真核生物(しんかくせいぶつ、羅: Eukaryota、英: eukaryotes)は、真核生物ドメイン Eukaryota (Eukarya) と呼ばれる分類群を構成し、細胞の中に核膜に包まれた核を持つ生物である。すべての動物、植物、菌類、そして多くの単細胞生物は真核生物である。真核生物は、原核生物の2つの分類群すなわち細菌と古細菌と並び、生物(生命を持つ存在)を構成する主要な分類群の一つである。真核生物は原核生物に比べ個体数としては少ないが、サイズは一般的にはるかに大きいので、その集団的な地球規模での生物量(全球バイオマス)ははるかに大きくなる。
真核生物 Eukaryota | |||
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生息年代: スタテリアン – 現在 1650–0 Ma | |||
分類 | |||
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学名 | |||
Eukaryota (Chatton, 1925) Whittaker & Margulis, 1978 | |||
シノニム | |||
和名 | |||
真核生物 (しんかくせいぶつ) | |||
英名 | |||
Eukaryote | |||
スーパーグループと界 | |||
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真核生物は、アスガルド古細菌の中の一群から出現したと見られる。このことは、生物を構成する大分類であるドメインは細菌と古細菌のだけで、真核生物は古細菌の中の一群であることを意味する。真核生物が最初に出現したのは古原生代で、当時の生物は鞭毛のある細胞であったと考えられる。現在有力とされている進化仮説では、真核生物は、嫌気性のアスガルド古細菌が好気性のシュードモナス門(旧: プロテオバクテリア)を取り込んだ細胞内共生によって誕生し、後者からミトコンドリアが形成されたとされる。さらにそれがシアノバクテリアを取り込むことで、葉緑体を持つ植物の祖先が誕生した。
真核細胞(真核生物の細胞)は、核、小胞体、ゴルジ体などの生体膜で区画された細胞小器官を持つ。原核生物は一般的に単細胞であるのに対し、真核生物には単細胞のものも多細胞のものも存在する。単細胞の真核生物は原生生物と呼ばれることもある。真核生物は有糸分裂による無性生殖と、減数分裂と配偶子融合(受精)による有性生殖の両方を行うことができる。
多様性
真核生物は、直径1 µm(マイクロメートル)に満たない Ostreococcus(緑藻植物)のような単細胞生物から、体重190 t(トン)、体長33.6 m(メートル)に至るシロナガスクジラのような動物、あるいは高さ120 m にもなるセコイアのような植物まで、形態的に多様なさまざまな生物を含む。
多くの真核生物は単細胞性である。原生生物としてひとまとまりに呼ばれる非公式な分類群の多くは単細胞生物であるが、ジャイアントケルプ Macrocystis pyrifera のような長さ61 m にもなる多細胞性の生物も含まれる。多細胞の真核生物には、動物、植物、真菌が含まれるが、やはりこれらの分類群にも多くの単細胞種が含まれる。
真核生物の細胞は通常、原核生物(細菌や古細菌)よりもはるかに大きく、その体積は約10,000倍である。真核生物は生物の数の中では少数派にすぎないが、その多くがはるかに大きいため、それらの世界全体のバイオマス(468 Gt(ギガトン))は、原核生物(77 Gt)よりもはるかに大きく、植物だけで地球の総バイオマスの81%以上を占めている。
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- セコイア
- シロナガスクジラ
