- 日本国
- 日本国
-
(国旗) (国章(慣例上)) - 国の標語:特になし
- 国歌:君が代
-
公用語 日本語(事実上) 首都 東京都(事実上) 最大の都市 東京都区部 建国 諸説あり(明治政府の定めるところによれば紀元前660年2月11日。紀元節も参照。) 通貨 円(JPY) 時間帯 UTC+9 (DST:なし) ISO 3166-1 JP / JPN ccTLD .jp 国際電話番号 81 -
- ^ 百科事典マイペディア. “日本”. コトバンク. 2022年11月25日閲覧。
- ^ “第Ⅱ章 都道府県別面積” (PDF). 令和4年全国都道府県市区町村別面積調(1月1日時点). 国土交通省 国土地理院. (2022年3月23日). p. 5. オリジナルの2022年3月23日時点におけるアーカイブ。2022年3月23日閲覧。
- ^ “人口推計(令和6年(2024年)3月確定値、令和6年(2024年)8月概算値)”. 総務省統計局 (2024年8月20日). 2024年9月4日閲覧。
- ^ “令和2年国勢調査”. 総務省統計局 (2020年). 2022年3月23日閲覧。
- ^ a b c d e “Report for Selected Countries and Subjects”. IMF (2023年10月). 2023年10月26日閲覧。
- ^ 「紀元節」『改訂新版 世界大百科事典』コトバンクより2024年9月30日閲覧。 。
日本国(にほんこく、にっぽんこく、英: Japan)、または日本(にほん、にっぽん)は、東アジアに位置する民主制国家。首都は東京都。
全長3500キロメートル以上にわたる国土は、主に日本列島および南西諸島・伊豆諸島・小笠原諸島などの弧状列島により構成される。大部分が温帯に属するが、北部や島嶼部では亜寒帯や熱帯の地域がある。地形は起伏に富み、火山地・丘陵を含む山地の面積は国土の約75%を占め、人口は沿岸の平野部に集中している。国内には行政区分として47の都道府県があり、日本人(大和民族・琉球民族・アイヌ民族・外国系諸民族)と外国人(日本国民でない者、すなわち、外国籍者と数百人程度の無国籍者)が居住し、日本語を通用する。漢字文化圏に含まれる国の一つでもある。
概要
日本国憲法は、天皇を日本国の象徴と規定している。 日本の象徴として国樹は桜、国鳥はキジ、山(国の象徴となる山)は富士山、その他がある。
自然地理的には、ユーラシア大陸の東に位置しており、環太平洋火山帯を構成する。島国であり、領土が海に囲まれているため地続きの国境は存在しない。領土を取り巻く海は他国から日本への侵略を非常に難しくしている。日本列島は本州、北海道、九州、四国、沖縄島(以上本土)も含めて1万4125の島を有する。気候区分は、北は亜寒帯から南は熱帯まで様々な気候区分に属している。
21世紀までに奇跡的な高度経済成長と長期の経済停滞を経てきている。日本は1945年に敗戦した太平洋戦争からの復興を果たし、国内で多数の企業が躍進した結果、1964年のOECD加盟をもって先進国入りを果たし、OECD加盟時に受諾した資本自由化等の義務を忠実に履行して政策協調も行った。
文化面では漢字文化圏に含まれ、日本庭園、日本建築、和食、着物や宗教(神道・日本仏教)、武道・武術(特に古武道)などの伝統文化を保持し、複数の世界遺産を保有している。また漫画、特撮、アニメ、ゲーム、アイドル、シティ・ポップを始めとするポップカルチャーの中心地である。 政府はクールジャパン戦略を実行するなど、観光立国を推進している。
国号
日本において、国号を直接かつ明確に規定した法令は存在しない。『漢書地理志』などに見られるよう、古く中国においては日本列島の国家をあらわす呼称として「倭」を用いており、ヤマト王権もこれに倣っていた。しかし、『旧唐書』の記述にみられるよう、「倭国」は「自ら其の名の雅ならざるを悪(にく)み」、「日本」の国号を用いるようになった。『続日本紀』には大宝2年(702年)の遣唐使が、唐側の用いた「大倭国」という国号を退け、「日本国」を主張したという記述があるほか、開元22年(734年)の井真成墓誌にも「日本」の国号があらわれる。国号変更の正確な時期については明らかでないものの、天武天皇治世下であるという説、あるいは大宝元年(701年)の大宝律令の成立前後であるという説などが知られている。
「日本」の読み方については、「にほん」と「にっぽん」の2通りがある。室町時代の謡曲においては日本人に「ニホン」、中国人に「ニッポン」と読ませる描写があるほか、安土桃山時代の『日葡辞書』や『日本小文典』には「にほん」「にっぽん」「じっぽん」の読みがあらわれる。1930年代には「にっぽん」に統一する試みもあったが、最終的に決定には至らなかったた。両者はいずれも広く通用しており、2009年には日本政府により「どちらか一方に統一する必要はない」とする閣議決定がおこなわれている。
外名としては、英語・フランス語・ドイツ語において「Japan」、フランス語において「Japon」、スペイン語において「Japón」などが用いられており、これらは「日本」の中国語(閩語ないし呉語)読みが、交易を通じて西洋世界に伝わったものであると考えられている。
歴史
通常、日本の歴史は、日本列島における歴史と同一視される。しかし、厳密な「日本」の成立は、国号にあるように7世紀後期であり、それまでは「倭国」と呼び記されていた。この倭国がどのような地理的範囲あるいは系統的範囲をもつ集団であるかについては史料に明確にされておらず、多くの学術上の仮説が提出されている。倭国と日本国との関係は諸説あり、「日本の歴史」と「日本列島の歴史」とを明確に区別して捉えるべきとする考えも示されている。
先史から古代
日本列島に人類が到達したのがいつごろであるかは、定かではない。旧石器時代は前期・中期・後期の3つに分けられているが、日本列島では後期旧石器時代から始まると考える研究者がほとんどである。ホモ・サピエンスのものとして、国内で発見されている最古の遺跡は、いずれも3万8000年前のものである。1万5000年前には隆起線文土器が登場し、日本列島は1万1000年前までに本州北端までが縄文時代に突入する。その後、紀元前10世紀頃より福岡平野で灌漑式水田稲作がはじまり、伝統的理解においては、紀元前3世紀には弥生時代がはじまることとなる。農耕社会の首長層は2世紀中葉より大型の墳墓を築くようになり、200年前後にはヤマト王権の宮都と考えられる纏向遺跡があらわれる。3世紀中葉には箸墓古墳のような本格的な前方後円墳が登場し、多くの研究者は遅くともこの時代には古墳時代がはじまると考えている。4世紀末までにはヤマト王権は列島のかなりの部分を支配する国家となった。
ヤマト王権は中国や朝鮮の諸国との交流をもつとともに、世襲の大王(天皇)と氏姓制度を中心とする国家を確立した。6世紀頃には仏教が伝来したほか、隋・唐の東方進出に圧迫されるかたちで国政改革の必要がうまれる。大化改新や壬申の乱を経て、701年(大宝元年)には大宝律令が完成する。このようにして、日本には中央集権の律令国家が形成された(飛鳥時代)。710年(和銅3年)の平城京遷都によりはじまった奈良時代において、日本は仏教を中心とする律令国家として運営されたものの、この時代より公地公民制にほころびがあらわれはじめ、794年(延暦13年)の平安京遷都よりはじまる平安時代にはこれが崩壊する。王朝国家となった日本においては地方政治は国司に一任されるようになり、10世紀後期には藤原氏が天皇の摂関家として政権を掌握するようになる。貴族・寺社の私有地である荘園の発達にともない、地方ではのちに武士となる在地勢力が力をつけていった。
中世から近世
11世紀後期には摂関家の勢力が下降し、院政期に突入する。この時代には、武士が国家的に重要な位置を占めるようになり、12世紀後期には平氏が政権を握るようになる。平氏を追討した源頼朝は鎌倉幕府を樹立し(鎌倉時代)、その死後は、御家人のひとりであった北条氏が執権として権力を握った。所領を通じた幕府と御家人の関係は、貨幣経済の発展や、元寇に対する恩賞の不十分さなどにより、困窮する御家人が多くなったことでゆらぎはじめ、1333年(元弘3年・正慶2年)には後醍醐天皇による建武の新政がはじまった。足利尊氏は後醍醐天皇を吉野に逐い、1336年(延元元年・建武3年)に自ら天皇を擁立して室町幕府を築いた(室町時代)。南北朝は1392年(明徳3年・元中9年)に解消されるものの、1467年(応仁元年)にはじまる応仁の乱を契機として地方領主は戦国大名として自立し、1573年(天正元年)にはそのひとりである織田信長により幕府が滅ぼされる(安土桃山時代)。
信長の死後、その後継者となった豊臣秀吉は日本をふたたび統一し、検地と刀狩を通して兵農分離を確立した。秀吉の死後、1603年(慶長8年)には徳川家康が江戸幕府を開いた。幕府は幕藩体制を敷いて大名を統制したほか、鎖国政策により外国との交流を制限した。17世紀後期までに幕藩体制は確固たるものとなったが、1800年代よりロシアやイギリスといった西洋諸国が日本と接触するようになり、1853年(嘉永6年)にはアメリカのマシュー・ペリーによる開国が実現する。幕府が朝廷の意向を無視するかたちで日米修好通商条約を結んだことを引き金として、長州藩をはじめとする雄藩では尊王攘夷運動、さらには討幕運動がまきおこった。
近現代
明治維新を通じて幕藩体制は終了し、1868年(明治元年)の改元をもって、天皇を中心とする新政府が開かれた(明治時代)。新政府は積極的な近代化政策を推し進め、1889年(明治22年)には自由民権運動をうけて大日本帝国憲法が制定され、1890年(明治23年)には帝国議会が発足する。その後、日本は日清戦争(1894年・明治27年開戦)と日露戦争(1904年・明治37年開戦)に戦勝し、1910年(明治43年)には韓国併合をおこなった。
1912年(大正元年)には大正時代がはじまる。この時代にははじめての政党内閣が実現したものの、1926年(昭和元年)よりはじまる昭和時代には国政に対する軍部の影響力が増し、1931年(昭和6年)から1945年(昭和20年)にかけては十五年戦争がはじまる。同戦争の敗戦により帝国日本は解体され、1946年(昭和21年)には国民主権を原則とする日本国憲法が成立した。1950年代から1970年代初頭にかけての高度経済成長期を経て日本は世界有数の経済大国へと伸長した。1989年(平成元年)には平成時代がはじまったが、この時代に日本経済は停滞をはじめた。2019年(令和元年)には、平成から令和への改元がおこなわれた。
地理
日本は、東アジアに位置する島国であり、東および南は太平洋、西は日本海と東シナ海、北はオホーツク海に面する。北東から南西にかけて広がる島嶼群から構成され、総体ではおよそ14,125島から成る。北海道・本州・四国・九州の4島が主要な島であるが、この4島に沖縄本島を加えた5島を「本土」と呼称することもある。日本は明治以来、憲法における領土規定がなく、これは比較法学の観点では特殊なものであった。
面積は、2023年10月1日時点で377,974.79 km2 であり|、中央情報局の『ザ・ワールド・ファクトブック』によれば世界63位である。海岸線の総延長は35,268 m。領海は、原則として、基線からその外側12海里、国際航行に用いられる特定海域(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡西・、大隅海峡)については、基線からその外側3海里の線と、これに接続して引かれる線までの海域。また、基線から200海里までを排他的経済水域とする。日本は島嶼から構成されるゆえ、約4,050,000km2 におよぶ、広大な排他的経済水域を有する。これは、世界で8番目に広い。
日本の面積のうち、67%を森林が占める。日本の可住地は極めて限定され、沿岸部を中心とする都市の人口は非常に稠密となっている。日本の人口密度は世界40位と、このような人口集中を考慮しなくても高い。
自然災害
日本列島は環太平洋火山帯に沿っているため、地震・津波・火山の噴火などが多い傾向にある。2016年の『World Risk Index』によれば、日本の自然災害リスクは世界で17番目に高かった()。日本には111の活火山が存在する。また、しばしば津波をともなう大地震が数十年に一度程度発生し、1923年の関東大震災においては140,000人が死亡した。より近年の例としては、1995年の阪神淡路大震災や、2011年の東日本大震災があった。
気候
ケッペンの気候区分において日本はほぼ温暖湿潤気候か湿潤大陸性気候に属するが、一部に例外が見られる。道南の沿岸部、青森県や岩手県の沿岸部、宮城県、山形県、福島県、栃木県、山梨県、長野県の高原の一部には西岸海洋性気候が分布する。また、群馬県の一部には温帯夏雨気候が存在する。富士山頂や、大雪山山頂付近 にはツンドラ気候が分布する。
世界的に見ると四季がはっきりしており、中国や朝鮮半島同様、気温の年較差と日較差が大きい。また、降水量が多いこと、梅雨や秋霖の影響で降水量の年変化が大きいことが特徴として挙げられる。
日本の気侯は、太平洋側か日本海側かで大きな違いが見られる。日本海側では、日本海の上を越えてくる北西の季節風により、冬に雪や雨が多く、太平洋側では、太平洋から吹き込む 南東の季節風により、夏に雨が多い。また、瀬戸内海沿岸や中央高地では年中降水量が少ない。また、南北に長い日本では、緯度による気候の差異も大きい。
生物相
