由に一方的に勝利宣言を行った。
郵便投票の開票で旗色が悪くなってきた後の11月5日夜の記者会見では、根拠を示さず「大差で勝っていたのに我々の票数はひそかに奪い取られた」などと「不正選挙」を主張しはじめ、質問は受け付けなかった。これに対し、アメリカの主要メディアは根拠に欠けるとして中継放送を打ち切った。
11月6日にはペンシルベニア州などで逆転されたことに焦りを募らせ、リードするバイデンに向けて「大統領職を奪取したと誤った宣言をすべきではない。私だって宣言できるのだから」とツイートしてけん制した。
11月7日午前にABC、AP通信、CNN、FOXニュース、NBC、ニューヨーク・タイムズ、ロイターなどの主要メディアによりバイデン当選、トランプ落選が確実になったことが報じられた。同日夜にバイデンは勝利宣言を行ったが、トランプは敗北宣言を拒否し、裁判などで徹底抗戦すると述べた。トランプの弁護士であるルドルフ・ジュリアーニも8日にFOXニュースのインタビューで裁判などで徹底抗戦すると述べた。なお、後にジュリアーニはこの誤情報拡散行為により、ニューヨーク州およびワシントンD.C.において弁護士資格を一時停止されている。
トランプ陣営は敗れた接戦州で投票結果の確定阻止を求め訴訟を乱発した。その訴訟の数は50を超えた。だが、裁判では選挙結果を覆すような判断は下されず、各州の集計結果の確定期限でもある12月8日に連邦最高裁によりトランプ陣営の訴えは棄却された。
法廷闘争に敗れた後もなお抵抗を続け、儀式的な存在である選挙人投票で選挙結果をひっくり返そうとし、「実際に選挙人を任命するのは各州議会」と主張してウィスコンシンなど共和党が多数派を占める州議会に「不正」な一般投票の結果を無視して独自に選挙人を選定するよう要求した。しかし、12月14日の選挙人投票で一般投票の結果を無視する州は現れず、バイデン勝利が確定した。政権移行でも抵抗したため、引き継ぎのための作業スペース確保や、機密情報の説明開始が遅れた。
連邦議会襲撃事件をめぐって
連邦議会が先の選挙人の投票結果を正式に認定する日だった2021年1月6日、トランプはホワイトハウス前でその抗議集会を開き、トランプ支持者に向けて暴力を煽るような演説を行ったうえで、ペンシルベニア大通りを連邦議会議事堂まで行進することを促した。少なくとも数千人のトランプ支持者が連邦議会へ向けて行進し、そのうちの一部が連邦議会議事堂に乱入し、占拠する事件が発生した。この事件では、5人が死亡した。
この暴動で連邦議会の議事は中断された。ジョー・バイデンは、暴動を批判して暴徒に即時退去を呼び掛けるよう要求した。トランプはツイッターに投稿した動画で「平和でなければならない。家に帰ろう。愛している」と支持者に訴えたが、一方で「盗まれた選挙だった。私たちの地滑り的勝利だった」と改めて主張した。
その後トランプのSNSアカウントは、ツイッターが「ルールへの違反があった」ため3件のツイートの削除要求と12時間の投稿ブロック、フェイスブックが「規約違反があった」ため24時間の投稿ブロックになるなどアカウントが一時凍結された。ツイッターは、トランプが今後再びツイッターのルールに違反した場合には同氏のアカウントを永久に停止すると警
ウィキペディア、ウィキ、本、library、論文、読んだ、ダウンロード、自由、無料ダウンロード、mp3、video、mp4、3gp、 jpg、jpeg、gif、png、画像、音楽、歌、映画、本、ゲーム、ゲーム、モバイル、電話、Android、iOS、Apple、携帯電話、Samsung、iPhone、Xiomi、Xiaomi、Redmi、Honor、Oppo、Nokia、Sonya、MI、PC、ウェブ、コンピューター