真核生物は多様な系統であり、主に微細な生物から構成されている。多細胞性は何らかの形で、真核生物の中で少なくとも25回は独立して進化してきた。複雑な多細胞生物は、アメーバ様生物の集合体である粘菌類を除けば、動物、真菌、褐藻類、紅藻類、緑藻類、陸上植物の6つの真核生物の系統の中で進化してきたにすぎない。真核生物の分類はゲノムの類似性に基づいた分子系統解析により行われ、それぞれの大分類(スーパーグループ)は共通する形態形質を欠くものも多い。
特徴
真核細胞は細胞内に、細胞小器官(organelle)と呼ばれるさまざまな膜構造と、細胞の組織と形状を規定する細胞骨格を持つ。
核
真核生物の決定的な特徴は、細胞に核膜に包まれた核(nucleus)と呼ばれる細胞小器官を持つことである。真核生物を意味する eukaryote という用語は、ギリシア語の εὖ(eu、良い)と κάρυον(karyon、仁、核)の合成語である。核は細胞のDNAを保持しており、染色体(chromosome)と呼ばれる遺伝子連鎖群に分かれている。これらの染色体は、真核生物に特有の有糸分裂の過程で核分裂が起こる際、紡錘体によって1対のセットに分離される。
生化学
真核生物は、ステラン合成のような独特な生化学的経路を持っている点でも原核生物とは異なる。真核生物を特徴づけるタンパク質 (eukaryotic signature protein) は真核生物に固有であり、他のドメインの生物はそれに相同なタンパク質を持たないが、真核生物では普遍的に存在する。これらのタンパク質には、細胞骨格や核膜孔を構成するものや、複雑な転写機構、膜選別システム、および生化学的経路におけるいくつかの酵素などの働きを持つものが含まれる。
細胞内膜系
真核生物の細胞にはさまざまな膜構造があり、によって連絡され細胞内膜系(endomembrane system)を形成している。小胞や液胞と呼ばれる単純な区画は、他の膜からの出芽によって形成される。多くの細胞は、エンドサイトーシスという過程(外膜がしてからつまみ取るように小胞を形成する)を通じて食物やその他の物質を摂取する。それに対して、エキソサイトーシスによって小胞から放出される細胞産物もある。
核は核膜と呼ばれる二重のリン脂質二重層に囲まれており、核膜孔が物質の出入りを可能にしている。核膜のさまざまな管状や板状の延長部分が小胞体を形成し、と成熟に関与している。粗面小胞体は、タンパク質を合成するリボソームで覆われた小胞体である。生成したタンパク質は内部空間あるいは内腔に入り、その後一般に、滑面小胞体から出芽した小胞に取り込まれる。ほとんどの真核生物では、これらのタンパク質を輸送する小胞が放出された後、と呼ばれる扁平な構造が積み重なってできたゴルジ体で更なるタンパク質の修飾が行われる。
小胞は特殊化することもあり、たとえばリソソームは、細胞質内の生体分子を分解する消化酵素を含んでいる。
真核生物の細胞内膜系は原核細胞の陥入により形成され、それが発達してできたと考えられている。
ミトコンドリア
ミトコンドリアは真核細胞に存在する細胞小器官である。ミトコンドリアは、「細胞の発電所」と形容され、糖や脂肪を酸化してエネルギーを貯蔵するアデノシン三リン酸(ATP)分子を生成し、エネルギーを供給する機能を持つ。ミトコンドリアは、リン脂質二重膜の(2枚の膜)で覆われ、内側にある内膜はクリステという折り畳まれた構造になっていて、そこで好気呼吸が行われる。
ミトコンドリアは核DNAと異なる独自のミトコンドリアDNAを持ち、そのDNAは起源とする細菌のと構造的に類似しており、ミトコンドリア内の翻訳装置のためのrRNAとtRNAの遺伝子や、ミトコンドリア内で合成されるタンパク質の遺伝子がコードされている。
一部の真核生物、たとえばメタモナダのジアルジア属 Giardia やトリコモナス Trichomonas、アメーバ動物門のペロミクサ Pelomyxa はミトコンドリアを欠いているように見えるが、いずれもハイドロジェノソームやマイトソームのようなミトコンドリア由来の細胞小器官を持っており、ミトコンドリアは二次的に失われたものである。これらは細胞質内の酵素作用によってエネルギーを得ている。
プラスチド