日本の森林生態地域は9種類に分類される。琉球諸島・小笠原諸島の、本州近辺の温帯広葉混交樹林、国土北部の温帯針葉樹林などその様態は様々である。日本では2019年現在[update]90,000種以上の生物種が確認されており、6,342種が固有種である。このことから、日本は生物多様性ホットスポットに指定されている。国内には53ヶ所のラムサール条約登録地が存在するほか、世界自然遺産も5件登録されている。
環境問題
戦後の高度経済成長期にあたる1950年代から1960年代、工業復興を経た日本においては深刻な公害問題が発生した。これに対処すべく、1970年には公害関連法が相次いで可決され、1971年には環境庁が設立された。1973年のオイルショックを契機として産業公害は減少するものの、都市・生活型の大気汚染が増加し、政府は排ガス規制などで対処した。
2018年、で日本は世界20位である。2020年、日本は国の二酸化炭素排出量リストで世界5位である。日本は1997年に第3回気候変動枠組条約締約国会議を開催し、京都議定書の締結国となった。2020年、日本政府は2050年までのカーボンニュートラルの実現を盟約した。
行政区画
普通地方公共団体の広域単位として都道府県、基礎単位として市町村を設ける。都道府県以上の地域分類は様々であるが、1903年(明治36年)の第1期国定地理教科書以来、地理教育の場では、以下のような8地域区分を採用している。
島嶼 | 地方 | 都道府県 | |
---|---|---|---|
北海道 | 北海道地方 | 北海道 | |
本州 | 東北地方 | 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 | |
関東地方 | 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 | ||
中部地方 | 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 | ||
近畿地方 | 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 | ||
中国地方 | 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 | ||
四国 | 四国地方 | 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 | |
九州 | 九州・沖縄地方 | 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 |
資源
日本は石油を大半は輸入しているものの、国内にも油田がある。 また、日本の領海にはメタンハイドレートが埋蔵しているとされている。 日本の金鉱山の代表に菱刈鉱山がある。
政治
法制度
日本国憲法を最高法規とし、この下に、国会が制定する法律、内閣が制定する政令や各省庁が制定する省令などの命令、地方公共団体が制定する条例など、各種の法令が定められる。この他、日本国憲法改正以前の勅令や大日本帝国憲法以前の太政官布告・太政官達は新たに制定されることはなくなったが、憲法に違反しない限り有効である。2019年現在において国立国会図書館のデータベースである 日本法令索引 は、有効な勅令としては本初子午線経度計算方及標準時ノ件(明治19年勅令第51号)、閏年ニ關スル件(明治31年勅令第90号)など57件、太政官布告・太政官達は改暦ノ布告(明治5年太政官布告第337号)など9件を収録している。憲法上、裁判所は、全ての法令や行政行為などが憲法に適合するか否かを最終的に判断する違憲法令審査権を有し、最高裁判所を終審裁判所とする。もっとも、いわゆる司法消極主義に基づき、国会や内閣など政治部門が下した判断への干渉は、憲法判断に関する統治行為論を代表として司法判断を控えることが多い。
憲法
現行の憲法は日本国憲法であり、国家形態および統治の組織[要曖昧さ回避]・作用[要曖昧さ回避]を規定する。1946年(昭和21年)11月3日に公布され、1947年(昭和22年)5月3日に施行された(形式的には大日本帝国憲法第73条を適用して、大日本帝国憲法の改正手続を経て制定された。)。
現憲法の改正手続きは96条に規定されているが硬性憲法に分類され、現在に至るまで改正されたことは一度もない。
日本国憲法の根底には第13条「個人の尊厳」の理念がある。
長らく、戦争の放棄、戦力の不保持を定めた第9条と自衛隊の存在意義などを巡って憲法改正論議が行われている。憲法裁判所設置や新しい人権、緊急事態条項も改憲テーマで扱われるようになってきている。なお、主権が制限されていた、もしくは憲法制定権力が変更されたなどを理由として、占領下での改正手続きに法的瑕疵があったとする議論があり、一部には、日本国憲法自体の無効を主張し、今も大日本帝国憲法が有効であるとする者もいる。(押しつけ憲法論、日本国憲法無効論)
日本国憲法はGHQにより作成されたと認識される場合があるが、正しくはGHQ草案をもとに当時の日本政府が作成した。
法律
明治維新以来、信託など一部の民法の規定を除き、大陸法系(特にドイツ法及びフランス法)を基礎としているが、立憲君主制や議院内閣制については英国法、最高裁判所以下司法についての規定につき米国法の影響を強く受けているなど、憲法を中心として英米法の影響も見られる。日本国憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法を総称して六法と称する。この六法が日本の法令の基本を成し、日本の法学の基本的な研究分野と考えられてきたことによる。商法のうち、企業に関する定めの多くは、会社法に分けられた。刑法には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収が刑罰として定められている。私法分野においては一定の範囲内で慣習法は効力を有するが(法適用通則法3条)、刑法については罪刑法定主義を採り、慣習法を排除する。
死刑制度のあり方を巡っては、憲法制定の当時から議論がある((死刑存廃問題#日本における死刑)を参照)。ただし、、いわゆる「永山基準」を「死刑選択の許される基準」としている。2009年より、刑事事件につき重大な犯罪について裁判員制度が導入されている。
人権
国民の基本的人権は、日本国憲法第11条により保障されている。
女性の地位に関しては、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では、146か国中118位であり、政治と経済の分野が低い。ジェンダー開発指数では、193か国中92位である。人工妊娠中絶は母体保護法により配偶者同意が必要とされ、女性だけの判断で行うことができず、本来不要の必要のない未婚の場合でも病院で要求されている。2021年に交際相手の同意がとれず公園トイレで出産後に嬰児を遺棄し死亡させた事件も発生した。1973年の尊属殺重罰規定違憲判決でも、実の父から中学からの夫婦生活と5人の子の出産を強いられ、別れを切り出し監禁に合った末に父の殺害に至った当時20代女性が起こした事件であった。
- 報道の自由
日本国憲法第21条によって報道の自由を含む表現の自由と検閲の禁止・通信の秘密が謳われている。ただし、表現の自由は絶対無制限に保障されたものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限は是認されることが立川反戦ビラ配布事件で判示され、西山事件では、正当な取材活動の範囲を逸脱したとされる記者に有罪判決が下っている。
公的機関による報道機関に対する直接的な加害行為はほぼ見受けられず、記者が殺害された日本国内での政治的テロは、1987年の赤報隊事件で朝日新聞の記者1名が犠牲になったのが2021年現在において唯一の事例となっている。この事件では、報道関係者に限らず総理大臣経験者である中曽根康弘・竹下登らに対する脅迫行為なども行われている。
日本独特の慣習として記者クラブ制度があり、加盟しているマスメディアのみが政府や行政機関などの記者会見を独占し、情報を受けるメリットを享受している。記者クラブが開催している会見は、加盟マスコミ以外を排除しており、報道の自由を侵害しているとフリージャーナリストや外国メディアなどからの批判が多い。
公共の電波を使用するテレビ放送・ラジオ放送については、放送法・電波法の定めにより、総務省が発行する放送事業者免許が必要である。放送法第4条では中立な内容(公安及び善良な風俗を害しないこと・政治的に公平であること・報道は事実をまげないですること・意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること)が義務付けられており、2018年には同条の撤廃が検討されているものの、2021年現在も存続している。総務省所掌の公共放送である日本放送協会(NHK)の予算は、放送法第70条の定めにより、国会の承認を必要とする。
新聞については、過当競争の防止を目的とした特殊指定の適用を受けているが、公正取引委員会は「新聞業における特定の不公正な取引方法」としてその見直しを求めていて、業界団体である日本新聞協会と対立している。なお、新聞は消費税の軽減税率適用対象となっている。
フランスを拠点とする非政府組織「国境なき記者団」(RSF)が作成する2020年の『世界報道自由度ランキング』では、調査対象国180か国中第66位とされ、各国を5段階に分けた分類では上から3番目の『顕著な問題のある国』にカテゴライズされている。RSFは、日本について「議会主義的君主制であり、概してメディアの多元主義の原則を尊重している」としつつも、上述の記者クラブ制度の他、「編集部門が、経済的利益を優先する巨大な『系列』の方針に左右される状況が続いている」ことや「SNSでの福島第一原子力発電所事故や沖縄基地問題などを取材するジャーナリストへの嫌がらせ」などを課題として挙げている。ただし、このランキングは質的調査を当該国の報道関係者・弁護士・研究者などへのアンケートに依存しており、したがって点数付けはこれらのグループの自国政府への感情などによって左右される。また、調査対象国の評価点の分布が平均値付近に集中し、点数の差以上に順位の開きが出る傾向がある。
なお、世界的な知名度がより高い「フリーダム・ハウス」の『Freedom of the Press 2017』においては、199カ国中48位で、報道の自由が確保されている(free)国と判定されている。この他にインターネット上の自由度に関する報告書の『Freedom on the Net 2019』において日本は65カ国中11位に位置づけられ、インターネット上の自由が確保されている国と判定されており、『Freedom in the World 2020』において日本の全般的な自由度は100点満点中96点と評定され、アジアで最も自由な国として位置づけられている。
元首に関する議論
日本国憲法に「日本国の元首」についての規定がないため、現在元首については様々な見解がある。政治学者の田中浩、憲法学者の芦部信喜、総合政策学者の長野和夫によると学説の多数は、権限を持つ内閣または内閣総理大臣を元首としている(内閣・内閣総理大臣元首説)。また、現行憲法施行後も変わらず天皇が元首であるとする説(天皇元首説)、国権の最高機関たる国会の長である衆議院議長を元首とする説(衆議院議長元首説)や、そもそも日本には元首が存在しないという説さえある。
天皇
天皇は、日本国および日本国民統合の象徴たる地位であり、当該地位にある個人である。日本国憲法第1条には「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」と記載されている。大日本帝国憲法では第4条で「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬(そうらん)」するとの明記があったが、現行の日本国憲法には天皇を元首とする旨の規定はない。『日本大百科全書』は、天皇には通常の立憲君主の権限は無いとし、『法律用語辞典(第4版)』は、象徴天皇と元首天皇を別としている。また『国史大辞典』は法制上、象徴天皇は君主ではないとしている。
『岩波 日本史辞典』によると、「日本の君主制」は「天皇制」という。戦後に「社会科学用語として定着」したとされる。憲法で天皇を「象徴」と称することから、「象徴天皇制」ともいう。「象徴天皇制は天皇が元首でないので君主制としない説もある」とされる。憲法学者の野中俊彦、中村睦男、高橋和之、高見勝利の共同著作『憲法I』(第5版)によれば、「象徴にすぎなくなった天皇は君主といえるか」という問題は、君主の定義による。民主主義の浸透後は、君主制が維持された国でも、君主権は名目化した。こうなると、君主制か共和制かの区別は無意味に等しい。天皇が君主かどうかは、憲法学上「ほとんど議論の実益のない問題」とされている。
東洋史学者岡田英弘の『倭国』および『日本史の誕生』によると、720年に完成した日本最古の史書『日本書紀』では、「高天原」より日向(宮崎県)の高千穂山に下った(天孫降臨)太陽の女神アマテラスの孫ニニギノミコトの孫の神武天皇を初代とする一つの皇統が、一貫して日本列島を統治し続けてきたとされる。『百科事典マイペディア』によると、神武天皇は「もとより史実ではない」とされている。また、皇統が分裂して、二系統が交互に皇位に就いた「両統迭立」、皇統が分裂抗争した「南北朝時代」という語が存在している。『NEWSポストセブン』では、「現存する世界最古の王室としてギネスブックに登録される日本の皇室」と記述されている。
内閣総理大臣