植物やさまざまな藻類は、ミトコンドリアだけでなくプラスチド(色素体、plastid)と呼ばれる細胞小器官を持っている。プラスチドは、ミトコンドリアと同様に独自のと2枚の生体膜を持ち、シアノバクテリアの内部共生に起源する。プラスチドの多くは普通、葉緑体(クロロプラスト、chloroplast)として存在する。葉緑体はシアノバクテリアと同様にクロロフィルを含み、光合成によってグルコースなどの有機化合物の生合成を行う。
光合成色素を持たないプラスチドは白色体(leucoplast)と呼ばれる。白色体の中にはアミロプラスト(amyloplast)やエライオプラスト(elaioplast)のように栄養の貯蔵を担うものもある。その他果実の色素や赤色細胞に含まれる有色体や黄化葉に見られるエチオプラストなどが知られ、いずれもから分化してできる。
プラスチドはおそらく単一の起源を持つが、プラスチドを持つ分類群がすべて近縁というわけではなく、葉緑体を持つ真核生物(一次植物)を細胞内に取り込んで共生させたによってプラスチドを獲得した二次植物(あるいはさらに高次の植物)も知られる。他の生物から光合成細胞や葉緑体を捕獲して再利用する盗葉緑体現象も、多くの種類の現生真核生物で見られる。
細胞骨格
細胞骨格(cytoskeleton)は、細胞の形態を決め、細胞運動や細胞小器官の移動などの基本的役割を持つ構造要素である。チューブリンからなる微小管や主にアクチンからなるマイクロフィラメント(微小繊維)、デスミンなどからなる中間径フィラメントからなる。
微小管のダイニンとキネシン、そしてアクチンフィラメントのミオシンといったモータータンパク質が細胞骨格のネットワークに結合し、物質の輸送を担っている。
マイクロフィラメント(微小繊維)は重合した2本のアクチン繊維にα-やフィンブリンといった束化を行ったり、フィラミンのように架橋を行ったりするアクチン結合タンパク質が結合することで形成されている。細胞膜直下の細胞皮質や繊維束に存在する。
多くの真核生物は、鞭毛と呼ばれる細長い運動性の細胞質突起、あるいは繊毛と呼ばれる多数の短い構造を持っている。これらはと総称され、原核生物のべん毛とは違い主にチューブリンから構成されており、運動、摂食、感覚などさまざまに関与している。これらは中心小体から生成する微小管の束によって支えられており、2本の1本鎖を9本の2本鎖が取り囲むように配列する「9 + 2」構造を持っているのが特徴である。鞭毛は、ストラメノパイル(Stramenopiles)の多くに見られるように、管状小毛(、mastigoneme)を持つこともある。それらの内部は細胞質と連続している。
中心小体は、鞭毛を持たない細胞や細胞群でもよく存在するが、針葉樹類や被子植物はどちらも持たない。これらは一般に、さまざまな微小管性鞭毛根を生じさせるグループに存在する。これらは細胞骨格の主要な構成要素を形成し、しばしば数回の細胞分裂の過程で組み立てられ、一方の鞭毛は親から受け継ぎ、もう一方はそこから派生する。中心小体は核分裂の際に紡錘体の形成に関与する。
細胞壁
植物、藻類、真菌、そしてほとんどのクロムアルベオラータに属する生物の細胞は細胞壁に囲まれているが、動物の細胞は細胞壁に囲まれていない。これは細胞膜の外側にある層で、細胞の構造的な支持、保護、そして濾過といった働きを持つ。また、細胞壁は水が細胞内に侵入したときのを防ぐ役割も果たす。
陸上植物の一次細胞壁を構成する主な多糖類は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンである。セルロースと呼ばれるセルロースの微細な繊維がヘミセルロースと結合し、ペクチンからなる基質中に埋め込まれている。一次細胞壁で最も一般的なヘミセルロースはキシログルカンである。
有性生殖
真核生物は有性生殖を伴う生活環を持つ。各細胞に染色体が1つずつしか存在しない単相と、各細胞に染色体が2つずつ存在する複相とを交互に繰り返す。複相は、卵と精子などの2つの配偶子が融合して、接合子や受精卵を形成することで成立する。この接合子は、有糸分裂によって細胞分裂を繰り返しながら成体に成長し、ある段階で染色体数を減らして遺伝的変異 (genetic variability) を生み出す減数分裂によって単数体配偶子を形成する。この様式にはかなりの多様性がある。植物は単相と複相の世代交代を行い、両方の世代で多細胞体を形成する。真核生物は原核生物よりも代謝率が低く、世代時間が長くなるが、これは真核生物が原核生物よりもはるかに大きく、体積に対する表面積の比が小さいからである。
は、真核生物の原初的な特徴という可能性がある。分子系統解析に基づき、Dacks と Roger は通性性(facultative sex)がこのグループの共通祖先に存在したと提唱している。 Trichomonas vaginalis およびランブル鞭毛虫 Giardia duodenalis (syn. Giardia intestinalis) は以前は無性であると考えられていたが、減数分裂で機能するコア遺伝子セットが存在する。これらの種は、真核生物のうち初期に分岐した系統の子孫であることから、コア減数分裂遺伝子、ひいては性が真核生物の共通祖先に存在した可能性がある。寄生生物であるリーシュマニア Leishmania など、かつては無性であると考えられていた種にも性周期がある。以前は無性生物と考えられていたアメーバは、古くは有性生物であり、現在の無性群体は最近進化した可能性が高い。
進化
分類の歴史
古代、アリストテレスやテオプラストスは、動物と植物という2つの生物の系統を識別していた。これらの系統は、18世紀にリンネによって界(kingdom)という分類学的な階級が与えられた。リンネは、真菌を植物に含めることに若干の条件をつけたが、後に、真菌は系統的にまったく別の存在で、独立した界を持つに値することがわかった。さまざまな単細胞の真核生物が知られるようになった当初、それらは植物や動物と一緒にされていた。1818年、ドイツの生物学者は、繊毛虫のような生物を指すために原生動物(Protozoa)という言葉を作り、この分類群は、1866年にエルンスト・ヘッケルがすべての単細胞真核生物を包括する界、原生生物界(Protista)を作るまで拡張された。こうして真核生物は4つの界に分類された。
当時、原生生物は「原始的な形態」であり、原始的な単細胞の性質が合併したであると考えられていた。(系統樹も参照)における最古の分岐の理解は、DNAの塩基配列の決定によって初めて実質的に進展し、1990年にカール・ウーズ、、らが提唱した最上位の階級を(界ではなく)ドメインとする体系()が導かれた。彼らは、すべての真核生物の界を1つのドメインに統合し、Eucarya と名付けたが、真核生物を意味する語として「'eukaryotes' は一般的な同義語として今後も受け入れられ続ける」と述べている。1996年、進化生物学者のリン・マーギュリスは、界とドメインを「包括的」な名前に置き換えて、「真核生物」 "Eukarya" を共生由来の核を持つ生物として「共生に基づく系統」を作ることを提案した。しかしながら、真核生物以外のすべての生物の総称として、原核生物という言葉は今日でも学術論文で用いられている。一方で21世紀に入ると、真核生物は古細菌から派生して出現した系統であるという理解が普及し、生物界を真正細菌とそれ以外(古細菌 + 真核生物)に大別する分類も用いられるようになった。
系統
2014年までに、過去20年間のゲノムデータに基づく分子系統学的研究から、大まかな合意が生まれはじめた。真核生物の大部分は、動物などが含まれるアモルフェア Amorphea(ユニコント仮説におけるユニコンタに似た構成)と、植物とほとんどの藻類の系統が含まれるバイコンタ Bikonta(syn. Diphoda Derelle et al., 2015)と呼ばれる2つの大きなクレードのいずれかに分類される。第3の主要グループであるエクスカバータ Excavata は、側系統であるため、正式な分類群としてはもはや用いられない。以下の提案された系統樹には、エクスカバータの1つの群(ディスコバ、Discoba)のみが含まれ、ピコゾア門 Picozoa は紅藻 Rhodophyta の近縁種であるという2021年の提案が取り入れられている。Provora は2022年に発見された微生物捕食者からなる分類群である。