内閣総理大臣は日本の内閣の首長である。初代は伊藤博文。 内閣総理大臣は、国会議員でなければならない。国会から指名された人物は、天皇により国事行為として、儀礼的・形式的に内閣総理大臣に任命される。 なお、日本国憲法施行以来、慣例として衆議院議員が内閣総理大臣に指名されている。
代 | 人目 | 内閣総理大臣 | 生年月日 | 年齢 | 内閣 | 政党 | 在任期間 | 日数 | 通算在任日数 | 閣僚兼任 | 栄典・兼職 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
102 | 65 | いしば しげる 石破茂 | 1957年 (昭和32年) 2月4日 | 67歳 | 石破内閣 | 自由民主党 公明党 (自公連立政権) | 2024年(令和6年)10月1日 - 現職 | 13日 | 13日 | 衆議院議員 (第12期 鳥取1区選出) 第28代自由民主党総裁 |
国政
政治体制
日本は単一国家であり、その政治体制としては、「議会制民主主義体制」・「象徴天皇制」・「議院内閣制」を採るとされる。
中央政府
日本国政府(統治機構)は、憲法上、立法権を国会に、行政権を内閣に、司法権を裁判所に、それぞれ分配する権力分立制(三権分立)を採る。また、内閣が国会の信任に拠って存在する議院内閣制を採用する。日本国憲法第41条は、国会を「国権の最高機関」と定めるが、この意味につき学説は分かれ、国政の中心的位置を占める機関であることを強調する政治的美称であるとする説(政治的美称説)、「国家諸機関の権能および相互関係を解釈する際の解釈準則となる」とする説(総合調整機能説)が有力である。
- 立法府
国会は、衆議院(下院)と参議院(上院)との二院から構成される二院制の議会(立法府)である。上述の通り日本国憲法41条では「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」ことがうたわれる。一方、日本国憲法第72条では内閣総理大臣が内閣を代表して議案を国会に提出することとされており、この"議案"には法律案が含まれているか否か学説が分かれている。実際の運用では、内閣立法と議員立法が併用されている。
衆議院・参議院は、いずれも全国民を代表する選挙(衆議院議員総選挙・参議院議員通常選挙)により選出された国会議員(衆議院議員・参議院議員)によって組織される。ただし、法律や予算、条約の議決、内閣総理大臣の指名、内閣不信任決議などにおいて、衆議院に参議院よりも強度な権限が付与されている(衆議院の優越)。これは、衆議院解散があり、任期も短期間であるため、より民意を反映しているため、と説明される。
- 行政府
行政府である内閣は、その首長たる内閣総理大臣と、その他の国務大臣から構成される合議制の機関である。国務大臣は、内閣総理大臣が任命し、天皇が認証する。国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。内閣総理大臣、その他の国務大臣は、文民でなければならない。内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う一方、衆議院の実質的な解散決定権を持つとする見解が多数説となっている(日本国憲法7条3項および69条を参照のこと)。 国会で審議される法案の大多数は、内閣が提出する内閣提出法案(政府立法、閣法)であり、国会議員が発議する法案(議員立法)が少ない。政府提出法案は、内閣の下に設置される省庁が国会議席の多数を占める与党との調整を経て作成するため、省庁の幹部公務員(キャリア官僚)の国政に対する影響力が強い。
1970年代以降は中曽根康弘や小泉純一郎といった例外を除いて、内閣総理大臣の任期はせいぜい2年にとどまり、2006年(平成18年)以降は1年前後の任期が続いた。
- 55年体制とその後
- 国会では、1955年(昭和30年)に結党された自由民主党(通称:自民党)が、一貫して最多の議席を占めていた。同年に統一された日本社会党(通称:社会党、現在の社会民主党)と共に、両政党が結党した西暦年の下2桁をとって「55年体制」と呼ばれる政治体制を形作った。この体制は、自民党が与党として党の総裁(党首)を国会で内閣総理大臣に指名し、同党議員の中から国務大臣を任命して内閣を組織し、社会党が野党として自民党と対立・協調しながら、国政を運営するものである。新自由クラブと連立政権を組んだ1983年(昭和58年)から1986年(昭和61年)までの一時期を除き、1993年(平成5年)までの約40年間、自民党の単独政権が続いた。
- 1993年(平成5年)に自民党羽田派が離党して新生党を結党し、非自民・非共産連立政権である細川内閣(細川護熙首相)が成立したことで自民党が政権を離脱し、これをもって戦後長年の日本政治を構築してきた「55年体制」が崩壊した。翌1994年(平成6年)6月に自民党・社会党・新党さきがけの自社さ連立政権である村山内閣(村山富市首相)が成立して自民党が政権に復帰した。次の橋本内閣(橋本龍太郎首相)以後、自民党は連立相手を組み替えながら総裁が内閣総理大臣に就任する時代が再度継続されたが、2009年(平成21年)8月の衆議院議員総選挙で大敗、衆議院第1党から転落し、翌9月に民主党・社会民主党・国民新党からなる民社国連立政権の鳩山由紀夫内閣(鳩山由紀夫首相)が成立。民主党を中心とする連立政権は野田第3次改造内閣(野田佳彦首相)を最後に2012年(平成24年)12月の衆議院議員総選挙での敗北で終焉を迎え、自民党と公明党の両党が再び政権に復帰し、自公連立政権が復活した。
- 司法府
日本国憲法により、司法権は裁判所(最高裁判所及び法律に定めるところの下級裁判所)が行使する。各地方公共団体には司法府は存在せず、各地に設置される下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)が裁判を行う。また、日本国憲法により特別裁判所(皇室裁判所や軍法会議など)の設置は禁止されている。
司法制度として、刑事裁判に市民感覚を反映させる陪審制と参審制を折衷した制度である裁判員制度や、検察官の公訴権に民意を反映する検察審査会制度などがある。
地方政治
政治体制
地方政治においては、国政とは異なり、住民から直接選挙される首長と地方議会による、二元代表制が採られる。
地方政府
地方自治は、基礎的な団体である市町村、広域的な団体である都道府県の二段階から成る、地方公共団体(地方政府)が担う。
- 市区町村
- 市が795、町が743、村が183、合計1718。北海道と沖縄、および一部の離島地域を除く日本国内では1889年(明治22年)にこの市町村制が施行された。他に、特別地方公共団体として、2016年10月10日現在、首都たる東京都に23の特別区(東京都区部)が設置されており、これらは市に準じた権限を持つ(地方自治法第281条第2項・第283条)。かつては1万を超えた市町村数は、1950年代後半の昭和の大合併と2000年代の(平成の大合併)によって激減し、市町村の再編が進んだ。
- 執行機関たる市町村長、議決機関たる市町村議会が置かれ、いずれも住民から選挙される。
- 財産を管理し、地域の事務を取り扱い、行政を執行する。法律の範囲内で条例を定める。特に規模が大きい市は、政令指定都市として、農林水産行政に関する権能などを除いて都道府県並みの権限を有する。
- 「市」は「し」と読まれるが、「町」は「まち」・「ちょう」、「村」は「むら」・「そん」の読みが混在している。
- 都道府県
- 都が1、(道)が1、府[要曖昧さ回避]が2、県が43、合計47都道府県。1871年(明治4年)の廃藩置県により全国に行政区画として府・県が置かれた。市町村と異なり、県自体の合併・分立は1888年(明治21年)を最後に行われていない。
- 都は特別区に関する一定の調整機能を有するが、府県の間には法律上の違いはなく、名称の差異は歴史的なものである。道も地方自治法上は府県と同格であるが、特別法に道について若干の特例を定める(警察組織につき警察法第46条・51条など)。
- 執行機関たる都道府県知事、議決機関たる都道府県議会が置かれ、いずれも住民から選挙される。
- 市町村を包括し、より広域的な行政を行う。法律の範囲内で条例を定める。
現在、東京一極集中を緩和して地方分権を進めるため、都道府県を解消して更に広域的な道州を置く道州制の導入が検討されている(日本の道州制論議)。また、大阪都や中京都のように特別区をつくる運動もある(大都市地域特別区設置法)。
選挙
国会議員(衆議院議員、参議院議員)を決める国政選挙や各地域で行う地方選挙がある。 選挙には地盤・看板(知名度)・カバン(選挙資金)の「3バン」が必要とされることから、世襲政治家が多い。
領土問題
日本は北方領土・竹島・尖閣諸島などにおいて、周辺諸国との領土問題を抱えている。
国際関係
この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2021年2月) |
1956年から国際連合に加盟しており、1958年には「国際連合中心」「自由主義諸国との協調」「アジアの一員としての立場の堅持」の外交三原則が掲げられたが、概して日米基軸外交と両立する範囲内での実施が実情となっている。なお、米国ピュー研究所が2022年4月に公表した国連への好感度調査によると、調査対象の先進国19カ国の中央値が肯定65%否定27%であったのに対し、日本で肯定40%否定48%とやや否定的評価が優勢であった。
現在、世界の195か国に日本の大使館が設けられており、157か国が日本に大使館を設け42の国際機関が日本に事務所を設けている。
2023年7月現在、日本からビザなしで渡航できる国の数は189か国で、韓国やフランスなどと並んで世界3位である。日本は過去5年間、世界1位を維持してきたものの、首位をシンガポールに明け渡した。
また、日本はG7、G8、G20、経済協力開発機構(OECD)、世界貿易機関(WTO)加盟国であり、いわゆる列強に数えられる国家の一つである。
現在、日本は国際連合加盟国のうち、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を除いたすべての加盟国に加え、バチカン市国、コソボ共和国、クック諸島、ニウエを国家として承認し国際関係を有している。また、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、パレスチナ(パレスチナ国)、台湾(中華民国)と非公式の関係を持つ。
東アジア
東アジアでは、古来地理的に近距離で隣接する中国や朝鮮などを中心に外交が行われていた。日本は儒教・漢字文化圏の一角であり、伝統的な文化の中には、雅楽、水墨画、陶磁器、禅宗、書道など、東アジアをルーツに持つ物が多い。明治期以降、文明開化により西洋文化を採用して発展した日本の文化が逆に東アジアに伝播した。日中平和友好条約に基づき国交は断絶したが非政府間の実務関係として交流が続く台湾(中華民国)や韓国(大韓民国)は、かつて(日本領)台湾や(日本領)朝鮮として大日本帝国に統治されていた経緯から、現在でも重要な貿易相手である。また、経済成長を果たした中国は科学技術や経済・ビジネスにおいて日本の競争相手となっている。北朝鮮は、同国の建国以来一貫して国交がなく、日本は同国に対して経済制裁を実施している。軍事、安全保障面では日本・韓国・台湾はそれぞれアメリカを介して緩やかな協力関係にある。一方、中国は建国由来(社会主義国)から朝鮮戦争以降、北朝鮮と同盟関係にあり、ロシア(旧ソビエト連邦)とも協力関係にある。
東南アジア
歴史的には日本と東南アジア地域との関係は朱印船貿易が盛んだった16世紀末から17世紀ごろまで遡る。日本が鎖国をした江戸時代の間に、タイ王国を除けば東南アジア地域は列強・欧州諸国(アメリカ、イギリス、オランダ、フランス、ポルトガル)の植民地になっていった。第二次世界大戦では日本と同地域を植民地支配する欧米列強との交戦地となったために同地域の住民にも多数の犠牲を出したが、第二次世界大戦後に独立を果たした各国は日本と国交を結び、良好な友好関係を構築し、それを堅持している。タイ、フィリピン、マレーシアなど経済的にも文化的にも関係が深く、互いの国民に対する感情も良いとされる。また日本は、これら各国との経済関係を1970年代ごろからASEAN(東南アジア諸国連合)を通じて深めており、1997年からASEAN+3に参加、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との間で定期的に首脳会談を行い、関係を重視している。また自由貿易協定(FTA)の締結を模索している。自衛隊のPKOとしての派遣も、初の派遣がカンボジアで、また東ティモールやベトナムへも派遣された。東南アジア周辺の海域(特にマラッカ海峡、シンガポール海峡)は中東から輸入した原油の9割近くが通過するなど非常に重要なルートであるが、海賊が頻繁に出没する。その対策として、海上保安庁が各国の沿岸警備隊に対して指導・共同訓練を行っているほか、現地派遣も行っている。天皇皇后がタイ、マレーシア、インドネシア、シンガポール、フィリピンを訪問している。
南アジア
南アジア各国とは友好関係を維持している。6世紀とされる仏教公伝以来、日本の宗教・文化・政治に深く根ざした仏教(大乗仏教)の発祥地として古代インドは「天竺」の名で広く知られ、サンスクリット(梵語)で書かれた仏教経典や哲学思想が広く流入した。また、16世紀後半からの南蛮貿易ではポルトガルがインド西海岸のゴアに築いていたポルトガル領インド植民地が重要な中継点となっていたが、南アジア諸国と日本の正式な外交関係は第二次世界大戦後の各国独立と日本の主権回復後に始められた。日本は「戦争による唯一の被爆国」であるということから(日本への原子爆弾投下)、核実験を実施したインドやパキスタンと距離を置いていた時期もあったが、情勢の変化に伴って近年関係が重視されるようになり、2006年(平成18年)には東南アジアも含めて外務省アジア大洋州局に南部アジア部を新設した。宗教的な対立要因が存在していないため、両国間では特に厳しい対立関係にあるインド・パキスタン双方を含め、各国民の対日感情は比較的良好とされる。
オセアニア
オセアニアの中でも南洋諸島の各国は、かつて日本が委任統治領ないし占領地として統治下に置いていたこともあり、関係が比較的深い。ミクロネシア連邦では、日系人のトシオ・ナカヤマやマニー・モリが大統領に選ばれている。パラオは、かつて日系のクニオ・ナカムラが大統領に就任し、一部の自治体で日本語が国の公用語として採用されている(実際に日本語を日常的に使用しているわけでなく、象徴的な意味合いが強い)などの経緯もあり、官民とも非常に親日的である。
中央・南アメリカ
総じてラテンアメリカと呼ばれる地域とほぼ一致するアメリカ大陸の中南部は、日本が西欧諸国との接触を持った16世紀には既にスペインやポルトガルの支配下にあった。スペインは現在の中米諸国やフィリピンを含むヌエバ・エスパーニャを統治し、ここを通じて対日貿易の展開や慶長遣欧使節の受入などを行ったが、使節団の帰国時には江戸幕府の鎖国政策が強化されており、日本と同地域との交流は17世紀前半に一度途絶した。
19世紀後半に日本が開国し、続いて明治維新が起きた時、ラテンアメリカ地域は既にほとんどが独立していた。明治政府は江戸幕府がアメリカ合衆国や西欧諸国との間で結んだ「不平等条約」の解消に苦心する中、ラテンアメリカ諸国との平等条約締結による外交実績の強化に動き、メキシコを皮切りに次々と外交関係を樹立した。中南米諸国も農業労働力の確保に利点を見いだし、19世紀末から日本人移民の受入を開始した。ただし、この地域はモンロー主義以来、アメリカ合衆国が強い関心と影響力を維持しており、真珠湾攻撃で1941年に日本とアメリカが第二次世界大戦(太平洋戦争)に突入するとメキシコ以外の中米諸国は即座に、それ以外の国も1942年のブラジル・メキシコから1945年までに全て対日宣戦布告を行って、一部では日系人の強制収容やアメリカ合衆国への国外追放も実施した。戦後は日本がアメリカの強い影響下に入った事もあり、両地域の交流は再び強化され、日本企業の進出や日系人労働者の日本移入なども行われた。また、東南アジアの経済発展も取り込む環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に日本やメキシコ、ペルー、チリなどが参加し、同協定に不参加となったアメリカ合衆国を抜きにした独自の協力強化も進められている。
中央アメリカ(中米)諸国とは、人的・文化的な交流に乏しいものの、経済的な関係を中心に平穏な関係を保つ。また、キューバなどの社会主義国とも経済・文化の両面で友好的な関係が築かれ、ペルー日本大使公邸占拠事件でも日本の要請を受けたキューバがゲリラの亡命受け入れを受諾するなど協力した。
南アメリカ(南米)は、地理的に地球の真裏に位置するが、下記のように19世紀の後半からペルーやアルゼンチンと深い友好関係を有する。また、かつて日本からの移民を大量に受け入れた経緯もある。貿易関係では、チリとの関係が特に大きく、戦前からの友好関係が続くアルゼンチンやパラグアイといった親日的な国も多い。
ヨーロッパ
江戸時代、日本に米国とともに開国を迫ってきたのがイギリスやフランスといったヨーロッパ諸国であり、また安政の五ヵ国条約に代表される不平等条約を結んだほとんどの国もヨーロッパ諸国であった。その後、明治維新において近代化の模範としたのもまたロシアを含むヨーロッパ、よりわけ西欧諸国であり、『脱亜入欧』(福沢諭吉)の造語にあるように、明治時代以降に日本が留学生の派遣、お雇い外国人の使用などで積極的に学問、技術、文化の摂取に努めた。日露戦争勝利後、日本はヨーロッパ諸国と対等な列強として扱われ、第二次世界大戦以降の現代、西ヨーロッパを中心とする北大西洋条約機構(NATO)諸国と間接的な同盟関係にある。また、皇室は、イギリス王室をはじめ、オランダ、スウェーデン、ベルギーなどのヨーロッパ各国の王室と深い友好関係を築いている。一方、特にオランダなどには、第二次大戦で交戦したことによる悪感情が一部に残っているとも言われる。民主主義、資本主義、自由主義の理念を共通とすることから友好国が最も多い地域の一つであり、G7などで接点が多い事からイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどとは特に交流深いが、冷戦の終結によって「鉄のカーテン」が撤去されると社会主義陣営に属していた旧東欧諸国やバルト三国との交流も活発となり、当時の天皇明仁・皇后美智子が2002年(平成14年)にポーランド、ハンガリー、チェコを、2007年にエストニア、ラトビア、リトアニアを訪問している(立ち寄りもふくむ)。
ロシア・中央アジア諸国
ロシアと国交が結ばれた段階ですでにロシアは南下政策をとっており、中央アジアやコーカサス地域も征服していた。社会主義革命でソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)が成立してからも、これら地域はソ連の構成国として維持された。そのために、中央アジアの西トルキスタン諸国やコーカサス地方の国々との関係樹立は1991年のソビエト連邦の崩壊まで待たなければならなかった。1997年(平成9年)に橋本政権[要曖昧さ回避]によって「ユーラシア外交」が提案されてロシアや中央アジア諸国との関係強化が志され、のちの政権も継承されることになった。しかし、2001年9月11日のアメリカ合衆国ニューヨークでの同時多発テロ以降は低調である。経済基盤の貧弱な国が多く、更に海に面していないために輸送コストなども掛かるなどの理由から、一部の希少な地下資源を除き、貿易などの経済的な関係も他地域と比べて活発と言えない状況にある。ただし、この地域に栄えた古代王朝や仏教遺跡の研究などの学術関係での交流は活発である。
アフリカ
アフリカ諸国は、地理的に離れている事もあり日本とは歴史的に関係が少なかった。南アフリカ連邦(のちの南アフリカ共和国)、エジプト、エチオピア帝国(のちのエチオピア)を除き、殆どの国と戦後に国交を結んでいる。主に日本からアフリカ諸国への開発援助と、アフリカ諸国からの地下資源や農水産物の輸入と日本からの工業製品の輸出という貿易関係が多い。1993年からは、ODAなどの経済支援を含む経済的・人的な交流を深める目的で、日本、国際連合、アフリカのためのグローバル連合、世界銀行が共催し、アフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)を開始するなど、関係強化に乗り出している。また、ソマリア、南スーダンなどでは自衛隊による平和維持活動が行われており、関係は深化している。文化面では、サッカーなどスポーツの分野においてアフリカ諸国の選手団を日本に招待した試合が行われており、緊密かつ良好な関係を築いている。
BBC国際世論調査
イギリスの公共放送BBCによる国際世論調査では、好ましい国の上位に挙げられている。2017年好評の結果では56%がポジティブな評価を出し3番目であった。2017年のBBC国際世論調査と2013年の米国のピュー研究所の調査によると、調査対象のうち否定的回答が肯定的回答を上回った国は中国と韓国のみであった。
渡航する日本人
- 安全
- 近年、海外への渡航の増加に伴い、犯罪に巻き込まれるケースも増えている。特にアメリカ同時多発テロ事件以降、爆破や拉致・監禁事件なども多発し、有名な例としては、イラク日本人人質事件、アフガニスタン日本人拉致事件、アルジェリア人質事件では武装勢力に殺害される事件も2013年に起きた。また、2002年にニューカレドニアのリゾート地で現地の風習・文化をよく知らずに聖地とされる場所に無断で侵入したために地元民に殺害される事件も発生した。日本人女性が性的暴行の被害に遭う事例も増えている。
- 世界的に最も良い方である日本の治安、例えば殺人の発生率が低い順に第3位(2000年〔平成12年〕)であることなど、日本人が日本での治安の感覚と同じように海外で行動すると、その感覚の大きな隔たりから犯罪に巻き込まれることがある。
- マナー
- 米最大手の旅行ウェブサイトであるエクスペディアが行ったアンケート調査で、「行儀がいい」、「礼儀正しい」、「物静かで慎ましい」、「クレーム・不平が少ない」の各分野で1位を獲得するなど、2位のアメリカ人を大きく引き離して1位となった。しかし、そういった控えめな特質を逆手に取られてぼったくりに遭う例もある。
- 一方、以下のような犯罪事例も存在する。
治安・防災
オーストラリアに本部を置き、米国、オランダ、メキシコ、ベルギーに支部を持つ経済平和研究所によると、2021年の世界平和度指数の「安全・セキュリティ」部門で日本は世界第1位となることが客観的データで示されている。安全な国は、一人当たりのGDPが高い、インフレが比較的低い、汚職が少ない、資源分配の不平等が少ないなど、多くのポジティブな影響をもたらす。
治安維持
国内の治安維持は、主に警察が担う。警察の機構は、内閣府の外局である国家公安委員会とこれに属する警察庁、そして各都道府県の公安委員会・警察本部による二層構造であり、後者の下部組織たる警察署、更に日本発祥の交番の存在が地域の安全を担う。交番は地域に根ざして、小ブロックの担当地域を効率的かつ濃密に治安維持活動を行うことができる。日本の警察はSATなどを擁する文民警察である。SATは、国際特殊部隊競技会などを通じて非常に高い練度を評価されることも多い。
警察以外では、沿岸警備隊の機能を有する海上保安庁(海上保安官)が国土交通省の外局として、また、国境警備隊の機能の一部を担う法務省出入国在留管理庁(入国警備官)や財務省の税関(税関職員)、あるいは、特に薬物犯罪を専門に管轄する厚生労働省の各地方厚生局麻薬取締部(麻薬取締官)などが、それぞれ設置されている。
銃砲刀剣類所持等取締法により、銃・刀剣などの武器の所持を厳しく規制している。国連薬物犯罪事務所の統計によれば、国連加盟192国の内、犯罪・刑事司法の統計を報告している国の中で、殺人、誘拐、強制性交、強盗などの凶悪犯罪の発生率が著しく低い。その理由については、制度的な要素、社会的な要素、日本人の遵法意識の高さなど諸説あるが、その一つとして厳しい銃規制も挙げられる。但し、イギリスの銃規制に見られるように日本と同等ないし罰則だけなら日本よりも厳しいにもかかわらず、殺人事件に占める銃の使用される比率が日本の倍を超える国が存在するなど、必ずしも銃規制のみが治安維持に貢献しているわけではない。また、ローンオフェンダーによる手製銃や手製爆弾を使用した事件が相次いでいることから、特定の組織を対象とした情報収集や完成銃への対策だけにとどまらない対策強化が課題となっている。 刑務所および拘置所は法務省が管理し、刑務官が収容者の管理などを担う。
- 国内の治安維持活動を行う警察
- 警察官(女性)
- 警察官(男性)
- 交番と警察官
- 機動隊
- 特殊急襲部隊(SAT)
- 海上保安庁勝浦海上保安署
- 東京拘置所(東京都葛飾区)
消防
火災の消火活動や病院への救急搬送、救助活動および防災活動をするため、消防本部の業務実施機関とし全国に消防署が配置され、消防庁が統括する。加えて、消防組織法に基づいて各市町村に設置される消防団が存在する。
- 消防士
- 長久手消防署
- 消防ポンプ車
非常時政府対応
緊急事態宣言
国家の緊急事態時には原子力災害対策特別措置法や新型インフルエンザ等対策特別措置法などの法律に基づき内閣総理大臣より発令される。
Jアラート(防災面)
Jアラートは防災面と防衛面があり、防災面として国民保護のために津波など大規模災害の緊急情報を瞬時に伝達する。
国家安全保障
日本の国家安全保障((国家安全保障#日本の安全保障))に関する法律として国家安全保障会議設置法、防衛省設置法、自衛隊法などがある。
安全保障に関する条約には「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」がある。
- 防衛省
- 詳細は「防衛省」を参照
- 自衛隊の管理・運営及び安全保障に係る事務を所管する。
- 自衛権の行使
- 日本政府が自衛権の行使を発動する際に満たす要件として武力の行使の「新三要件」がある。
防衛
日本の防衛組織として自衛隊が存在する。自衛隊は「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」ために設置され、事実上の軍隊として機能し、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊から構成され、内閣総理大臣と防衛大臣による文民統制(シビリアン・コントロール)の下、防衛省によって管理される。また、事実上の準軍事組織として沿岸警備隊たる海上保安庁が存在するが、海上保安庁での対処が困難な事態が発生した場合は海上警備行動により海上自衛隊が対処する。