以下の系統樹は、真核生物の大分類を示し、主なスーパーグループといくつかのその基部系統を含む、一つの系統仮説を示す。メタモナダは分岐位置に議論があり、Discoba あるいは(マラウィオモナダ、マラウィモナズ、Malawimonada)の姉妹群である可能性もある。
真核生物/Eukaryotes |
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2200 Ma |
真核生物の起源
すべての複雑な細胞とほぼすべての多細胞生物が真核生物に含まれることから、真核生物の誕生(eukaryogenesis)は、生命の進化における画期的な出来事であった。(LECA)は、現生するすべての真核生物の起源と仮定されるもので、単一の個体ではなく生物学的な集団であった可能性が高い。LECAは、核に加え、少なくとも1つの中心小体と鞭毛、通性好気性ミトコンドリア、性(減数分裂と異型配偶子融合)、キチンまたはセルロースの細胞壁を持つ休眠シスト、そしてペルオキシソームを持つ原生生物であったと考えられている。
運動性の嫌気性古細菌と好気性アルファプロテオバクテリア綱の内部共生によって、ミトコンドリアを持つLECAそしてすべての真核生物が誕生した。さらにその後、シアノバクテリアとの2回目の内部共生により、葉緑体を持つ植物の祖先が誕生した。
真正細菌が持たず真核生物に普遍的な分子を古細菌が持っていることは、真核生物が古細菌起源であることを示唆する。アスガルド古細菌のゲノムには、真核生物の特徴である細胞骨格や複雑な細胞構造の発達に重要な役割を果たす、(真核生物特有のタンパク質遺伝子)が多く存在する。2022年、クライオ電子線トモグラフィー法によって、アスガルド古細菌が複雑なアクチンベースの細胞骨格を持つことが明らかになり、真核生物の祖先が古細菌であることを示す最初の直接的な視覚的証拠が得られた。
古細菌から真核生物への具体的な道筋は解明されておらず、水素依存性古細菌の宿主が通性嫌気性細菌を獲得しミトコンドリアが発生したという、有機従属栄養古細菌宿主から細菌共生体への電子または水素の流れに着目したリバース・フローモデル、深海堆積物から培養した古細菌の生理学的な特徴から、解毒機能として細菌を取り込んだとするE3モデル など多くの仮説が提唱されている。ほとんどの仮説が、古細菌が細菌を取り込んだと考えているのに対して、シントロピー・モデル と呼ばれる仮説のみ、細菌(特にデルタプロテオバクテリア)が古細菌を取り込んだと推定しており、共生の関係性が他の説とは逆である。この説ではミトコンドリアは古細菌とは別個に取り込まれて成立したとされる。上記の説以外にも、真核生物の細胞核に類似の器官をもつ一部の細菌(例えばプランクトミケス)が、真核生物の起源に関与しているとする説も存在する。
成立年代の推定
真核生物の成立年代は未確定ではあるものの、例えば真核生物に不可欠ないくつかの細胞小器官(例えばミトコンドリアや、ステロールを含む細胞膜)の成立に酸素が必須なことから、真核生物は24億年前の大酸化イベント以後、好気性条件下でおおまかに19億年前頃(原生代)には成立したとする説が有力である。一方で、真核生物は酸素が大気中に含まれていなかった(GOE)以前の生活スタイル(嫌気呼吸)も保持しており、最初に誕生した真核生物は通性嫌気性生物であったと想定される。大酸化イベント以前(太古代)の地球にもごく少量の酸素は存在していた可能性があるが、真核生物を含め好気性生物が太古代にすでに存在していたかについては、それを明確に支持する証拠は現在のところない。
オーストラリア頁岩に真核生物に特有のバイオマーカー(分子化石)であるステランが含まれていることから、かつては27億年前の岩石に真核生物が存在していたことが示唆されていたが、これらの太古代のバイオマーカーは後世のコンタミネーションによるものであると反論されている。最も古く確かなバイオマーカーの記録は、約8億年前の新原生代のものでしかない。対照的に、分子時計分析によれば、ステロール生合成が23億年前にも出現したことを示唆している。真核生物のバイオマーカーとしてのステランの性質は、一部の細菌によるステロールの産生によってさらに複雑になっている。