大日本帝国憲法の統帥権を根拠に旧日本軍が政治に深く関与したことへの反省から、自衛隊法第7条により、内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つと規定され、文民統制に注意が払われている。また、同じく戦前への反省から自衛隊海外派遣は長らく行われてこなかったが、自衛隊ペルシャ湾派遣や自衛隊カンボジア派遣を契機に開始された。現在では、海外派遣任務は自衛隊の主要任務となっている。
第二次世界大戦後、日本の部隊は、その所属にかかわらず、一切の直接の戦闘を経験していない。連合国軍の占領下にあった1950年、朝鮮戦争で海上保安庁の機雷掃海部隊(特別掃海隊)が派遣されたことがあり、死傷者も出している。富士総合火力演習やその他の公開演習などを通じて高い練度を評価されることも多いが、他国の軍隊や民兵組織と交戦に至った経験はなく、実際の戦闘においての能力に関しては未知数である。
日米安全保障条約に基づき、在日米軍が駐留する。日本国内において唯一駐留している外国軍である(領土問題になっている竹島、北方領土は除く)。
2022年の世界平和度指数では世界第10位、世界平和度指数の3項目の一つである世界非軍事化ランキングでは11位、積極的平和度指数では12位となっているが、2022年12月には本格的な反撃能力が日本の国防に備わっていくことが決まった。また、台湾や韓国は安全保障上、極めて重要なパートナーとされている。
海外基地と諸外国と結ばれている地位協定の内容の問題
2011年には日本ジブチ地位協定に基づきアフリカのジブチ共和国に自衛隊の海外拠点が設立され駐留している。ジブチは元々フランスの植民地であった。しかし、日本ジブチ地位協定の内容を見ると当時の宗主国のフランスと締結されているような不平等条約となっており、自衛隊の過失犯がすべて無罪、ジブチ国内の法令も適用されない、自衛隊の基地内の情報や介入が日本政府の許可がないと出来ないなど日本政府がアフリカの主権を侵害していること、日本がジブチを植民地、占領地、属国のように扱っているなど一部の有権者から批判されている。日本ジブチ地位協定の問題は日本のメディアも一切報じていないため、日本国内の認知度は極めて低い。
自衛隊の装備及び活動
- 陸上自衛隊
- 海上自衛隊
- 航空自衛隊
要員・装備・予算
以下のような政策・傾向を継続している。
- 防衛費の絶対額では世界上位。しかし、国の経済力に対する防衛費の割合は、著しく低水準に抑えられている。
- 兵員・戦車・作戦機・軍艦の数などに見られる規模の小ささを、質の向上や同盟国(アメリカ)の能力によって補完する。
- 近年は財政状況の悪化により、仮想敵国や周辺諸国との協調的な軍縮でなく、単独で一方的・自主的に軍縮していたが2022年(令和4年)以降、防衛力の顕著な向上傾向がある。
2020年度の防衛に関連する予算の総額は、為替レートベースで491億(アメリカ)ドルであり世界で7番目。
1999年 - 2008年の10年間の軍事費の増減率は、中国が194%増、ロシアが173%増、韓国が51.5%増、日本が1.7%減であり、周辺諸国に対して相対的に低下している(これについてはアメリカからも懸念が示されている)。
このように GDP に対する割合の順位(世界の150位前後)に比べてドル換算した絶対額の順位(世界9位)の方が格段に高い理由として、以下が挙げられる。
- GDP そのものが大きく、国力が高い。
- 円が強い通貨である。
- 広大な領海・EEZと長大なシーレーンを抱える。
- 周囲を軍事大国に囲まれる。
- 規模が相対的に小さい故に、質の高い要員・装備を目指しているため、装備調達や訓練にコストがかかる傾向にある。
- 人件費が高く、予算の大きな部分を占める。
- 装備の国産化を指向するにもかかわらず、武器輸出三原則で輸出を自粛していたため、購入単価が下がらない。
- 要員
- 詳細は「自衛官」、「即応予備自衛官」、「予備自衛官」、「予備自衛官補」、「防衛省職員」、「自衛隊員」、「防衛書記官」、および「防衛部員」を参照
- 2020年における自衛官の定員(1000人未満を四捨五入)は、陸自が約15万人、海自が約4万5000人、空自が約4万7000人、統合幕僚監部などが4000人、合計24万7000人、実数は、陸自が約13万8000人、海自が約4万3000人、空自が約4万3000人、統合幕僚監部などが4000人、合計22万7000人である。特徴として、予備役に相当する予備自衛官などが約4万8000人であり、現役と比べての割合が非常に少ない(通常、予備役の数は現役の数を超える)。
- 防衛省の文官は、約2万1000人である。
- 徴兵制度は第二次大戦後の日本軍解散とともに廃止され、自衛隊にも徴兵制はない。
- 装備
- 詳細は「陸上自衛隊の装備品一覧」、「海上自衛隊の装備品一覧」、「航空自衛隊の装備品一覧」、および「武器輸出三原則」を参照
- 定評ある海外製の兵器や、それと同等ないしさらに高性能と見られる国産装備を多く保有する。高い基礎工業力を生かし、車両や艦船の多く、そして航空機の一部が独自開発である。ただし、それらの輸出は武器輸出三原則によって自粛してきた。また、他国の製品であってもライセンス生産を行うなど、可能な限り、国内で調達する傾向がある。これによって、自衛隊の調達する兵器の多くは海外の同等のものよりも高コストとなっているが、他国の意志に左右されず兵器本体および保守部品の生産ができ、兵器の製造ノウハウを蓄積することによって、保守・運用の効率を高め、ひいては稼働率を高く保つことを狙っている。
- 予算
- かつては防衛費をGNPの1%以下に抑える(防衛費1%枠)という閣議決定があり、現在は撤廃されているが、現在でもこの割合が基本となっている。
- 2013年を境に防衛費は増加に転じ2020年度は過去最大となった。
情勢・脅威
冷戦の時代、ソビエト連邦が最大の仮想敵国であり、自衛隊の部隊も北海道など北方に重点が置いて配置されていた。冷戦はソ連崩壊によって終結し、現在は軍拡を続ける中国、水際外交や国家犯罪を繰り返す北朝鮮の脅威の方が増している、これらへの対抗から部隊の西方への移転が進められている。防衛白書も、近年は中国・北朝鮮に対する脅威を主張している。しかし、根拠地の移転には広大な敷地や大規模な工事が必要なこともあり、あまり進んでいない。
- アメリカ以外との安全保障協力
- 2007年3月にオーストラリアとの間で安全保障協力に関する日豪共同宣言が、続けて2008年10月にインドとの間で日本国とインドとの間の安全保障協力に関する共同宣言が、それぞれ調印された。
- 核抑止
- 「日本の原子爆弾開発」および「非核三原則」も参照
- 日本はアメリカ軍の広島・長崎への原爆投下によって多くの犠牲者を出した経験や唯一の被爆国としての立場から、国民レベルでは核抑止論に対する抵抗・反発の感情が強い。しかし日本政府は「非核三原則」を標榜しつつも非核地帯宣言はせず、事実上の核抑止論の立場に立っており、アメリカの「核の傘」に頼っている。周辺諸国ではアメリカ、ロシア、中国が核兵器の大量保有国である上、北朝鮮が核兵器の開発の成功を発表している。それらに対し、独自の核保有もしくはアメリカとのニュークリア・シェアリングを検討すべきという民間レベルの議論もあるものの、政府は核保有及び共有を否定している。
- シーレーン防衛
- 日本は、第二次大戦中に連合軍の通商破壊戦によってシーレーンを遮断され、物資が極度に窮乏する状況に追い込まれた。さらに1980年代より日本の海洋国家論の高まりと同時に、軍事のみならず、経済・食糧・エネルギー・環境などの総合安全保障の概念が認識されるようになった。漁業の安全や世界中との貿易での立国を維持する上でシーレーンの防衛(海戦や通商破壊などの危険回避)が重要であるものの、グローバルに広がるシーレーンの全ての防衛を独力で完遂することは、現実的にも困難であり、憲法第9条の制約もある。よって、同じく海洋国家として「海洋の自由」を標榜し、グローバルに軍事展開するアメリカと協力することで、コストを抑制しての有効な海洋の安全を図っている。一方で、マラッカ海峡などの海賊やテロも、東アジア全域のみならず、グローバルな共通の危機となり、非対称戦争に対応した国際的な警察力の強化、紛争予防も重要な課題となっている。
- 中華人民共和国
- 2001年から一貫して国防費の成長という急速な軍拡を続け、軍事力の近代化を進めている。その実態や将来像、意思決定の過程が不透明であることが脅威である上に、文民統制が不十分で軍部の暴発すら心配される。日本とは海を挟んで接しているが、中国は外洋艦隊の建設によって海洋権益を拡張する姿勢を強めており、周辺国と係争や紛争を行っている。中でも台湾の併合(台湾回収)は国是となっており、独立の動きがあれば武力侵攻することを示唆している。しかも中国の主張によれば台湾には沖縄県尖閣諸島が含まれており、中国の領有を主張している。さらには、中国の論壇にみられる沖縄県の独立もしくは併合(琉球回収)の主張に対して、一部の軍人が同調する発言すらみられる。今後は南西諸島ないしは太平洋北西部(フィリピン海)に中国人民解放軍海軍が強い影響力を及ぼすことが懸念される。このような情勢の下で日本は、中国との対話を続ける一方で、中国の軍事力に対抗する抑止力を整備し、日米安全保障態勢の維持・強化を図る。
Jアラート(防衛面)
Jアラートは防災面と防衛面があり、防衛面として国民保護のために武力攻撃事態などが発生した時に緊急情報を瞬時に伝達する。
自衛隊特殊部隊
自衛隊の特殊部隊としては陸上自衛隊の特殊作戦群(SOG)や海上自衛隊の特別警備隊(SBU)がある。特別警備隊は自衛隊初の特殊部隊として2001年に創設された。
- 特殊作戦群
- 環太平洋合同演習に参加する特別警備隊(SBU)
宇宙作戦群
防衛を目的とした宇宙状況監視の任務を行うため、2022年に航空自衛隊の部隊として創設された。
諜報・情報機関
日本の情報機関としては、内閣官房内閣情報調査室、警察庁警備局、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、法務省公安調査庁などが設立されている。各機関によって得られた機密情報やデータは内閣情報会議・合同情報会議の開催時に秘密裏に共有される。
佐藤優の分析によると、日本の諜報能力は予想を上回る能力を持っており、実際に他国の中枢に食い込んだ日本の外交官が何人もいるだけでなく、警察庁のカウンターインテリジェンス能力は世界最高水準であり、サイバー・インテリジェンスにおいても自衛隊は高い能力を持っているという。また、有事の際には国家安全保障会議設置法に基づき、国家安全保障に関する重要事項および重大緊急事態への対処を審議する目的で国家安全保障会議(NSC)が開催される。
経済・産業
制度・規模・位置
日本は、修正資本主義・市場経済を採用する工業国であり、2023年時点で、国内総生産(GDP)がUSドル時価換算の為替レートで世界第4位(購買力平価(PPP) で世界第4位)に位置する経済大国である。一人当たりGDPは2018年時点で、USドル時価換算で世界第26位、購買力平価(PPP)で世界第31位である。
通貨である円(¥, yen, JPY)は、高い信認を有する国際通貨の一つである。日本人は、その信認の高さから現金決済や貯蓄を好む傾向がある。1964年に経済協力開発機構(OECD)に加盟し、サミット(主要国首脳会議・当時のG5・後にG7)にも1975年の第1回から参加している。
経済史
明治以来、西欧型の民法典を導入し、財産権を基礎とした資本主義を経済の基本とする。第二次世界大戦時の戦時体制を経験した後、物価統制令や傾斜生産方式、外貨準備に伴う割当制など、通産省や大蔵省が主導する護送船団方式により、製造業を軸に高度経済成長を果たした。1968年、国民総生産(GNP)ベースでアメリカ合衆国に次いで世界第2位の規模の資本主義国となった。他の資本主義諸国と比較して失業率も低く、「最も成功した社会主義国家」と言われた時代もあった。1974年のオイルショックを機に安定成長期に入り、自動車、電化製品、コンピュータなどの軽薄短小産業(ハイテク産業)が急成長する産業構造の転換が進んだ。円高が進む中、比較劣位の産業のいくつかは、競争力を喪失して衰退し、自動車産業など、比較優位で競争力の高い輸出産業は、円高の波を乗り切り、基幹産業として世界でも最高水準の競争力を持つに至った。しかし、製造業では生産拠点が海外に流出する空洞化が進行している。1990年代前半にバブル景気が崩壊したことによる不況で、「失われた20年」と呼ばれる長期不況に苦しんだ。日本の経済成長率は、高度成長期はもちろん、安定成長期にも欧米を上回っていたが、1990年代以降は欧米や他の東アジア諸国を下回っている(1991年から2018年までの日本の平均経済成長率は1.0%)。日本は継続的にアメリカ国債を購入し、2021年8月時点で1兆3198億ドル分を保有し世界第1位の保有量となっている。世界貿易機関(WTO)によると、2020年から新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国際貿易が干上がり、さらに2022年には感染拡大は収束に向かっているものの、ウクライナ侵攻などを発端とする急激な円安が進行し、慢性的な貿易赤字を抱え込んでしまうこととなり、1930年代の世界恐慌のような深刻な崩壊につながる可能性があるという。日本を含む多くの国は、すでに持続不可能なほどの高額の債務を抱えている。
失業率は世界恐慌以来の水準に達し、これに対して日本は企業の中国からの撤退を支援するために出資することになる。パンデミックによってサプライチェーンが混乱し続ける中、日本の景気刺激策では、企業が製造拠点を国内または他国に移すのを支援するために22億ドルを準備した。
- 所得[要曖昧さ回避]
- 高度経済成長を遂げた日本では、「国民総中流」と呼ばれる貧困層が存在しないかのような意識が浸透していたが、近年、貧困層の存在が広く知られ、貧富の差が拡大しているという意識が広まった。経済協力開発機構(OECD)の統計によれば、2015年から2018年の貧困率は、OECD加盟国(37か国のうち、貧困率を統計する35か国)の内の第10位、15.7%である。この原因としては、高齢化社会による年金生活者や賃金の低い非正規雇用の増加が挙げられる。
- 雇用
- 戦後の日本企業では1980年代までは長期継続雇用が主流だったので、社会構造の変化による衰退産業・衰退企業や、経営破たん企業による、解雇や人員削減以外には、失業が社会問題化することは例外であり、経済成長率が高く、成長産業・成長企業による求人が豊富だったので、失業者も再就職による職業や生活の立て直しは困難ではなかった。1990年代以後のグローバル化の進行、GDPのゼロ成長、デフレ、非正規雇用の増大により、不安定雇用、低所得、貧富の格差の拡大、失業、再就職の困難などが社会問題化した。また、2008年以降の世界金融危機によって完全失業率は戦後最悪水準の5.0%にまで悪化していた。
- アベノミクス以降は働き方改革が進められ、失業率は急速に改善しOECD最小となり、労働参加率も過去最高レベルに上昇し、完全雇用が達成された。不本意非正規雇用労働も減少傾向にある。
- 日本の労働者には労働基本権が憲法上認められている。ただし、公務員は一部留保されているケースがある。労働基本権を行使するために労働組合が様々な職場や地域で組織されている。また、専門職に従事するものは職能団体を結成している。
- 債務
- 1990年代以降における財政政策により、国債は1000兆円を超える。国庫短期証券を合わせると約1100兆円である。両方を合わせた海外債権者の割合は12.7%である。
- 政府
- OECD調査によれば、日本は人口に占める公務員の比率はOECD中で最小であり(2019年)、経済に占める公営企業の規模も小さい。なお、GDPあたりの租税負担率においては、日本は28.6%であり、OECD諸国平均以下である(2011年)。
農林水産業
- 農業
- 他国と比較して生産量が多い農産物は、生糸、キャベツ、イネ(米)、サツマイモ、タロイモ(主にサトイモ)、茶、ホップなどである。
- 米は、日本人の主食であるが、他に米を主食とする諸国も多いため、780万トン世界5番目の生産量に止まる。
- キャベツ、タロイモ栽培は、世界第5位である。
- 畜産業(畜産)では、養鶏が盛んであり、鶏卵の採取量は、世界第3位である。
- 林業
- 1970年以降の木材の輸入自由化により競争力を喪失し、一部のブランド木材の産地を除き、既に壊滅状態に追い込まれている。
- 水産業・漁業
- 漁獲高は、2022年時点で485万8600トンである。漁獲量制限などの措置は行っているが漁師の反発から徹底しておらず乱獲の結果漁獲枠オーバー、漁業資源の枯渇が相次いでいる。西太平洋など公海を対象とした日本主導の漁獲量制限には当事者が守っていない、日本の割当の割合が多いと批判されている。
- 貿易(輸入・輸出)
- 食料自給率は世界各地からの輸入に頼るため約40%と低い。近年、食の安全への関心の高まりから国産ブランドの需要が回復し、一部の農産物は、高級食材として輸出される。また、中国での魚介類を消費する習慣の広がりにより、水産物の輸出が急増している。
- 従事者
- 高齢化が進み、将来の人材の育成が課題とされている。
鉱工業
- 鉱業
- 地下資源は、全体としての産出量が概して少ないものの、埋蔵される鉱物の種類が非常に豊富で、俗に「鉱物の博物館」と呼ばれる。鉱業の中心を占めるのは、世界第5位(2001年〈平成13年〉)の320万トンを産出する硫黄、そして、世界第2位(2005年〈平成17年〉)の6500トンを産出するヨウ素である。その他、産出量では、天然ガスの101千兆ジュールや石炭の302万トンが目立つ。少量ながら、原油をも産出する(約37万キロリットル・2001年時点)。金属資源は、亜鉛の4万3000トンを筆頭に、鉛、銅を産出する。この3金属は、いずれも非鉄金属として非常に重要である。しかし、いずれも国内消費量の4%、6.8%、0.02%しか賄えない。かつて大量に産出していた金や銀も採掘されるが、現在いずれも世界的なシェアが0.5%以下(金8.6トン・銀81トン)である。国内需要を賄うだけの産出量がある地下資源は、石灰岩(セメント原料)、珪石(水晶/ガラス・レンズ・光ファイバー・建築材料の原料)など、ごく僅かである。
- 現在、あまり資源として活用されていないが、メタンハイドレートが近海に多く眠ることが分かっている。これは、採掘の手法が未だ確立していないが、将来的に石油が枯渇した際における新エネルギーとして注目を浴びている。近年では、都市鉱山という考え方も普及し、日本に蓄積される貴金属やレアメタルの埋蔵量が世界有数であるとの研究があり、廃棄される家電や電子機器などから、これらをリサイクルする事業活動も広がりを見せる。
- 工業
- 基幹産業であり、特に素材[要曖昧さ回避]・金属加工・造船・土木工学・機械工学・電気工学・電子工学などの製造業は、世界最高水準の技術を維持する。原油・ゴム・鉄鉱石などの原材料を輸入して自動車、電気製品、電子機器、電子部品、化学製品などの工業製品を輸出する加工貿易が特徴であるが、近年、大韓民国や中華民国からの電子部品や電子機器などの半製品の輸入も増大し、輸出品、輸入品、共に電子機器が最大である。
- トヨタ自動車や日産自動車、本田技研工業などを筆頭に世界有数の自動車産業を擁し、世界第3位の新車販売、世界第3位の保有台数を記録する。
- 「日本車」も参照
- 一方、航空宇宙産業(航空宇宙工学)・医薬品化学・バイオテクノロジー・情報技術などの新しい産業の分野においては、最高水準と言えず、また、全体としての製造業は、中国や韓国、台湾などの新興国の成長に押され、1980年代をピークに収益率も下落を続ける。そのため、ナノテクノロジーや民生用のロボット工学、生物工学、金融工学、情報技術などに活路を見出そうとしている。
- 現在の日本工業の中核は上記のような重工業だが、1870年代以降に明治政府が進めた工業化政策の中心は繊維工業だった。それ自体も重要な輸出品だった生糸を利用した絹織物、次いで外国からの輸入綿花を利用した綿織物は日本の輸出を支えたが、1960年代以降は東南アジア諸国や中国での安価な大量生産に押されて構造不況に陥った。現在では国内市場の多くを輸入品に譲っているが、「アパレル産業」とも呼ばれるようになった同業界は高い付加価値がつく伝統工芸品の生産などにも活路も見いだしている。
通商・金融
2019年時点の主要な輸出相手国・地域は、1位:アメリカ(19.8%)、2位:中国(19.1%)、3位:韓国(6.6%)、4位:台湾(6.1%)、5位:香港(4.8%)、6位:タイ(4.3%)、7位:ドイツ(2.9%)、8位:シンガポール(2.9%)、9位:ベトナム(2.3%)、10位:オーストラリア(2.1%)であり、アジアへの輸出だけで約55%を占める。
輸入相手国・地域は、1位:中国(21.3%)、2位:アメリカ(15.4%)、3位:オーストラリア(6.3%)、4位:韓国(4.1%)、5位:サウジアラビア(3.8%)、6位:台湾(3.7%)、7位:アラブ首長国連邦(3.6%)、8位:タイ(3.5%)、9位:ドイツ(3.5%)、10位:ベトナム(3.1%)であり、アジアだけで約49%を占める。
(貿易収支)は、黒字(2018年に約3兆円)である。主要な輸出品は、金額ベースで自動車(15.6%)、半導体など電子部品(5.2%)、自動車の部品(4.7%)、鉄鋼(4.0%)、原動機(3.5%)、半導体製造装置(3.2%)、プラスチック(3.2%)、科学光学機器(2.8%)、有機化合物(2.5%)、電気回路などの機器(2.4%)の順である。主な輸入品は、原粗油(10.1%)、LNG(5.5%)、衣類及び同付属品(4.1%)、医薬品(3.9%)、通信機[要曖昧さ回避](3.6%)、半導体など電子部品(3.3%)、石炭(3.2%)、周辺機器を含む電算機器(2.8%)科学光学機器(2.3%)、非鉄金属(2.2%)である。
日本の産業は、発展の過程で間接金融による資金調達を広く用いたため、銀行が経済に与える影響が大きい。銀行は、融資で土地資産を担保に取ることが多かったため、土地が経済に与える影響も大きい。しかし、バブル景気の崩壊後は、直接金融や市場型間接金融への転換が進められている。金融機関では、バブル時期の焦げ付き、いわゆる不良債権問題が長引き、1990年代初頭に金融危機を引き起こした。しかし、政府主導で大合併[要曖昧さ回避]が行われて(公的資金を注入)しての強引な解決が図られ、その後は、超低金利政策の下、高収益を上げるようになった。日本銀行は、2006年にゼロ金利を解除したが、未だ金利の水準が低く推移し、個人消費の伸びも見られないなど、経済回復が明確でなく、2007年現在、それ以上の金利引き上げに至っていない。
また、継続的な経常黒字により、世界最大の債権国であり、世界経済からの配当や利子の受け取りが次第に増大している。2017年末時点で、日本の対外資産残高は1012兆4310億円、対外負債残高は683兆9840億円で、差し引き対外純資産残高は27年連続世界最大の328兆4470億円である。
日本としては世界で3番目の計上黒字国であるが、日本政府は歳入の35.9%が公債で賄われている状況である(2022年度補正後予算)。しかしながら、日本国債の92.3%が国内保有であり、日本国内の資産となっている。
インフラ
民営化企業
国営から民営となった代表の企業は以下の通り。
- 日本電信電話
- JRグループ
- 日本郵政
電気・水道・ガス
水道は自治体が、電気とガスはそれぞれ電力会社、ガス会社が供給する。
教育・科学・技術
2022年1月31日、オーストラリア・シドニーに本部を置き、アメリカ・ニューヨーク、メキシコ・メキシコシティ、イギリス・オックスフォードに支部を持つ経済平和研究所は、世界各国の人的資本の水準を、研究開発従事者の割合、若年層のニート率の低さ、健康寿命などを考慮して評価し、日本は世界一の人的資本であるとお墨付きを与えられた。
根拠法として教育基本法が制定されており、文部科学省が所管している。1990年時点の識字率は、99.8%(男99.9%、女99.7%)。
2020年時点で教育にかけるGDPの割合は3.4%であり世界で142番目である。
教育段階
日本国籍を有する6歳から15歳までの9年間(学齢)を対象とする義務教育が実施される。一般には、小学校6年間、中学校3年間。特別支援学校については、小学部6年間、中学部3年間。中等教育学校については、前期課程3年間。なお、中学校を卒業した内の約96%が高等学校に進学する。
国民の25-64歳人口について、その53%がISCED-3レベル以上の中等教育を修了している。なお第3期の教育の修了者については、タイプBが20%、タイプAが26%であった。
生涯学習・教育訓練
科学技術
世界的にも多くの分野で高水準のテクノロジーを有する。1990年代から2000年代前半にかけて、学術論文数(分数カウント)でアメリカに次ぐ世界2位、国際特許出願件数では世界一であった。2000-15年におけるノーベル賞受賞数も、アメリカに次ぐものだった。しかし、1990年代より経済成長の減速とともに研究開発費の増加は鈍化し、2000年代前半には論文数こそ増加しても、世界シェアは低下し始めた。リーマンショック後の2009年から研究開発費が減少・横ばいになると、研究力の低下が露わになる。2017-19年の平均論文数は世界4位に後退した。より顕著なのが質を示す「Top10パーセント補正論文数」であり、世界10位まで下がっている。特許出願件数でも2012年に中国に1位の座を明け渡すと、翌年にはアメリカにも抜かれ3位になった。ただし、パテントファミリー数(2カ国以上への特許出願数)は10年以上1位を保っている(2014-16年データ)。
長らく横ばいとなっている研究開発費だが、対GDP比率で見ると3.43%と世界3位の高水準にある(2016年、OECE基準は3.15%)。ただし90-08年は1位であったので、減少はしている。研究開発費の流れにおいて、日本は官民で分かれており、多くの比率を占める企業は企業間で流れ、政府の負担は公的機関と大学に向かっている。大学分は私大が多くを占める。主要他国においても企業が最多であるが、政府や外国の負担が一定量流れている。また、大学や国立研究開発法人に対する運営交付金削減と競争資金増加のセットによる「選択と集中」は失策だとする声も多い。
人材の縮小は明らかな課題で、大学部門の研究者数が5年前から1.5%減、公的機関部門の研究者数がわずか2.5%増にとどまっている。博士号取得者についても2006年をピークに減少している。この理由については、企業研究者に占める博士号取得者の割合が各国と比較して低いことや、任期なしポストの減少・任期付ポストの増加による就労の難しさ、さらに学術機関の法人化と運営費交付金削減により発生した非正規職員の雇止め問題などが指摘される。
環境・エネルギーに関連する技術
世界的にも高水準の技術を有する。原子力発電システムを独自開発する技術を持つ国のひとつ。世界的に最も高水準の二次電池技術を有し、ハイブリッドカーや高性能な携帯情報機器の基盤となっている。バイオ燃料や燃料電池、太陽光発電など新エネルギーの研究も盛んだが、普及面で言えば諸外国に立ち遅れている。