新原生代以前の真核生物の有無および実態については詳しくわかっていない。2023年、現生の真核生物がもつステロールとは化学構造がやや異なる“より原始的な”プロトステロールが化石化したものが新原生代以前の地層に広く分布していることが発表され、これらのステロールは現生の真核生物(クラウングループ)以前に存在していたステムグループが作り出していた可能性が指摘された。この説に従えば、現存する(LECA)は新原生代まで出現しなかったことになり、それまでは真核生物の前駆段階にあたる何らかの好気性生物が長く繁栄していたことになる。一方で、プロトステロールを含めてステロール自体は細菌が究極的な起源である可能性も指摘されており、新原生代以前のステロール(プロトステロール)を合成していた生物が何者だったのかによって、真核生物の成立過程についての理解は今後大きく変化する可能性がある。
ステラン以外の真核生物の痕跡としては、真核生物由来とされる微化石が21億年前の地層から発見されている。ただし、これらの化石が真に真核生物由来かどうかはなお議論の必要がある。19億年前の地層から見つかった、コイル状の多細胞生物と推定される Grypania は真核生物として一定の支持を得ている最古の化石の一つである。真核生物の起源を分子時計を用いて推測する研究も行われている。
その起源が何であれ、真核生物が生態学的に優勢になったのは、ずっと後のことかもしれない。8億年前に海洋堆積物のが大幅に増加したのは、原核生物に比べて亜鉛を優先的に消費し取り込む真核生物の個体数が、その起源から(遅くとも)約10億年後に増加したことに起因している。
化石
真核生物の起源を特定するのは困難であるが、16億3,500万年前に生息していた最古の多細胞真核生物である Qingshania magnificia が中国北部で発見されたことは、クラウングループの真核生物が古原生代後期(スタテリアン紀)に起源を持つことを示唆している。約16億5,000万年前に生息していた最初期の明確な単細胞真核生物も中国北部で発見された。それらは、Tappania plana, Shuiyousphaeridium macroreticulatum, Dictyosphaera macroreticulata, Germinosphaera alveolata および Valeria lophostriata である。
少なくとも16.5億年前のアクリターク(分類不能な微化石)も知られており、藻類の可能性がある Grypania の化石は21億年前のものである。プロブレマティカである Diskagma は、22億年前のから発見された。
ガボンのなどの古原生代のからは、21億年前と推定される「」と呼ばれる「大型生物群集」を表すとされる構造物が見つかっている。しかし、これらの構造物が化石であるかどうかについては議論があり、これらが偽化石である可能性を示唆する著者もいる。真核生物に明確に帰属される最古の化石は、中国の濮陽(ぼくよう)層群で発見された約18億年–16億年前のものである。現代の生物群と明らかに関連する化石は、(紅藻類)の形で推定12億年前に出現し始めているが、最近の研究では、ヴィンディヤ盆地に存在する(糸状藻類)の化石がおそらく16億年-17億年前にさかのぼるものと示唆されている。
脚注
注釈
出典
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関連項目
- (Parakaryon myojinensis)
- ヴォールト (細胞小器官)
外部リンク
- "真核生物" - Encyclopedia of Life
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