情報技術
日本企業は半導体デバイスの製造装置で高いシェアを有する。かつてはハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリや液晶ディスプレイの生産で栄華を極めたが韓国、台湾、中国が追い上げ凋落した。光ファイバーや結晶引上技術など素材に関する研究に厚みがあり、その基礎技術は、依然として優位である。ソフトウェア分野では、業務に関するシステムエンジニアや組み込みシステムの技術者の人数が特に多い。日本製ソフトウェアの世界的シェアは低く、オープンソースソフトウェアへの貢献も少ない。世界的に次の産業革命を引き起こすと期待されている人工知能技術に関して、日本は利用している企業の割合が14%。しかし、フランスは11%、デンマークは6%、スウェーデンは5%、カナダは4%とさらに少ない。なお、日本のデータは従業員100人以上の企業を対象としている。 また、計算機科学の基礎教育や情報技術のサポートを目的として情報処理推進機構が設立されている。
原材料・ナノテクノロジー
特殊鋼、合成繊維、セラミックスなど幅広い分野で世界的にも高水準の技術を有している。特に複合材料を得意とし、自動車産業・造船・航空宇宙・防衛産業などを支える。
先端計測技術
磁力や近接場マイクロ波、中性子の利用技術、複合計測技術などは、高い水準にあるが、イオンやレーザー利用技術などは、低水準である。
ライフサイエンス(生命科学)
アメリカ合衆国、そしてヨーロッパ全体に次ぐ3番手の位置にある。幹細胞に関連する技術についても人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術で世界を先行するが、幹細胞に関連する技術の全体で言えば、特許の出願数の半分以上がアメリカ合衆国で、以下、EU、日本と続く。
宇宙開発
1970年に糸川英夫率いる東京大学宇宙航空研究所(現在の宇宙科学研究所の前身)が日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げ、日本はソ米仏に続き世界で4番目に衛星を自力で打ち上げた国となった。以来世界有数の衛星打ち上げ国であり、現在ではH-IIA・H-IIBロケットやM-Vロケットなどの純国産化に成功したロケットの打ち上げがされている。2013年夏にはM-Vロケットの後継機となる新型の固体ロケットイプシロンロケットの打ち上げられた。近年では2010年に小惑星探査機はやぶさが世界初となる月以外の天体からのサンプルリターンに成功し国内外から多くの注目を集めた。自国による有人宇宙飛行はまだ実現しておらず諸外国には立ち遅れている一方、毛利衛宇宙飛行士が1992年にスペースシャトルで宇宙に旅立って以来8名の宇宙飛行士が宇宙へ飛んでいる。国際宇宙ステーション計画には日本がアジアで唯一参加しており、独自の研究棟を保有している。宇宙ステーション補給機の開発・運用により宇宙ステーションへの物資運送の一翼を担っており、宇宙開発分野における国際貢献が進んでいる。
特許
日本は、技術や科学において国際的に重要な位置を占めている。日本の研究者は、実証的な科学の創造に貢献してきた。特に、さまざまな産業の経済的パフォーマンスや知識の実用化は、技術者の創造的な仕事によって促進されてきた。2016年、日本はPCTに基づく全世界の全特許出願数で世界第2位となった。
昭和基地
日本の南極観測基地。天体・気象・地球科学・生物学の観測を行う施設である。
交通
古くから北太平洋および北東アジアの交通の要所として海運や航空において重要な位置を占め、世界的に有数の規模の(海運会社)や航空会社が存在し、各国を結ぶ。また、アジアにおいて最も早く鉄道を導入した国の一つであり、世界初の高速鉄道である新幹線を導入し、私鉄による鉄道網が全国を網羅している。また、高度経済成長以降、モータリゼーションが進み、道路網・高速自動車専用道路網が発達している。2010年代以降、高度経済成長期に作られたインフラが老朽化するなど問題も起きている。
- 鉄道
- 詳細は「日本の鉄道」を参照
- 明治維新以降、1872年10月14日の新橋駅(のちの汐留駅) - 横浜駅間の開通を皮切りに、国策として全国に鉄道網が急速に敷設され、日本国有鉄道(国鉄)や他の数多くの私鉄へと発展した。1942年には世界初の海底鉄道トンネルである関門鉄道トンネルが開通した。1970年代までに私鉄、国鉄ともに多くの路線が電化され、世界に例を見ない規模で分刻み・秒単位のスケジュールで運行され、その規模、技術、運営ノウハウ共に世界最高水準と言われる。
- 1964年に日本国有鉄道(現在のJR)によって導入された新幹線は、都市間を結ぶ世界初の高速鉄道として空路に並ぶ地位を築いた。
- 戦後に東海道本線の輸送がひっ迫した事が東海道新幹線計画の契機となった。新幹線は秒単位という世界に類を見ない定時性で運行され、2016年度は年間13万本が運行して、1列車あたりの平均遅延時間は24秒だった。これは、地震や豪雨、大雪などの自然災害による遅延も含めたもので、平常時は秒単位での定時運行が実現されている。在来線と規格が異なるので全国を網羅はしていないが、北海道・北陸・九州の各地で整備が続く。
- 東海道新幹線
- 山陽新幹線
- 東北新幹線
- 九州新幹線
- 北海道新幹線
- 上越新幹線
- 北陸新幹線
- 西九州新幹線
- 山形新幹線(ミニ新幹線)
- 秋田新幹線(ミニ新幹線)
- (建設中)中央新幹線
- 都市圏では、これら普通鉄道に地下鉄やモノレールなどが加わる。更に、近年の環境問題の意識から路面電車が見直され、富山県などでライトレールが導入されている。
- 2003年8月の沖縄都市モノレール線(ゆいレール)の開通によって全ての都道府県に広がり、2004年の時点での全国における総全長は、23,577kmである。
- その一方で2016年にはJR留萌本線の留萌駅 - 増毛駅間が廃線になるなど地方の鉄道が人口減少に伴い採算が取れなくなり、消滅し始めている。
- 新幹線は世界初の高速鉄道であり、日本全国を結ぶJRの高速幹線鉄道である。(東海道新幹線0系)
-
- 山手線をはじめとした首都圏の在来線。分刻み・秒単位のスケジュールで運行される。
- 環境問題を考慮し、富山県で導入されたライトレール車両(TLR0600形)
- 航空
- 「日本の航空機産業」も参照
- 戦前にはごく限られた利用しかなかった日本の航空・空運業は敗戦直後に占領軍[要曖昧さ回避]が出した航空活動禁止指令により完全に機能を停止したが、独立を回復して航空活動も復活した1950年代以降、日本航空(JAL)が日本のフラッグ・キャリアとして国内外に路線を広げ、南極を除く全大陸へ就航し、現在もアジアのみならず世界でも有数の規模を誇る航空会社として知られていたが、2010年、会社更生法の適用を受けた。また、1980年代まで国内線のみを運航した全日本空輸 (ANA) は現在、アジア圏を中心に日本航空(JAL)と共に欧米へ国際線を運航する。
- 1990年代以降の規制緩和を受け、スカイマークや北海道国際航空(エア・ドゥ)、スカイネットアジア航空などが新規参入[要曖昧さ回避]し、国内航空運賃の引き下げに寄与した。
- 歴代の国土開発計画が「高速交通サービス空白地帯の解消」を重要課題の一つに掲げたこともあり、地方を中心に空港インフラが充実し、国内に98もの空港を有する。東京国際空港(羽田空港)と北海道(札幌都市圏)の新千歳空港、東京と福岡空港を結ぶ2路線は年間800万人を輸送する世界屈指の大幹線に成長した。
- 羽田空港は2014年、スカイトラックスが実施した「Global Airport Ranking 2014」において日本の空港として初めて世界最高水準の5つ星を獲得した。2018年3月、スカイトラックスは、世界の空港ランキングでは2017年の第2位から順位を落として第3位として選出したものの、世界で最も清潔な空港では第1位として選出した。
- 日本最大の国際空港である成田国際空港は、1978年5月20日に"新東京国際空港"として開港。貿易総額日本第1位の港でもあり、国際航空運輸の重要拠点となっている。
- 鹿児島・沖縄両県の南西諸島をはじめとした離島に整備された空港は輸送量は小さいが、住民の日常生活を支えている。一方、騒音問題や用地確保などによって都市部における空港インフラは整備途上で慢性的な容量不足であり、航空網充実の足かせとなっている。また、一部の地方空港では採算面の課題も浮上している。
- 世界有数の航空網を整備した空運業に対し、戦後の航空活動禁止令で解体された航空機製造はその国内需要を全く満たしていない。1964年に正式出荷を始めたYS-11は東京オリンピックでオリンピック聖火を輸送したが1973年に製造を中止し、2006年に民間航空路線から完全に撤退した。YS-11開発の中核だった三菱重工業は2015年に新たな国産旅客機のMitsubishi SpaceJetを初飛行させ、リージョナルジェットへの再参入を目指したが、2020年に開発態勢の大幅縮小が発表された。一方、本田技研工業はアメリカの子会社工場でHondaJetの開発に成功し、2016年から日本国外での販売を開始。新規参入でありながら好調な販売実績を記録している。
-
- 全日本空輸
- スカイマーク
- 羽田空港は日本最大の空港であり、2018年には乗降客数で世界第4位となった。
- Mitsubishi SpaceJetは、過去に最新鋭の国産小型旅客機として開発が進められていたリージョナルジェットである。(三菱航空機)
- 道路
- 詳細は「日本の道路」を参照
- 自動車は左側通行である。高度経済成長以降、自動車産業の保護を目的に、国内における(陸運)の主力をトラックにする政策が採用されたことなどから、全国的に道路・高速道路、大都市部では都市高速の整備が進められた。主な高速道路としては東北自動車道、東名高速道路、名神高速道路、山陽自動車道、中国自動車道、関門自動車道(関門橋)、九州自動車道などがあり、ヒトとモノの移動を支えるライフラインとして日本全国に張り巡らされている。しかし、近年、都市部を中心に慢性化した渋滞や通行料の高さ、駐車スペース確保の困難さ、環境問題への対策として、鉄道や航空機などの公共輸送、船舶輸送などが見直されている。また、高速道路の一部はアジアハイウェイ1号線(AH1)に指定されている。
- 2016年4月時点での舗装された道路の全長は、1,278,183.5 km である。
- 海運
- 詳細は「(海運#日本)」を参照
- 四方を海に囲まれ、日本には欠かせない運送手段であり、沿岸部に工業地域・工業地帯や人口が集中する理由でもある。2020年現在、日本には994の港湾があり、中でも重要度の高い港湾は国際戦略港湾(5港)国際拠点港湾(18港)に指定されている。また漁港は2790あり、中でも漁業の中心地かつ漁業の振興に欠かすことの出来ない漁港13港は特定第3種漁港に指定されている。日本郵船や商船三井などの世界有数の規模を持つ船会社が19世紀の後半から各国との間に貨物船や旅客船を運航してきた。現在、中東や東南アジアから石油や天然ガスなどの資源が輸入され、ヨーロッパやアメリカ合衆国へ電化製品や自動車などが輸出される。さらに、大小の船会社によって多数の貨客フェリーや高速船が運航される。また、造船分野においても、その技術力の高さから世界有数の規模を保つ。
国民
民族
大和民族の成立
日本列島の住民のうち、殆どを構成しているのが大和民族である。大和民族の起源は、縄文時代以前から定住していた「縄文人」と、ユーラシア大陸から弥生時代以降に複数回にわたって移住してきた「弥生人」が融合して形成されたものである。移住してきた経路は時代によって異なる。
最初に主流になったのは、沖縄・南九州・北東北地方に多い縄文人である。この時期、日本海経路で小規模ながら交易がおこなわれていたことが出土品から証明されている。その後、稲作文化とともに大陸からやってきた人々が、北九州から中部地方に多い弥生人の基盤となった。日本列島に移住してきた経路や、規模、時期の詳細については、定かでない部分が多く、諸説ある。
縄文人と弥生人では身体的特徴に違いがある。縄文人は古モンゴロイドに属し、目が丸く大きい、彫りが深い、骨太で筋肉質、歯が短い、髪が癖毛、ヒゲと体毛が濃い、耳垢が湿っている、などの特徴を持つ場合が多い。弥生人は新モンゴロイドに属し、目が細く小さい、彫りが浅い、長身ですらっとした体格、歯が長い、髪が直毛、ヒゲと体毛が薄い、耳垢が乾いている、などの特徴を持つ場合が多い。
島国という地理的な特性から、その後も日本には小規模な移住(漂着や密航など)が何度も繰り返された。また、近代までの日本は鎖国時代を除いて移民・難民の受け入れには比較的寛容でもあった。16世紀中盤から17世紀中盤にかけては衰亡する明から逃れてきた難民を多数受け入れ、開国後の19世紀後半以降にも清、李氏朝鮮、ロシア帝国からの移民・難民を大量に受け入れていった。
こうして縄文人、弥生人(大陸人)、オーストロネシア人(ポリネシア人、マレー人など)といった複数の民族が互いに混血し、文化を取り込みながら発展したと推測される。それらの中から最大勢力として発展してきたのが自称として「和人」、あるいは近代的な民族意識の下で「大和民族」あるいは「日本民族」である。
その他の民族
古代の日本は多民族国家であったと考えられている。国の史書からも、大和民族のほかに、南九州には熊襲(隼人)、中九州には肥人、近畿地方と関東地方には国栖、関東地方と東北地方には蝦夷などがいた事が窺える。しかしこれらの部族・民族が具体的にどの人種・民族集団に属するかは緒論あり確定的定説はない。
古墳時代、本州・四国・北部九州の各地方のうち、瀬戸内海の周辺地域を主とする人々は、大和盆地を本拠地とするヤマト王権のもとに統一され、倭人(和人)としての文化を形成する。飛鳥時代の律令国家、日本の国号と大和朝廷の確立に伴い、和人の文化的一体性がより糾合された。その後、朝廷の支配下に入るのが遅れた北東北(蝦夷)、南九州(熊襲・隼人)の人々を同化しながら文化圏の拡大を続け、平安時代までに本州・四国・九州の全域が和人の生活範囲となった。
江戸時代には、薩摩藩による琉球王国への侵攻、松前藩のアイヌ支配の確立により、北海道を含む日本列島と南西諸島の全域が和人の勢力圏に置かれた。これらの辺境地域は、弥生時代以降連綿として、本土との間で物的・人的交流が盛んに維持されてきた一方で、政治的枠組みとしては、「蝦夷地」と総称された現在の北海道・千島列島・樺太南部が日本に編入されたのは実に明治2年(1869年)の事であり、それまでは南部(渡島)の和人とそれ以外にアイヌ民族が広く居住する地であった所、明治以降の開拓で急速に和人との同化が進んだ。また、琉球侵攻により保護国的立場に置かれながらも、独自の国家の体裁を保ち続けていた琉球王国のかつての版図(南西諸島のうち奄美群島、沖縄諸島および先島諸島)は、1879年(明治12年)の琉球処分により名実ともに日本に編入または併合。奄美群島は鹿児島県に編入、沖縄・先島諸島には沖縄県が設置された。これ以降、急速に日本の近代化政策に組み込まれていくことになる。
現在、アイヌ語を第一母語とする人々は極めて少ないが、アイヌ文化振興法が制定されてアイヌ文化の保存・再興が図られている。なお、アイヌと共に南樺太にいたウィルタやニヴフの多くは、ソビエトの侵攻・占領の後、北海道や本州へ移住した。
また、小笠原諸島には、19世紀初頭にハワイからの移民団が史上初めて定住し、欧米系島民(ヨーロッパ系アメリカ人やハワイ人)による小規模なコロニーが形成されたが、明治維新の後に日本による領有が確定すると順次、彼らも日本国籍を取得して日本人社会に溶け込んでいった。
なお、アイヌ民族は、和人との交流の中で、中世から近世にかけて成立したとされるが、成立の詳細な過程については不明な点が多い(詳細はアイヌの項目を参照のこと)。
外国人
2023年末時点で、341万992人の外国人が居住している。国内の外国人としては中国人がもっとも多く、ベトナム人、韓国人、フィリピン人と続く。2020年国勢調査の時点で、総人口に占める外国人の割合は 2.2%であった。
中国籍の半分は永住者及び定住者であり定住者は中国残留邦人の家族である。
韓国籍、朝鮮籍、および台湾籍については、戦前の旧・日本領の出身者、および両親のうちいずれか(あるいは両方)がその出身である者の子孫が多く韓国籍、朝鮮籍に関しては、戦後になってから朝鮮戦争や貧困・圧政から逃れて渡来してきた難民が一部含まれている。
1895年に台湾を、1910年に朝鮮半島を併合後、第二次世界大戦敗戦まで日本の一部として、台湾人、朝鮮人[要曖昧さ回避]にも日本国籍を与えていたため、これらの地域にルーツを持つ人々が多く、順次、経済的に豊かであった本土に移住してきた者も少なくない。明治の日本は西欧人の居住や移動、営業に関しては領事裁判権を認める代わりとして居留地制による制限を設けていたが、朝鮮人や中国人については制限がなく、日本国内の各地での雑居が認められていた。1899年に西欧各国との領事裁判権の撤廃が成り、居留地制度は一律に廃止され(内地雑居)たが、中国(清・中華民国:支那)人を含む外国人労働者には居住・就労の制限が設けられた(勅令第352号)。これはおもに華人(支那人)を規制する目的のもので朝鮮人には実質的に適用されなかったとされる。台湾人もまた併合後は帝国臣民であり居住に制限はなかったが、台湾・朝鮮とも戸籍(台湾戸籍、朝鮮戸籍)の離脱は認められず、あくまで内地での寄留であった。台湾人の移住は戦前は少なく、日本在住の台湾人は総じて学歴があり、華人(支那人)や朝鮮人とは異なり、オランダや明遺臣、清朝の植民地支配の歴史的経験があり、民族的な屈託がなく日本語(や外国語)に通暁しよく働くので厚遇された。華人(支那人)は三刀(料理人・理髪師・仕立屋)が、朝鮮人は労働者が中心で、移住規模も多かった。
朝鮮人労働者の日本内地への移動は日韓併合の1910年に2600人であった移動者が1923年には13万人あまりと増加傾向であり、1919年4月の「朝鮮人の旅行取締に関する件」(警務総覧部第3号)により朝鮮人の日本渡航への直接規制(旅行証明書制度)に転換し、移動制限を口実に実質的な居住規制に方針が転換された。朝鮮半島領域では実施されていなかった参政権も普通選挙法(1925年)施行後の内地では認められており、希望を持ち移動し定住した者も多かったが生活は決して恵まれたものではなかった。大戦中には軍人・軍属、あるいは就業目的として渡海した。また徴用労働者として800名以上が渡海した。
終戦の後、彼らの多くが祖国へ引き上げたが、各人の判断や事情によって日本に留まった者もいる。また、戦後相当の数の朝鮮人が祖国の混乱(朝鮮戦争)(国連による難民認定がされている)や韓国軍による虐殺(済州島四・三事件、保導連盟事件など)を逃れて日本に渡った。その後、サンフランシスコ平和条約締結によって彼らは日本国籍を喪失し朝鮮籍となる。その後協定永住者から現在の特別永住者として変遷し日本に在住し続けている。帰化して日本国籍を取得する者も多く、在日コリアンは減少を続けている。
アイデンティティと国籍の問題は明治の開国以来、日本が否応なく直面することになった人権問題であり、戦前から華僑・印僑の人々や様々な移住者、戦後ながらくは台湾・中国系日本人コミュニティの間で葛藤を生んできた。1990年代以降、ブラジルなどの日系移民2世3世の出稼ぎ労働や、東南アジア・中国からの技能実習生といった外国人労働者の人権問題などが発生している。
言語
この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2024年5月) |
日本には公用語を明示する法令が存在しないが、日本語がほぼ全ての国民の母語であり、慣習に基づく事実上の公用語である。全土で均質化された日本語による義務教育が行われている。識字率は極めて高い。日本に定住する外国人も多くは日本語を理解する。国会では、アイヌ語などが使用された例もあるが、憲法や法律は、日本語で記したものが正文である。世界中の多くの言語が、他の言語からの派生を繰り返して生み出されてきたが、日本語に関しては派生元の言語が明らかになっていない孤立した言語とされるか、琉球語を別言語とみなし日本語とともに日琉語族を成すとされる。
近代以前の日本語は、文語と口語との乖離が大きかった。口語では京都方言(江戸時代中期以前)および江戸方言(江戸時代後期以降)が中央語と意識され広く通用したが、地域や階層による方言差が大きかった。明治維新による近代的な国民国家の創設に伴って言文一致運動が起こり、口語に近い文章語の確立が朝野の双方から推し進められた。東京方言を基盤に整えられた新しい文語や口語(標準語・共通語)は、教育・報道・行政・軍隊などを通じて国民に広く浸透し、国民的一体感の形成に寄与した。共通語の浸透に伴い各地の方言は衰退・変容を余儀なくされた。近年、地域文化・アイデンティティー[要曖昧さ回避]として見直す機運が高まり、教育現場においても共存が図られるようになった。
日本は漢字文化圏に属し、日本語の表記には漢字とそれから派生した仮名を主に使用する。第二次世界大戦後、GHQは漢字の廃止を企図し、GHQの要請で米国から教育使節団が派遣された。使節団は、難しい漢字のせいで日本人の識字率が低いことを示そうと全国調査を命じるも、調査の結果高い識字率が確認された。一方、漢字乱用の弊を除く目的で公布された「当用漢字表」については、漢字制限の路線に沿ったものであり、明言されていないが漢字全廃に向かう過渡期での規格という性格をもつものであった、とする見解もある。しかしその後、当用漢字よりも緩やかな「目安」として「常用漢字表」が制定され、漢字全廃の方針は撤回された。そうしたなかで、一部の漢字は正字体(旧字体)から新字体に簡略化された。固有名詞は別扱いであることから、人名・地名などでは旧字体や異体字の使用が続いており、異体字の扱いは現在もしばしば問題となる。仮名の正書法に関しても、終戦後、従来の歴史的仮名遣から現代仮名遣いに変更された。近年、コンピュータの普及や文字コードの拡張などに伴い、漢字の使用に関する制限は緩められる傾向にある。
日本語以外には、アイヌが用いるアイヌ語や、樺太から移住した少数住民が用いたニヴフ語・ウィルタ語がある。現在ではニヴフ語・ウィルタ語の母語話者によるコミュニティは消滅し、アイヌ語も母語話者が10人以下に限られる危機に瀕する言語であるが、アイヌ語再興の取り組みも活発である。琉球列島の伝統的な言葉は本土方言と違いが大きく、本土方言とともに日本語の二大方言の一つである琉球方言か、日本語とは系統の同じ姉妹語(「琉球語」)か、その位置づけには議論がある。琉球方言(「琉球語」)内部でも地域差が大きく、複数の言語の集合として「琉球語派」や「琉球諸語」と位置づける場合がある。
その他の言語は、日本語に単語として取り入れられた外来語を除き、日本人同士の意思疎通にはほとんど用いられず、高等教育の教授言語としても常用されない。日本人にとって最も身近な外国語は国際語[要曖昧さ回避]のひとつである英語であり、実務上での便益や諸外国人への配慮から、国際取引や学術研究の場で使用が奨励されることがある。義務教育の中学校の必修科目である外国語科では英語を扱うことが圧倒的に多く、それ以降の高等教育機関でも多くの日本人が英語を学ぶ。とはいえ、多くの日本人にとって、日本語から遠い系統の言語であるため習得が難しく、また日常生活や職務上での必要性が低いことなどから、帰国子女など特殊な例を除き、英語に堪能な者は少ない。
大学で学ぶ第二外国語としては、主にドイツ語・フランス語が選択されてきたが、近年は中国の経済発展に伴って中国語の選択が増えた。朝鮮語(韓国語)は日本人にとって比較的習得が容易な言語であるが、韓国朝鮮系の住民を除いて学習者は多くなかった。近年、韓国の大衆文化が盛んに輸入されていることに伴い、学習者が増加傾向にある。ロシア語の学習者は多くないが、冷戦崩壊後、極東ロシアとの貿易が活発化しているため、北海道や日本海側の都市で外国語表記に取り入れられるなどしている。安全保障上の理由から学ばれている言語は、米軍との意思疎通を図るための英語と、仮想敵のロシア語・中国語・朝鮮語が主である(予備自衛官補の語学技能枠で一般公募もされている)。
外国籍の住民および帰化外国人、日本に定住する外国人が用いる主な言語には、在日韓国・朝鮮人の一部が用いる韓国語、在日朝鮮語、在日中国人・在日台湾人を中心に約80万人が用いる中国語・中華民国国語・台湾語、在日ブラジル人を中心に約20万人が用いるポルトガル語、フィリピン人・欧米人を中心に約25万人が用いる英語などがある。
人口
日本は1950年以降急速な少子化、高齢化が進行している。そして、1970年に高齢化社会(65歳以上の人口割合が7%から14%)に、1994年に高齢社会(65歳以上の人口割合が14%から21%)になり、2007年には超高齢社会(65歳以上の人口割合が21%以上)となった。2015年の国勢調査では前回と比べ約93万3千人減少しており統計開始以来初めて人口が減少した。
時点 | 日本人(日本国籍を持つ者)の数 | 外国人の数 | 総人口 |
---|---|---|---|
2020年1月1日 | 123,250,274 | 125,708,382 | |
2019年1月1日 | 123,900,068 | 126,166,948 | |
2018年1月1日 | 124,349,004 | 126,443,180 | |
2015年1月1日 | 125,319,299 | 127,094,745 |
年齢5歳階級別人口
2017年1月1日現在推計人口
総計 [単位 万人]
年齢 | 人口 |
---|---|
0 - 4歳 | 496 |
5 - 9 | 529 |
10 - 14 | 550 |
15 - 19 | 604 |
20 - 24 | 615 |
25 - 29 | 635 |
30 - 34 | 722 |
35 - 39 | 805 |
40 - 44 | 966 |
45 - 49 | 941 |
50 - 54 | 789 |
55 - 59 | 754 |
60 - 64 | 808 |
65 - 69 | 1024 |
70 - 74 | 742 |
75 - 79 | 661 |
80 - 84 | 520 |
85 - 89 | 329 |
90 - 94 | 150 |
95 - 99 | 39 |
100歳以上 | 7 |
年齢5歳階級別人口
2017年1月1日現在推計人口
男女別 [単位 万人]
男 | 年齢 | 女 |
---|---|---|
254 | 0 - 4歳 | 242 |
271 | 5 - 9 | 258 |
282 |
ウィキペディア、ウィキ、本、library、論文、読んだ、ダウンロード、自由、無料ダウンロード、mp3、video、mp4、3gp、 jpg、jpeg、gif、png、画像、音楽、歌、映画、本、ゲーム、ゲーム、モバイル、電話、Android、iOS、Apple、携帯電話、Samsung、iPhone、Xiomi、Xiaomi、Redmi、Honor、Oppo、Nokia、Sonya、MI、PC、ウェブ、コンピューター